平板載荷試験とは、実際に現場でおこなう原位置試験のひとつで、直径30cmの載荷板を設置して、荷重をかけて沈下量を測定し、地盤の支持力を求める土質試験です。
こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
土質試験のひとつに平板載荷試験というものがあります。
現場で簡易的に試験できるため市役所の公共工事ではよく実施しますし、民間の造成工事などでも多用されています。
今日はそんな平板載荷試験について詳しく解説します。
平板載荷試験とは?
平板載荷試験とは、実際に現場でおこなう原位置試験のひとつで、直径30cmの載荷板を設置して、荷重をかけて沈下量を測定し、地盤の支持力を求める土質試験です。
目的としてよくあるのが、L型擁壁やボックスカルバートを設置するときに地盤が安全に支持する力をもっているか、基礎地盤が設計地耐力以上の地耐力があるか、という確認のためにおこなうことが多いと思います。
メリットはなんといっても原位置で直接測定できて信頼性があること、結果がわかりやすいことですね。また、比較的短時間に試験できることも特長ですが、バックホーなどの重機を置くスペースが必要になるので、あまりに狭い現場では実施することができません。
それと、平板載荷試験で確認できる地盤の性状は深さ60cmまでなので、それより下に軟弱地盤が予想される場合は、使用してはいけません。得られた評価を鵜呑みにするのは危険ということです。
「平板積荷試験で調査できる地盤の性状は、平板の直径の2倍程度の深さまでである」(基礎構造設計指針より)
平板載荷試験には「地盤の平板載荷試験」と「道路の平板載荷試験」の2種類がありますが、基本的に考え方は同じで載荷時間などが違うだけです。
一般的な「地盤の平板載荷試験」で説明しますね。
試験方法
試験方法については、地盤工学会の地盤の平板積荷試験方法(JGS1521)に規定されています。
概要だけ説明します。
一般的には直径30cmの載荷板に荷重をかけていきます。載荷板は大きいほうがより正確な応答を測れますけど、それだけ荷重も大きくしなければならないので普通は30cmを使います。
荷重をかけるときにその反力となるものが必要ですよね。計画載荷圧力にもよりますが、重さ10tくらいの重機であれば大丈夫で、よくバックホーが使われます。
予備載荷などをおこなって、準備が完了したら、いよいよ本載荷をおこないます。
最大載荷圧力を8段階くらいに分けて、各段階で載荷圧力に達したときに経過時間0分、1分、2分、5分、10分、15分、20分、25分、30分で沈下量を測定します。だんだんと載荷圧力を増やし、これを繰り返す感じです。載荷してから沈下が落ち着くまで時間が掛かるのでこういうルールになっています。
最大載荷圧力は、設計支持力の3倍を設定しましょう。
例えば、設計支持力度が95kN/m2であれば、計画最大載荷圧力はわかりやすく300kN/m2で設定するといいと思います。
載荷板(Φ30cm)への実荷重は、300kN/m2 × 0.0707m2 = 21.2kN となります。
最大まで載荷したら、次は除荷を段階的にしていきます。5分間隔です。
次の状態になったら試験を終了します。
1)計画の最大載荷圧力に達したとき
2)載荷板周辺の地盤に亀裂が入り、地盤の破壊が認められたとき
3)沈下量が30mm以上になったとき(載荷板の直径の10%)
試験でわかること
平板積荷試験でわかる地盤の支持特性は次の通り。
・極限支持力度 Pu(kN/m2)
・地盤反力係数 Kv(kN/m3)などです。
重要なのが、地盤が壊れる応力度である「極限支持力度」です。
支持力度は、「支持力」「地耐力」「地盤反力度」「応力度」「荷重強さ」などで言い表すこともあるので混乱してしまいますよね(;´・ω・)
試験結果から判定する
①試験結果としては荷重を増やしていき急激に変位が大きくなるところを極限状態とします。
次の代表的な2パターンのうちのどちらかを採用します。
パターンA:logP-S曲線において、荷重を増やした時に曲線が沈下軸とほぼ平行となる場合の載荷圧力Puを極限支持力とする。
パターンB:logP-S曲線において、綺麗な曲線から沈下量が直線的に変わる載荷圧力Puを極限支持力とする。
②急激な変化が見られない場合は、まだ載荷圧力に対する保持能力があると考えられるため、極限状態は確認できていませんが、最大載荷時を極限状態とします。
試験の目的は「基礎地盤が設計地耐力以上の地耐力があるか」を確認するためなのでこれで構わないのです。
基本的に①か②となります。それ以外にも次の③、④で判定する方法もあります。
③急激な変化が見られない場合は、降伏荷重をlogP-logS曲線の変曲点から推定する場合もありますが、降伏荷重に対する定義が不明確ですので取り扱いに注意です。
④また、実務的に30mm変位したところを極限状態とすることもありますが、30mmも変位してしまうのは異常だと思いますので、同じように取り扱いには注意してください。
ハイ。極限支持力度がわかりましたね。
そして、極限支持力度を安全率3で割った数値が、地盤の許容支持力度となります。
地盤の許容支持力度≧設計支持力度 となれば、「構造物に対して十分耐えられる地盤である」と言えます。
もし、耐えられない地盤なら地盤改良をしたり、構造物の設計を変えたりする必要がありますね。
監督職員としてチェックするところ
まずは、現場で試験装置が正しい場所に正しい方法でセッティングされているか確認しましょう。構造物設計のときの設計地耐力を確認し、その3倍の数値が計画最大載荷圧力となっているか、現場代理人もしくは試験屋さんと認識を共有しておきましょう。また、計画最大載荷圧力に対応したバックホーを持ってきているか、載荷手順に間違いがないか、載荷途中で地盤がひび割れたりしていないかを見ておきます。
監督職員としてチェックするのはこれくらいですかね。あとは試験結果のグラフを確認するくらいです。
現場立会はおこなった方がいいのですが、小規模な工事なら業者に任せるときもあります。その場合は打合せをしっかりして、現場の写真記録をすべて取ってもらいましょう。
おわりに
ということで、平板載荷試験について解説してみました。
わかりづらかったという人は土のイメージが出来ていないのかもしれません。
ご家庭にある小麦粉や砂糖で実験してみてください(笑)
小麦粉を締め固めたあとに、スプーンなどで上から軽く押してみます。軽くなら耐えると思いますが、強く押していくと、ある強さからスプーンがズズズズ~っと入っていくはずでしょう。その強さが地盤が壊れる極限支持力なのです。構造物を置いたときにそうならないように、平板載荷試験で極限支持力を調べて、その3分の1以下の圧力で構造物を設計するわけです。
平板載荷試験は、市役所の公共工事ではよく使いますし、許認可工事でも「地質調査していないので、工事に入ってから現場で平板載荷試験して地耐力を確認します。」と言われるときがあります。
何を目的に、どう試験して、何の結果を得られるのかを覚えておきましょう。
では、今日はこのあたりで。
またぬん(‘ω’)ノ
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