受援計画を知ろう

災害・防災

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

災害が起きたときは被災自治体へたくさんの人的支援と物資支援があります。大事なことは、その資源を円滑に受け入れる体制をつくり、応援による人命救助や応急給水などを最大限活用すること。そして、早期に被災者の暮らす場所を整えて、行政サービスを継続することです。

そのために自治体には「受援計画」というものがありますが、市区町村の策定率は67%(2022年6月現在)ということで、まだ策定されていない自治体も多いと思います。

ここでは国や自治体が公表している資料と私の経験をもとに、受援計画(受援体制の整備)についてご紹介したいと思います。

参考資料
・能登半島地震 各機関発表資料
・内閣府災害対策資料
被災地方公共団体に対する人的支援の取組 (総務省)
地⽅公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン(内閣府)
地方都市等における地震対応のガイドライン(内閣府)
熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援策の在り方について
・各自治体の地域防災計画
・各自治体の業務継続計画
・各自治体の受援計画、応援計画
平成23年東日本大震災 各記録誌
平成28年熊本地震 熊本市震災記録誌
平成30年北海道胆振東部地震 記録誌(厚真町・安平町・むかわ町)
etc.

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最初に関係法令のお話を…

公務員は法令をもとに仕事を行いますよね。

ということで、まずは災害対策関係の法律を確認しておきましょう。整理したものがこちらです。

内閣府資料より

たくさんの法律がありますね💦このなかで受援計画的に重要なのは大枠の災害対策基本法と、真ん中の列にある災害救助法です。簡単に説明すると、災害への対応はおおまかに3段階に分かれます。

①防災(予防)
 ↓
②応急救助
 ↓
③復旧・復興

このうち災害対策基本法は①②③すべてを網羅するものです。災害発生時の人的応援に関しては、67条~74条の3付近に規定されています。物資輸送などはまた別です。

そして、②に対応するのが災害救助法です。初期対応、短期応援などは災害救助法をもとに行うことが多いと思います。

この2つの法律が受援計画での基礎となっていると考えていいかと思います。さらに中長期的な復興系業務については被災者生活再建支援法などの個別法で規定されているイメージです。

受援計画って何?

受援計画とは、災害に備えて応援を円滑に受け入れる体制を整備することを目的とし、その方法を具体的に決めて示すものです。

例えば次のような項目を決めておくといいでしょう。

  • 受援の対象業務
  • 受援班の役割
  • 受援の要請方法
  • 現場対応環境の整備
  • 費用負担
  • 各団体との連携方法
  • 過去の災害の教訓

受援計画は、地域防災計画や業務継続計画(BCP)と紐づいた計画であり、これらを補完させるものであると言えます。ただし、単独の計画を作らなきゃいけないわけではなく、中小自治体では地域防災計画などのなかに必要項目を記載している自治体もあると思います。個人的にはお堅い計画で謳うよりも、マニュアルとして具体的な手順・方法で示したほうが有効だと感じています。

内閣府資料より

支援をしてくれる組織・団体

具体的に応援(支援)をしてくれる団体を知っておいた方が良いと思いますので、別記事にまとめました。

公的機関であればこちら↓のような機関から職員が派遣されます。

  • (消防庁)緊急消防救助隊
  • (警察庁)警察災害派遣隊
  • (自衛隊)災害派遣部隊
  • (国交省)TEC-FORCE
  • (厚労省)DMAT
  • (環境省)D.Waste-Net
  • (日水協)応急給水隊・応急復旧隊
  • (自治体)他自治体の職員派遣

各団体から先遣隊やリエゾンが派遣されて対策本部周辺は大混雑&混乱します。他自治体からもたくさんの応援職員が駆けつけてくれますがその枠組みは多様でさらに混乱します。基本的に被災都道府県が窓口になりますので飛び越えて応援要請したりしないようにしましょう。そして、なるべく応援側も窓口を一本化する(地域ブロックの幹事県が主導する)など被災側に負担が掛からないようにすべきです。

もちろん民間からも手厚い支援が行われます。建設業協会などの各業界団体から、大手スーパー・コンビニから、NPO・NGOをはじめとするボランティアから物資や人員が支援されますね。ありがとうございます。

受援計画を考えるときのポイント

私は全然専門家ではないのですが、個人的に大事かなーと思うメタ的なポイントを書いてみようと思います。見当違いだったらすみません💦

「地⽅公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン」を参考にする

内閣府防災担当により、受援体制ガイドラインがまとめられています。東日本大震災と熊本地震で受援体制が整っていなかったことにより多くの混乱が見られたことを反省し、体制をつくるために何が必要なのか整理したものです。ガイドラインでは丁寧に「解説」と「ポイント」が書かれていますので、それらを押さえていくと、実務的にも使えるモノになると思います。

都道府県と密に相談しておく

先述しましたが、職員派遣などは被災都道府県が県内市町村を取りまとめて要請するし、費用負担もお願いすることになります。つまり、県との連携は不可欠であり、平時からコミュニケーションをとって信頼関係を作っておくことが大事です。そのために県内をいくつかのエリアに分けて定期的に県防災課職員が訪問するようにしている県もあります。某静岡のように知事と市長が不仲でバチバチにやりあうようなことは職員レベルでは絶対にやめましょう💦

受援計画については、県の受援計画とほかの県内市町村の計画のいいところをパクりましょう。

対口支援を念頭に入れておく

近年の主流は対口(たいこう)支援と呼ばれる方式です。カウンターパート方式とも呼ばれます。対口はペアを組むという中国語で、被災市町村に対して支援県・政令市がペアになって職員派遣をおこなうシステムです。責任感をもって自律的な判断ができるため、円滑に支援ができると言われています。

対口支援については別記事で詳しく説明しました。概要だけは知っておきましょう。

ちなみに令和6年能登半島地震での対口支援の状況はこのようなものでした。

産経ニュース (sankei.com) より

県建設業協会などの関係団体に伝えておく

発災後に第一線で動いてもらう各業界団体には受援体制について伝えておいた方がいいです。相互支援協定等も同様です。彼らのテリトリーに外部から人員・物資を入れる(仕事を奪う)ことになりますので、「〇〇規模の災害が起きた時は〇〇が予想されるので〇〇の支援がきます。〇〇の作業は支援側にお願いすることがあります」みたいに、恥ずかしながら田舎だとそういう根回しも必要になります。

過去の災害の課題をカバーする

被災した時の問題点は被災してみないと気づきにくいです。経験工学である土木と通じるところがありますね。なので、1番の教科書は過去の災害だと思います。自治体が経験したことのある災害、または近隣自治体の災害対応をしっかり分析して、どのような問題点や課題点があるのか分かったうえで、その対策をしての受援計画を作るべきです。

おわりに

机上の理想論みたいなことを書いてしまいましたが、とりあえず「地⽅公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン」を参考に最低限決めておくことは防災マニュアルに書いておいた方が良いですね。

私は実務では「受援計画」と「災害廃棄物処理計画」が大事なものだと思っています。入ってくる支援の受け入れ体制を整え、出ていく(処理する)災害廃棄物の処理方法を決めておく。この2点をおさえておけば物資と人員がうまく流動するので、あとは支援職員たちと協力して何とかなる…気がする。

参考になれば幸いです。

ではまた。

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