こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
2024年1月1日能登半島地震が発生し、大変な被害状況となっています。今まさに被災地では外部からの応援が駆けつけている状況です。
ここでは、自衛隊や消防、自治体職員など、被災地に応援に駆け付ける組織についてご紹介したいと思います。災害時の対応について考えるきっかけになってくれれば幸いです。
応援体制について…
まず、簡単に応援体制について説明しておきます。
「応援」とは、災害時に災害対策基本法や災害時相互応援協定などに基づき、人的・物的資源などを提供することをいいます。自主的に行われる場合もあります。国等の定型的な支援は、都道府県が要請して省庁のトップが指示するかたちで派遣されます。
応援・受援の関係を示した図がこちら↓です。
派遣される組織
では派遣される組織について、おもなものをご紹介したいと思います。
- (消防庁)緊急消防救助隊
- (警察庁)警察災害派遣隊
- (自衛隊)災害派遣部隊
- (国交省)TEC-FORCE
- (厚労省)DMAT
- (環境省)D.Waste-Net
- (日水協)応急給水隊・応急復旧隊
- (自治体)他自治体の職員派遣
- (民間)建設業協会など
- (民間)NPO・NGO
(消防庁)緊急消防救助隊
被災地からの要請を受け、消防庁から各県知事・市町村長へ応援を求めて出動されるのが緊急消防救助隊です。被災地での救助活動などを行います。
緊急消防援助隊は、平成7年の創設以来、令和4年1月末までの間に合計43回出動しているそうです。
今回の能登半島地震でもたくさんの都道府県から隊が派遣されています。
救助活動にあたってくれていますが、一部では重機がずっと待機されてたり、部隊も待機が多かったり、大隊に縛られて臨機応変に動けていないというネガティブな声も聞こえてきました。せっかく凄い熱意とパワーをもってる隊員が多くても、有効に活動できないのでは勿体ないですね。まあ火事に備えて待機する部隊も必要だとは思いますし、目的外であれば予算などの都合で動けないこともわかります。それでも大災害が起きる回数は限られていますんで、次から変えようではなく、被災地対応するなかで修正できるところは大胆に変えていってほしいと思います。
(警察庁)警察災害派遣隊
東日本大震災の反省・教訓を踏まえ平成24年に新設されたのが「警察災害派遣隊」です。隊としてはまだ新しめの制度ですね。
全国警察からすぐに被災地へ派遣する即応部隊と、長期間にわたって警察活動を行う一般部隊から成ります。
普段から警察は何でもやってくれてるな~と感じますが、災害時もいろいろと活動してくれています。治安が悪くなりがちなので、すぐに警察が駆けつけてくれるのはありがたいです。
(自衛隊)災害派遣部隊
一番過酷な現場に投入されるのが自衛隊の災害派遣部隊です。今回の能登半島地震でも崩れている道路を徒歩で超えて孤立集落に物資を届けたり、頭が上がらない存在ですね。
今回の被災地への派遣人数は当初は約1000人規模でした。2週間後くらいには7000人規模に増えましたが、同じ震度7を記録した平成28年熊本地震や平成30年北海道胆振東部地震では3~4日目で2万人を超えていたことを考えると、かなり少ない投入人員です。なぜかというと、北陸は陸上自衛隊の配備が手薄だから。さらに、能登半島への陸路のアクセスが南方向しかなく、しかも道路網が寸断されてるし、海と山に挟まれた地形は大規模に展開しにくい事情もあるようです。
近くに陸上自衛隊の基地があるってことは、災害時にかなり大きいみたいですね~。
あ、ちなみに「とにかく派遣人数を増やせばいい」と考えてる人は認識を改めた方が良いと思います。それはあくまで活動できる生活環境があれば、の話ですから。
派遣実績などは↓からどうぞ。
災害派遣|全国防衛協会連合会(公式ホームページ) (ajda.jp)
(国交省)TEC-FORCE
国交省からはTEC-FORCEという技術屋集団が派遣されます。
TECとは、Technical Emergency Controlの頭文字をとった略称で、TEC-FORCEは日本語で「緊急災害対策派遣隊」といいます。新潟中越地震などの経験を踏まえ、国からさらなる迅速な自治体支援ができるように平成20年に創設されました。
TEC-FORCEは、台風や豪雨、地震、津波、火山噴火などの大規模な災害が発生した時、または発生する恐れのある時に、現地を訪れ、土木や建築などの技術的な分野で被災自治体を支援しています。自衛隊、警察、消防の救助活動を支える存在といえますね。
こんな感じで発災直後の調査段階からTEC-FORCEは現地入りして活躍してくれます。道路や橋梁などが大きく損壊している場合は、国管理ではなくても復旧まで直轄事業で実施されます。
隊員は、普段は各地方整備局で河川や道路の維持管理・整備などを行っている職員たちで構成され、令和5年4月時点で16,000名以上の職員が指名されています。
まず災害が起きたときはすぐにリエゾンが派遣され現地で情報収集を行います。リエゾンは“仲介、橋渡し”を意味するフランス語で、災害対策現地情報連絡員のことをいいます。被災自治体からの要請とリエゾンからの情報を勘案して、必要な分野のTEC-FORCE部隊が派遣されます。自治体職員は窓口となる管轄の地方整備局へ要請しますが、大規模なときは全国の地方整備局からTEC-FORCEが派遣される仕組みです。
詳しくは下記サイトで自治体向けの資料もありますのでチェックしてみてください。
TEC-FORCEとは?(緊急災害対策派遣隊)|国土交通省水管理・国土保全局 (mlit.go.jp)
ちなみに能登半島地震での派遣状況は↓のようになっています。中部地整の資料より。
(厚労省)DMAT
DMAT(ディーマット)は大規模災害や事故が発生した現場で急性期(おおむね48時間以内)から活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。Disaster Medical Assistance Teamの略称で、日本語では「災害派遣医療チーム」といいます。
一隊の構成は4名で、医師1名、看護師2名、業務調整員1名を基本形としています。医療従事者なら誰でも抜擢されるわけではなくて、厚労省の養成研修を受けてDMAT隊員として登録される必要があります。
発災直後の活動を想定されていますが、実際には今回の能登半島地震のように数週間後に派遣されることもあるようですね。
じつは、災害時などに活動する保健医療活動チームはDMATの他にもたくさんあって、ざっと調べただけでも以下のような団体があります。
- 災害派遣精神医療チーム(DPAT)
- 日本医師会災害医療チーム(JMAT)
- 日本赤十字社の救護班
- 国立病院機構の医療班
- 全日本病院医療支援班(AMAT)
- 徳洲会医療救援隊(TMAT)
ほかにもいろんな団体の歯科医師チーム、薬剤師チーム、看護師チーム、保健師チーム、管理栄養士チームなどがあろうかと思います。
(環境省)D.Waste-Net
災害廃棄物については環境省の人的支援ネットワークD.Waste-Net (ディー・ウェイスト・ネット、災害廃棄物処理支援ネットワーク)と呼ばれるものがあります。平成27年9月に新設された枠組みです。
D.Waste-Netのメンバーは、国立環境研究所などの研究機関から、全国一般廃棄物環境整備協同組合連合会(全国環境連)などの廃棄物系の企業までさまざまです。復旧・復興のために日本建設業連合会なども参加しています。
どんな活動をするのかと言うと、当然被災自治体にごみ収集車等や作業員を派遣して生活ごみやし尿、避難所ごみ、片付けごみの収集・運搬、処理に関する現地支援を行ったりもしますし、仮置場についての視察をして情報提供や助言も行います。災害時は仮置場が重要ですからね⋯。
環境省が運営するひとつの枠組みの中に各団体が入ることによって被災地での混乱が和らぐはずです。良い取り組みだと思います。
(日水協)応急給水隊・応急復旧隊
日本水道協会からは応急給水隊が派遣されます。実際のところ協会員である自治体の水道局から給水車と職員が派遣されるってことです。国交省の散水車や自衛隊の給水車と分担しつつ、各給水拠点にて被災者の方へ水が配られます。
また、被災した水道施設の応急復旧隊も派遣されます。応急復旧隊は施工業者さんと協力して破損調査や復旧を担当します。被災が酷いときには仮設の復旧になることもあるでしょう。まず何よりも水を届けることが大事ですからね。
これらの支援は日本水道協会の「地震等緊急時対応の手引き」に基づいて実施されます。ほかにも政令市には別のルールがあるようですし、自治体間の協定や覚書で相互支援ルールを定めているところもあるようです。
他自治体からの職員派遣
被災地外からの職員派遣があります。説明すると長くなりすぎるので簡潔に書きますね💦
被災者を支援したり、被災自治体の行政サービスを継続するために、多種多様な業務が対象となっています。その業務を整理したものがこちら↓です。
これらの業務をおこなう職員が↓のような複数の枠組みで派遣されるのでぐちゃぐちゃになりがちです。受援の体制をしっかり考えておき、要請時のルールなどを守ることが大事ですね。受援計画については次回説明しようと思います。
- 全国知事会広域応援協定(ブロック協定)
- 都道府県間相互応援協定
- 全国市長会・町村会応援調整
- 指定都市市長会行動計画
- 市町村広域防災協定
- 県内市町村相互応援協定
また、職員派遣には短期のもの(数日~2週間とか)と長期のもの(1年、2年)があります。たとえば発災直後は短期派遣で交代しながら避難所運営支援などにあたりますが、そのような業務が落ち着いてくると、次はインフラの災害査定と復旧について1年とか2年単位で職員を派遣することになります。こちらは職員の身分を異動させての派遣となります。いずれも、ある程度職員数に余裕がある中核市以上の都市からの派遣となるでしょう。
建設業協会など
いままでは公的機関からの応援について説明してきましたが、もちろん沢山の民間企業からも人的・物的資源の提供がありますね。ありがたいです。
土木に関連するところだけでも、
- 建設業協会
- 日本建設業連合会
- 日本埋立浚渫協会
- 建設電気技術協会
- 港湾空港建設協会連合会
- 日本建設機械施工協会
- 建設コンサルタンツ協会
- 日本補償コンサルタント協会
- 港湾空港技術コンサルタンツ協会
- 北陸地質業協会
- 海洋調査協会
- 日本潜水協会
などなど書ききれないくらいの団体がありますね。地元の企業はもちろん、他県からも応援が駆けつけて、現地でインフラの調査したり復旧工事をしてくれています。新聞やテレビの報道では救助活動や避難所のようすばかりクローズアップされますので、建設会社などの活躍は知られていないような気がします。さらにひどいことに道路の復旧が遅いだの文句を言われる始末…。もっと評価されてほしいですね。
NPO・NGO
NPO・NGOも被災地ではボランティア活動などをおこなっていますね。事前に自治体と協定を締結していることが多いと思います。
NPOとはNon-Profit Organizationの略で「非営利組織」と訳されます。
NGOとはnon-governmental organizationsを略したもので、「非政府組織」と訳されます。
どちらも営利を目的とせず、課題を解決したり、よりよい社会をつくる活動を行う市民団体です。日本では、海外の課題に取り組む活動を行う団体をNGO、国内の課題に対して活動する団体をNPOと呼ぶ傾向にあるようです。
ちなみに、日本NPOセンターは「非営利とは、利益を上げてはいけないという意味ではなく、利益があがっても構成員に分配しないで団体の活動目的を達成するための費用に充てること」と説明しています。
市民団体については正直あまり詳しくありません💦 大雪りばぁねっとが東日本大震災の被災地であくどいことをやっていた印象が強くて個人的には100%信用するのは怖いです…。
そのほかにもボランティア・民間団体から応援いただくこともあります。それらは災害ボランティアセンターなどを窓口として受援する形になると思います。
おわりに
さまざまな組織が災害派遣することが分かりましたね。大規模災害のときには何万人もの方が被災地に迅速に駆けつけてくれる制度が出来上がっています。これが日本の強みであるし、素晴らしいことだと思います。
しかし、公務員をやってれば分かるんですが、制度があることによって逆に「災害に派遣した」という実績をつくるために派遣するみたいな目的を見失ってしまう現象が起きがちです。マイナスにはなりませんが……。メンツは気にせずに本来の目的を全うしたいですね。
そうは言いつつも、ノウハウを各地に持ち帰ることはできるので小さい自治体や遠方からでも派遣する意味はあると思います。被災地は災害対応を学ぶ場ではないのでこういう考えはあまり公には言えませんが。
災害対応について考えるきっかけになれば幸いです。
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