対口支援って何?

災害・防災

地震・豪雨災害などの場面で「対口支援」という言葉をよく耳にするようになりました。

対口(たいこう)支援方式とは、被災市町村ごとに支援側の自治体を決める方式のことです。ここでは対口支援についてかんたんに解説したいと思います。

なお、制度は常にアップデートされてますので少し変わってるかもしれません。ご了承ください🙇‍♀️

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対口支援の概要

対口(たいこう)支援方式とは、被災市町村ごとに支援側の自治体を決める方式のことです。「カウンターパート方式」と呼ばれることもあります。

1対1のペアを原則としますが、大規模災害のときは1対1とは限りません。能登半島地震でも被災市町村に対して複数の自治体が割り当てられて職員を派遣しています。↓は産経新聞の記事から引用した1/9時点の対口支援体制です。今はさらに増えているようです(後述します)

産経ニュース (sankei.com) より

「対口」は中国語でペアを組むという意味で、2008年の四川大地震で中国政府が行った復興策がモデルとなっています。中国政府は地震から1か月後、被災エリアを北京市、上海市、広東省などの被災しなかった省や市に割り当て、責任をもって復興支援させました。これが復興再建には効果的だったと言われています。災害大国の日本で開発されなかったのが不思議ですね。

日本のスキーム

日本では、四川大地震から3年後の2011年東日本大震災から参考導入されました。例えば関西広域連合(阪神淡路大震災の経験から災害対策意識が高い)では、神戸市は名取市、西宮市は南三陸町とペアを組んだりしました。総務省が制度をきちんと作ったのは2018年度になってからです。中国由来ではありますが、日本の場合はインフラの本格復興からじゃなくて発災直後からペアを作って支援にあたるところが違いますね。

応急期(短期)と復旧復興期(中長期)ではスキームが少し違います。復旧復興期は、「総務省と全国市長会・全国町村会による派遣制度」とか「復旧・復興支援 技術職員派遣制度」などがありますがここでは割愛します。こちらも大きな意味では対口支援ではあるんですが、現場的には応急期のものを対口支援と呼ぶと思います。

応急対策職員派遣制度

応急期の対口支援は総務省の「応急対策職員派遣制度」に基づき派遣されます。支援までの流れはこちら↓のようになっています。

簡単に言うと、被災市町村を取りまとめて被災県が要請をして、総務省・全国知事会などがペアを決定する仕組みです。支援側はノウハウをもつ県・政令市を原則とします。支援県は県内市町村から職員を集めて派遣します。今はあらかじめ地域ブロックごとに災害時の対応を決められていて、もしブロック内だけで足りない場合は全国スキームも使います。

例えば平成30年の北海道胆振東部地震では、北海道・東北ブロックから支援がありました。組み合わせは次のとおり。

被災町支援県
厚真町青森県、山形県、福島県
安平町岩手県、新潟県
むかわ町秋田県、宮城県

平成28年の熊本地震の組み合わせはこちら↓

被災市町村支援県
菊池市長崎県
宇土市長崎県、沖縄県
宇城市、甲佐町鹿児島県
阿蘇市長崎県、宮崎県
大津市関西広域連合
菊陽町、益城町福岡県、関西広域連合
御船町山口県
嘉島町福島県、静岡県
山都町宮崎県
西原村佐賀県
南阿蘇村大分県

なお、熊本市は政令市の相互応援ルールで支援されています。

ここに書いてあるのは対口支援ルートでの支援ですので、実際には他のルートで全国から沢山の職員派遣がされています。全国知事会、全国市長会、全国町村会、指定都市市長会、独自協定、業種ごとの団体・協会……。ルート(枠組み)によって要請の根拠が違うし、誰が誰に要請するのかも違うことがあります💦それらを受援計画(防災マニュアル)で事前に整理しておくことが大切です。実際には、県担当課間で派遣調整を取りまとめてやってくれるので県のリーダーシップはすごく大事です。

総括支援チームと対口支援チーム

今は原則として「総括支援」と「対口支援」がセットで決定されます。

総括支援チーム(GADM)は、被災自治体の災害マネジメントを支援します。例えば受援体制を整えたり、支援自治体との連絡調整などですね。被災地の職員の負担を減らすために、話し合いで助言をしつつ、膨大な調整業務をサポートするのが仕事です。

対口支援チームは、避難所運営や罹災証明書の発行業務などを行う実働チームです。

能登半島地震での応急対策職員派遣制度に基づく応援職員の派遣状況はつぎのとおり。★マークが総括支援チームです。令和6年2月8日時点。

被災市町支援県
輪島市★三重県、東京都、大阪府、徳島県、川崎市、大阪市、堺市、北海道、長野県、静岡市、岐阜県、愛媛県、広島県、山口県、高知県、北九州市、福岡市、熊本県
珠洲市★浜松市、福井県、千葉県、山梨県、兵庫県、千葉市、神戸市、熊本市
穴水町★静岡県、栃木県、奈良県、福岡県
能登町★滋賀県、茨城県、和歌山県、宮城県、岩手県
七尾市★名古屋市、埼玉県、京都府、さいたま市、京都市
志賀町★愛知県、神奈川県、鳥取県、横浜市、岡山市、佐賀県
羽咋市長野県
宝達志水町札幌市
中能登町岐阜県
かほく市群馬県
津幡町相模原市
内灘町仙台市、香川県
金沢市仙台市、島根県
加賀市静岡市

今回の能登半島地震の深刻さが分かりますね…。

対口支援のメリット

自治体のペアを決めるので、支援の重複や偏りが防げますね。意思疎通もスムーズになることが期待できます。

おもに対口支援のメリットは次のようなものがあります。

1.被災市町村は具体的なニーズを伝えやすい。
2.支援側において支援の組み立てがしやすい。
3.被災地の細かいニーズに対応できる。
4.指示系統がシンプルで、より迅速な対応ができる。
5.派遣職員間で情報共有がしやすい。
6.支援都市と受援都市の人のつながりができる。

わたしの経験的にも支援自治体を割り振るのは効果的だと思います。まず、責任感をもつことができるのが大きくて、少数の自治体で話し合って最善の方法をすぐに決断しやすくなります。さらに総務省や全国知事会などが調整・連携はしますが、各被災地が独立して支援されるので、いい意味で競争のようなかたちになる気がする。「となり町では○○の支援がされてるからコチラも○○しなきゃいけないぞ。」みたいな。これも良い事だと思います。

おわりに

対口支援についてご紹介しました。近年は全国から災害応援をする傾向になってることもあり、能登半島地震では対口支援で大量の職員が派遣されています。

2018年に始まった制度なので、大災害の度にまだまだ改良されていくと思われます。個人的には職員派遣自体が複数ルートで行われるので、要請時に「別ルートで要請されているのでは?」「○ルートでは問題があるかもしれないから△ルートが正解か?」みたいな懸念事項が出てくるのが無駄な気がします。もし被っている制度であれば統一化したいところです。

また、ここでは紹介しきれていませんが、分野によっても対口支援とは関係ない被災地に派遣されることがあります。土木系でいえば上下水道の職員は各協会ルートや相互支援協定ルートや直接要請ルートで行きます。たとえば「うちの県は輪島市が対口支援先か~」と思ってたら「貴市は金沢市で活動してください」と言われたりするわけです。

いろんなジャンルの公的な派遣団体についてはこちら↓の記事で解説しました。

自分がどの制度で派遣される可能性があるのか調べておきましょ~。

参考になりましたら幸いです。

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