こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
最近は災害級の大雨が多いですね。
短期間で豪雨が降ると、道路の排水施設や河川は流れ込んでくる雨水を受け入れきれずに、道路が冠水してしまいます。
私たち土木公務員は大雨対応の警戒態勢をとっていて、道路が冠水したときには、状況を見て「通行止め」などの措置をとることになります。
さて、ここで問題になるのは、水深何cmで通行止めにするのか?です。
通行止めの基準はない
結論から言うと、通行止めにする絶対的な基準はありません。
なぜかというと、道路の重要度や交通量、現場の地理的状況や、排水施設の場所、降雨量の見込みなど、道路の様々な条件が異なるからです。何センチ冠水したら通行止め!という一律の基準は設けられないのです。
道路はもちろん24時間利用されていますから、通行止めをすると車には迂回してもらう必要が出てきます。幹線道路みたいな大きい道だと、大型車両が通っていますから大型車が通れる道での迂回路を考えると何十分も遠回りをしてもらうこともありえますし、混雑の原因になってしまいますよね。
バス通りであれば、バス会社へ連絡し、迂回路線と仮バス停の決定を即時にしなければいけませんし、交通管理者(警察)を通して交通センターや消防などにも連絡することになります。
そういう諸々の事情を考慮して、通行止めの判断は、現場のようすを見て道路管理者(土木技師)の経験で行われます。
大雨災害時のどこもかしこも大忙しのときにこのような対応を迫られるのです。
通行止めは現場対応も大変ですが、関係機関と連絡調整をするのもすごーく大変なのです。
具体的な数値基準
と表向きの説明をしてみましたが、実際にはある程度の基準がないと判断できませんから、自治体もしくは道路毎に具体的な数値を設定していることがあります。
そちらを説明します。
JAFの冠水路走行テストによると
JAFが冠水走行のテストを行っています。
動画がありますので見てみてください。
現場条件は、集中豪雨で道路が冠水した場合を想定し、冠水距離は30m。水深は30cmと60cmで実験しています。車両はセダンタイプとSUVタイプ。
2種類の車が冠水道路を走りきれるかを検証したところ、水深30cmではセダン、SUVタイプとも時速10km、時速30kmで走り切れました。
水深60cmの場合ではどうでしょうか。セダンは時速10kmでしばらく走ることはできましたが、途中でエンジンが止まってしまいました。SUVタイプは時速10kmでは走行可能だったものの、時速30kmでは走行できませんでした。
このテストによれば、水深30cm以下であれば、ゆっくり走行すれば冠水した道路を走行できる可能性が高いことが分かりますが、この「水深30cm」はかなりリスキーな数値です。
エンジンが止まり立ち往生してしまえば一巻の終わりですから、「水深25cm」「水深20cm」の目安設定をしている自治体(道路)が多いと思います。
私は、冠水常習箇所では「水深20cm」かつ、まだ水位が上昇していく見込みなら現場判断で通行止めにします。
アンダーパスは危険がいっぱい
アンダーパスと呼ばれる、JRや国道を避けるために立体交差になっている地下道は注意しましょう。
周囲から水が集まりやすく豪雨のときはあっという間に冠水してしまいます。ポンプが備え付けてありますが、大雨だと追い付かず水位の上昇が早いため、「水深10cm」でも通行注意としていたり、「水深15cm」で通行止めとしていたりします。
現場に着いて「水深15cmやんな。ヨシ!」と測った数十分後に20cmになっていたりします。
普通の道路も危険がいっぱい
また、普通の道路も危険がいっぱいです。
冠水すると、汚れた水で路面の状況がわからなくなってしまいます。どこからどこまでが道路かわかりません。
実は、冠水で車両が動けなくなるときは、車両が水没するケースだけでなく、側溝などにはまり動けなくなるケースもあるのです。
普段通る道が側溝のフタがない道だったり、水路との間にガードレール・柵がなかったりすると危険ですので注意してください。
車へのダメージは深刻
それと、車のことは詳しく分かりませんが、車種によっては水深が5cmでも10cmでも、速いスピードで進入すると波がたち、車のマフラーが水没し、排気管に入りエンジンが止まってしまうかもしれないそうです。
通過できたとしても、車の内部へのダメージは残ってしまいますよ。電気系統がありますから当然ですよね。
アンダーパスを通って車が壊れてしまう有名なGIF画像置いときます( ゚Д゚)水圧を舐めないようにしましょう
「水深〇cm」はあくまでも目安にとどめ、状況がわかりづらいアンダーパスや全面冠水している道路などは進入を控えたほうがいいかもですね。
通行止めの道路でやむを得ず車両の進入を許すときは、できるだけ速度を落として通過してもらいましょう。
おわりに
というわけで、道路冠水と通行止めについて解説してみました。
JAFの実験映像は道路管理に携わるかたは必ず見ておくべきだと思います。それ以外の人でも、車を運転している方はご覧になって自分事として注意してほしいです。
道路管理について言えば、実際に通行止めにしていても、車が水没し(なんで通行止めなのに突っ込んでんだよ)、訴訟問題になることもあります。現場でずぶ濡れになりながら車を押して助けてあげても訴えられる可能性があります(笑)
土木技師の皆さんは心して、水深が上がると車両はどうなるのかについて、勉強しておきましょう。
では今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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