国土利用計画とは?

仕事全般

こんにちは。土木公務員ブロガーのカミノです。

今日は土木技師が抑えておくべき規制に関する法令の中でも、一番根本となる国土利用計画法を解説します。

一番根本のはずなのに意外と知られていない法律だと思います。

事務職の人や、公務員以外の建設業界の人にも知っておいてほしい基礎知識となります。

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国土利用計画法とは?

国土利用計画法とは、1974年(昭和49年)に施行された、重要な資源である国土を総合的かつ計画的に利用するために作られた法律です。その名の通りですね。

1955年~1973年までの高度経済成長で、日本の国土はイケイケドンドンな開発行為が盛んに行われ、秩序の無い国土利用を危険視した日本政府は次々に個別規制法を打ち出しました。それらをとりまとめたものが国土利用計画法です。というイメージで良いと思います。

国土利用計画法に書かれていることは大きく4つあります。

①国土利用計画

土地利用基本計画

③土地取引の規制

④遊休土地制度

本記事では、①について詳しく見ていきます。②と③、④は次回解説いたします。

(目的)
第一条 この法律は、国土利用計画の策定に関し必要な事項について定めるとともに、土地利用基本計画の作成、土地取引の規制に関する措置その他土地利用を調整するための措置を講ずることにより、国土形成計画法(昭和二十五年法律第二百五号)による措置と相まつて、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的とする。
(基本理念)
第二条 国土の利用は、国土が現在及び将来における国民のための限られた資源であるとともに、生活及び生産を通ずる諸活動の共通の基盤であることにかんがみ、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件に配意して、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を図ることを基本理念として行うものとする。

国土利用計画法

国土利用計画とは?

国土利用計画というのは、「全国計画」、「都道府県計画」「市町村計画」の3つを総称した言葉です。

抽象的な内容ですが、個別に見ていきましょう٩(ˊᗜˋ*)و

(国土利用計画)
第四条 国土利用計画は、全国の区域について定める国土の利用に関する計画(以下「全国計画」という。)、都道府県の区域について定める国土の利用に関する計画(以下「都道府県計画」という。)及び市町村の区域について定める国土の利用に関する計画(以下「市町村計画」という。)とする。

国土利用計画法

全国計画

全国計画とは、全国の区域について定める国土の利用に関する計画のことで、国が政令で定めます。

他の分野の計画にも関わってくるものですね。国交省のパンフレットを貼っておきます。詳しくはこちらのページをご覧ください。概要パンフレットを10分ほど眺めてみるだけで、ふんわりと国の骨子が掴めるかと思います。

(全国計画)
第五条 国は、政令で定めるところにより、国土の利用に関する基本的な事項について全国計画を定めるものとする。
2 国土交通大臣は、全国計画の案を作成して、閣議の決定を求めなければならない。
3 国土交通大臣は、全国計画の案を作成する場合には、国土審議会及び都道府県知事の意見を聴かなければならない。
4 国土交通大臣は、前項の規定により都道府県知事の意見を聴くほか、都道府県知事の意向が全国計画の案に十分に反映されるよう必要な措置を講ずるものとする。
5 国土交通大臣は、全国計画の案を作成するに当たつては、国土の利用の現況及び将来の見通しに関する調査を行うものとする。
6 国土交通大臣は、第二項の規定による閣議の決定があつたときは、遅滞なく、全国計画を公表しなければならない。
7 国土交通大臣は、全国計画の案の作成に関する事務のうち環境の保全に関する基本的な政策に係るものについては、環境大臣と共同して行うものとする。
8 第二項から前項までの規定は、全国計画の変更について準用する。
(全国計画と他の国の計画との関係)
第六条 全国計画以外の国の計画は、国土の利用に関しては、全国計画を基本とするものとする。

国土利用計画法

都道府県計画

都道府県計画は、それぞれ都道府県についての国土土地利用の計画ですね。

もちろん、都道府県が作成します。例えば、京都府は公式サイトのこちらのページに置いてあります。

基本方針だけ引用してみますね。

 本計画は、近年の急激な人口減少、少子高齢化の進展や、集中豪雨・地震等による大規模災害の頻発、京都丹波高原国定公園の指定、文化庁の京都への全面的な移転の方針決定、京都縦貫自動車道等の高速交通網の整備など府内の社会経済状況が大きく変化する中で、今後 10 年間を見据えながら、「明日の京都」、「京都府地域創生戦略」をはじめ、「京都府国土強靭化地域計画」等の本府における他の計画との整合性を図り、豊かな自然や歴史・文化の保全とともに、「京都流 地域創生」の実現を通じ、府域の均衡ある発展をめざす。
 なお、本計画においては、複数の用途が複合する土地利用を地域類型として捉えて検討することが重要であることから、都市地域、農山漁村地域及び自然維持地域に区分し、また、京都府は南北に長く自然条件等が大きく異なり、地域ごとに個性豊かな特徴を有していることや、前回計画以後の市町村合併等の状況を踏まえ、丹後地域、中丹地域、南丹(京都丹波)地域、京都市域及び山城地域の 5 地域に区分し、また、農地、森林、宅地等の土地利用状況ごとに区分して、基本方向を示す。

京都府国土利用計画 より

一文が長いよ!もっと細かく分けなさい!(⊙ө⊙)

京都って南北に縦長いですから、独自の地域分けをおこなっているようです。このように都道府県の条件に合った計画を立てています。

一度お住いの都道府県の計画を見てみると面白いかと思います。

(都道府県計画)
第七条 都道府県は、政令で定めるところにより、当該都道府県の区域における国土の利用に関し必要な事項について都道府県計画を定めることができる。
2 都道府県計画は、全国計画を基本とするものとする。
3 都道府県は、都道府県計画を定める場合には、あらかじめ、第三十八条第一項の審議会その他の合議制の機関及び市町村長の意見を聴かなければならない。
4 都道府県は、前項の規定により市町村長の意見を聴くほか、市町村長の意向が都道府県計画に十分に反映されるよう必要な措置を講ずるものとする。
5 都道府県は、都道府県計画を定めたときは、遅滞なく、その要旨を公表するよう努めるとともに、都道府県計画を国土交通大臣に報告しなければならない。
6 国土交通大臣は、前項の規定により都道府県計画について報告を受けたときは、国土審議会の意見を聴いて、都道府県に対し、必要な助言又は勧告をすることができる。
7 国土交通大臣は、第五項の規定により都道府県計画について報告を受けたときは、これを関係行政機関の長に送付しなければならない。この場合において、関係行政機関の長は、国土交通大臣に対し、当該都道府県計画について意見を申し出ることができる。
8 国土交通大臣は、前項後段の規定による意見の申出があつたときは、関係行政機関の長に協議するとともに、国土審議会の意見を聴いて、都道府県に対し、必要な助言又は勧告をすることができる。
9 第三項から前項までの規定は、都道府県計画の変更について準用する。

国土利用計画法

市町村計画

最後に、市町村バージョンですね。市町村の土地利用における最上位の計画になります。

私は自分の市のは見たことありません(;´・ω・)探してみたけど見つからず。どこにあるのかしら。

市町村計画については「定めることができる」とされているだけで義務ではないので、策定しない市町村もあるようです。

(市町村計画)
第八条 市町村は、政令で定めるところにより、当該市町村の区域における国土の利用に関し必要な事項について市町村計画を定めることができる。
2 市町村計画は、都道府県計画が定められているときは都道府県計画を基本とするものとする。
3 市町村は、市町村計画を定める場合には、あらかじめ、公聴会の開催等住民の意向を十分に反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4 市町村は、市町村計画を定めたときは、遅滞なく、その要旨を公表するよう努めるとともに、市町村計画を都道府県知事に報告しなければならない。
5 都道府県知事は、前項の規定により市町村計画について報告を受けたときは、第三十八条第一項の審議会その他の合議制の機関の意見を聴いて、市町村に対し、必要な助言又は勧告をすることができる。
6 前三項の規定は、市町村計画の変更について準用する。

国土利用計画法

市町村計画を策定するメリット

策定しなくてもいいならや~らない。というのはダメですね。しっかり意義(メリット)を把握して、適切に策定しましょう。

策定することで以下のような効果があります。

  • 土地利用構想図等を活用して市町村基本構想等の内容を具体的な場所に落として空間的に検証できる
  • 将来の土地利用の方向性と開発計画等との整合性を可視化できる
  • 土地に関する公共投資を計画的・効率的に行えるようになる
  • 土地利用基本計画に対する市町村長意見の「有力な根拠」となる
  • 個別土地利用規制法の枠を超えた「総合的な土地利用」の基本方針を示すことができる
  • 開発計画が市町村の土地利用の方向性と整合しているかチェックできる
  • 熟度の高い開発計画を視野に入れた土地利用の方向性を示すことで当該計画に配慮した土地利用が誘導できる
  • 近隣市町村との連携により広域的な開発課題に対応できる
  • 開発計画について市町村独自の規制・誘導方策を導入する際の根拠となる
  • 住民の土地利用に対する理解促進が図られる
  • 行政と住民の土地利用に対する認識が共有化されるとともに、住民主体の取り組みが喚起される
  • 住民意見の反映により、住民等とのコンセンサスを得やすくなる
  • 策定時に議会報告等の手続きを経ることで、市町村全体のコンセンサスを得ることができる
  • 土地利用関連の調整の場ができる
  • 土地利用の調整検討を通じて関係部局間でビジョンを共有(合意形成)でき、市町村計画の実効性の向上につなげることができる
  • 検討を通じて土地利用行政の矛盾を発見できる
  • 策定過程で土地利用に関して都道府県の関係部局と協議する機会が得られる
  • 開発計画や個別事業を実施する際の参考資料として活用できる
  • 全国―都道府県―市町村の共通の指標から整理された情報を活用し、当該市町村の特徴や状況等が確認できる

他の計画との関係性

市町村には国土利用計画の他にも、市町村基本構想都市計画マスタープラン独自の土地利用計画などの似たような計画があります。

ちなみに、市町村基本構想は、地方自治法の改正に伴い義務化が廃止されましたが、多くの市町村がそのまま残している?と思われます。

例えば、京都市は昔の市町村基本構想をそのまま公開したままにしているし、都市計画マスタープランもサイトから見ることができます。京都市の都市計画に関する基本的な方針、農業振興地域整備計画、森林整備計画なども検索してみると見つかるかもしれません。

これらの計画の関係性について、整理したものがこちらの表になります。

国土利用計画(市町村計画)策定の手引き より

第9条以降について

第1~8条についての解説は以上になります。

こういった国土利用計画があることを知らなかった人も多かったんじゃないかなあと思います。

第9条では、国土を5つの地域に分ける定義が書いてあります。こっちのほうが面白いんですよね。個別規制法とリンクしていて、より身近な規制も出てきますし。

次回解説したいと思います。

カミノ
カミノ

こういう計画書を読むのが好きな人は、政策部署が向いていますね。

では、今日はこのあたりで失礼します。ほなまた~ノシ

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