西宮市の内部経費適正化によるコスト削減支援業務について思うこと

エッセイ

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

西宮市が令和5年度に「内部経費適正化によるコスト削減支援業務」を実施した結果が話題になっていました。ざっくり書くと支援業務によって市役所の外注系業務を2億円コスト削減できたのでコンサルに1.3億円支払います、ということらしい。

いや~、一瞬「???」ってなりますよね(笑)

とっても面白い内容でしたので、これについて私の意見を書こうと思います。

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業務の概要

概要については西宮市の坂本市議がブログに詳しく書かれていますので、そちらをご覧ください。

今回の報告書は6ページ分が載っています。すぐ読めるのでまずはそちらに目を通してくださいね。

1.3億円をドブに捨てた!?「内部経費適正化によるコスト削減支援業務の成果について」 – 西宮市議会議員 坂本龍佑 (sakamotoryusuke.com)

簡単に説明すると、もともとの計画では、西宮市の外注業務(委託料・使用料及び賃借料・消耗品費など)の中からコスト削減できる80億円の対象事業を選定し、支援業務コンサルが仕様書を見直し、最大8億円のコストカットをするというもの。

支援業務の報酬は、固定費3000万円と削減効果額の50%以内を成果報酬、つまり最大4億3000万円を支払うというものです。

報告書によりますと、委託期間などの問題から実際の対象事業費はすごく減って10億円程度で、コスト削減額は約2億円、成果連動報酬は50%なので1億円。固定費と合わせて支払額は約1.3億円になったそうな。それでも凄いですねΣ(・ω・ノ)ノ!

スケジュールによると
令和5年7月 委託業務契約締結
      支援業務開始
令和6年3月 支援業務終了
令和6年4月 成果連動支払額算定

となっており約9か月間の業務委託だったようです。

委託先はボストン・コンサルティング・グループ合同会社。経営コンサルですね。(経営とか戦略とかの使い分けが分からない💦)

私が思った事

2億円のコストカットをしてコンサルに1.3億円払う、ってなかなか目を引きますよね。

内容をさらっと読んで私が思ったことは、

・成果連動報酬ってそんなのあり?

・9か月の業務で1.3億は美味しすぎる。成果報酬50%は適正?

・9か月(実質もっと短い)でよく仕様書変更できたな~

・報告書だけ読むと、回数や頻度を減少させただけで安直すぎる

・どうやって担当部署を説得したの??

・街路樹剪定や除草の回数は減らさない方がいい

・昇降機保守の契約年数の見直し(1年→5年)は良いと思うけど、契約額はそんなに安くなる?

・失敗だったと分かった時の責任は?

 

こんな感じですかね。ほぼ憶測によるものですのでご了承ください。整理できていませんが説明していきます。

成果連動報酬ってそんなのあり?

まず、PFSについて

成果連動とかいう馴染みがない方法ですね。これは成果連動型民間委託契約方式(PFS)と呼ばれる契約方式らしいです。私はまったく知りませんでしたが、役所もこういうのやってるんですね(やっていいのですね)。業務委託の効果を高める手法として注目されているらしく、横浜市なんかも同じ内部経費適正化をPFSでやってるみたい~

内部経費適正化によるコスト削減支援業務に関するサウンディング調査について 横浜市 (yokohama.lg.jp)

新しい方式を試してみるチャレンジ精神は素晴らしいと思います。だからこそ西宮市でもGOサインが出て、西宮市議会も賛同したのでしょう。

9か月の業務で1.3億は美味しすぎる。成果報酬50%は適正?

それにしても、成果報酬50%は美味しすぎない???削減額8億想定(実際は2億)でなぜ50%も支払ってあげるのか意味不明です。10%とかでも8000万円ですよね。20~30%想定でもそれなりの成果を上げてくれると思うんですけど。不調不落なら増額すればいい話で。

労務費・材料費・機械損料などを綿密に見積もって金銭感覚を養ってる土木職からすると、ほとんど労務費だけなのにポンと億支払うのは正直よくわからないです。建設コンサルタントもほぼ人件費のみを積み上げて結構高い設計金額になりますが、それは技術力を見込んだ技術者単価で積み上げるからですよね。経営とか戦略系のコンサルも当然その分野に精通した人材価値によって高額報酬を得てるんでしょうけど、9か月で1億円は不当に高いと思います。建設コンサルと経営コンサルでそんなに報酬に差をつけていいのでしょうか。

成果報酬の設定はもっと慎重にすべきでしょう。

報告書だけ読むと、回数や頻度を減少させただけで安直すぎる

効果額と見直し内容の表を見ると誰しも「え?回数や頻度減らしただけやん」って思うかもしません。まあ私も思いました(笑)

でも実際外部の人間が入ってコストカットできるのってそんなもんでしょ。だって内政の無駄な部分って市役所職員を何年も経験しないと見えてこないじゃないですか。しかもそんなものに限って削減も大変だし効果も測れない。だから、外注系業務の減らせるものを減らす。今回対象としていたものが外注系業務ばかりなので想定通りだと思います。

回数や頻度を減らすだけなら、役所が自分たちで考えてやっとけよって話ですけど。坂本市議のブログでも書いてましたが「やっても評価されないから」ってのが大きいですね。というか減らしたら悪影響が出るかもしれないから減らしづらいです。評価はされないし職員にメリットもないのに、悪影響や問題が出たら実施した職員の責任になりますからね。

だからこそ削減のキッカケになったのは良い事だと思います。ただし回数や頻度を減らしたことが適切だったのかは分かりません。まだ新しい仕様による業務が始まったばかりなのです。

9か月(実質もっと短い)でよく仕様書変更できたな~

4月に契約締結するためには仕様書見直しは2月頃には完了してるはず。つまり、実質7カ月くらいで事業の問題点(無駄)を洗い出し、担当部署や委託先と協議して次年度発注の仕様書を変えてるわけです。これは凄いですね。逆に言うと、それくらい簡単な内容だけさわったのかもしれません。

協力的な職員が多かった、もしくはそうならざるを得ないような状況にしたのだと思われます。

どうやって担当部署を説得したの??

土木の分野では…、

・公園除草(街路樹除草回数 3回→2回/年)
・公園の遊具点検等パトロール(巡回 3回→1回/年)
・河川除草(回数 3回→2回/年)

回数を減らしていますね。これだけで7500万円くらいのカットです。

いやいやいや、回数減らして大丈夫なんですかね?

てかこれを担当部署が納得したのが不思議です。他自治体の内容を示して「隣町は2回で済ませてますよ。3回は贅沢なので減らしてください」と説得したんでしょうか。全庁的な取組のなかで圧力があったのでしょうか。そんなことを勘ぐってしまいます。

この担当部署を説得したノウハウがこの業務の肝なのかなと思います。もし、役所が自主的に削減に動いておらずコンサルの力で変えたのならそれはすごい貴重なノウハウです。そうなると企業秘密なんでしょうけどね💦そこを教えてくれ~

街路樹剪定や除草の回数は減らさない方がいい

回数削減が正解だったのかは分かりません。自治体によって状況が違うので適切な回数や頻度は違いますから。

公園に関して言えば、年3回だった除草を2回に減らすのは相当なハレーションを生むと思います。

(報告書には「街路樹除草」と書かれていますが、街路樹は剪定です。除草は植栽帯の雑草や芝生にたいして行います。まったく別物ですが、ここでは除草のことを書きます)

夏場は草を刈っても一度雨が降るとグングン伸びて1か月と経たず同じ状態になってしまうこともあります。除草は回数が多ければ多いほど利用者にとってありがたいでしょう。とくに公園は地域住民が日常的に使う場所ですから、行政がしないのであれば、地元の町内自治会・子供会・公園愛護会などが主導して、地域住民がせざるをえません。今までその地元負担と行政負担のバランスは押したり引いたりして均衡していたわけですが、いきなり市内全域でそれを変えた今回の改革はとても大変なことです。

だからこそ担当部署がよく折れたなと思います。

十分に検討と精査がされていればいいのですが…

昇降機保守の契約年数の見直し(1年→5年)は良いと思うけど、契約額はそんなに安くなる?

昇降機はエレベーターのことです。法律などで点検ルールが決まっていますので、毎月1回とか点検してます。見直しで契約年数1年→5年にしたことは良い事だと思います。なぜなら、職員の発注・契約事務が減るから。長期契約できるものはどんどんしてほしい。

ただ、5年契約になったからといって契約額がそんなに下がるのかなーと思います。内容が変わらなければ設計金額は変わらないはずです。削減額は複数年契約になったメリットを入札者がどれだけ見込んで落としてくるか次第になります。まあ5~10%下げれるかな?くらいじゃないですか?わかりませんけど。

遠隔点検を導入したことのほうが効果的だったと思います。点検ルールは明確に決まってるので、むしろ「遠隔でOK」なところは全部遠隔にしたほうがいいです。それは役所が自力で見直すべきところだったと思います。

失敗だったと分かった時の責任は?

アフターフォローがどうなるのかも気になります。例えば、除草回数を減らしたことで問題が多発して結局2年後に元に戻しましたってことになったら、コンサルからお金を返還してもらえるんですか?そのあたりのことも契約内容に規定しているのでしょうか。

まあできないでしょうけどね。コンサルの提案を承諾したのは役所ですから、提案の根拠となるものが明らかに間違っていない限り、コンサルには責任を追及できないと思います。

そうなると、キッカケはコンサルによるテコ入れだったとしても、コスト削減失敗の責任を取るのは担当部署になります。問題が起きたときに対応したり謝罪したりするのも担当職員なのです。

最後に

さて、最後になりましたが、そもそも論として地元事業者へ委託する仕事を削るのは良くないっていう考えもあると思います。今回西宮市は2億円のコストカットしたわけですけど、もし受託するのがすべて地元の事業者であれば、その地元の売り上げが2億円減るということですよね。土木はよく「公共事業は景気対策になるからええやん」の理論で(国が)ガンガン公共事業を増やしたり補助をバラまいたりしますが、市役所の外注業務も同じ理論が言えると思います。そんな風に思う人もいるでしょう。

これに関しては、私はどうでも良いと思っています。景気対策とか雇用創出とか経済普及効果?何それ美味しいの?

行政は必要な仕事を民間にお願いして、効果を出す。それだけです。無駄な業務を減らすのは良いことなのです。

西宮市みたいなチャレンジ精神をもって取り組みたいですね。

ではまた。

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