バックホウの基礎知識まとめ

土木全般

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

「バックホウ」は建設現場で最も使われている機械ですね。

ここでは、土木系公務員が知っておくべきバックホウの知識をまとめました。

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バックホウとは?

バックホウとは、掘削機械の一種で、ショベル(バケット)をオペレータ側向きに取り付けた油圧ショベルのことをいいます。おもに掘削と積込、荷吊りなどに使われます。さらに先端のバケットを専用アタッチメントに換えれば、取壊し、穴あけ、草刈りなど色々な作業をおこなうことができます。万能機ですね。

いろいろな呼び名

ホウ(hoe)は鍬のこと。後ろ向きにバケットがついてるのでバックホウと呼ぶんだと思います。

別の呼び名がたくさんありますので、一覧表にしてみました。

名称説明
バックホウ積算基準書の呼び方。現場系の公務員はこれで統一されてると思う。BHとも表記する。でも国交省の正式な文書ではドラグショベルを使ったりする(裏切り)
バックホーメーカーカタログにバックホーと書かれていることがあります。業者さんにも広く使われてますね。
油圧ショベル社団法人日本建設機械工業会とJISでの統一名称。建機業界での正式名称みたいなもの。
パワーショベル建機大手メーカー小松製作所が商品名として使っていたので広まった名称。労働安全衛生規則にもパワー・ショベルと書かれている。バケットが前を向いているものをパワーショベルと呼ぶような使い分けもされるっぽい。
ドラグショベル日本クレーン協会が「クレーン機能付きドラグ・ショベル」で統一しているため、クレーン界隈と労働基準監督署がこれを使う。なぜか労働安全衛生規則にも第153条にのみ登場する。
ユンボフランスのシカム社の製品名が由来。レンタルのニッケンがこのユンボを登録商標。現場でよく使われる呼び方ですね。
ショベルカー報道などメディアでよく使用されることから、一般的には最も浸透している呼び方かも。

現場系の公務員なら設計積算で「バックホウ」表記を使うので、書類も全部「バックホウ」で統一したほうがいいでしょう。一応他の呼び名があることは覚えておきましょう。

バックホウの部位名称

つぎに、部位の名称です。

株式会社トクワールドさんの公式サイトに分かりやすい写真がありました。

油圧ショベルの仕様や呼び名・名称について | トクワールドから引用

油圧ショベルの仕様や呼び名・名称について | トクワールドから引用

ブーム、アーム、バケット、クローラ(キャタピラ)くらいを覚えておけばいいかな。バケットの先の尖ってる部分を爪といいます。

バックホウの種類

バックホウはおおきく分けるとクローラ型とホイール型、トラックバックホウに分かれます。そして、クローラ型には小型バックホウとバックホウがあります。

さらに仕様や機能によって細かく分類され、例えば、後方超小旋回型・超低騒音型・クレーン機能付きなどがありますね。表にすると↓のような感じ。ここでの分類は「建設機械等損料表」に基づきます。

大分類小分類機能
小型バックホウ(クローラ型)標準型クレーン機能付き、超低騒音型
後方超小旋回型
超小旋回型
電動式
バックホウ(クローラ型)標準型クレーン機能付き、超低騒音型、ICT施工対応型
後方超小旋回型
超小旋回型クレーン機能付き、超低騒音型
超ロングアーム型、スライドアーム型超低騒音型
ディーゼル/電気ハイブリッド型超低騒音型
ホイール型
トラックバックホウ

ざっくり説明していきましょー。

小型バックホウ

機械質量が6t以下、バケット容量(平積)0.2㎥以下の小型バックホウで、足回りはゴムクローラでブームスイング機構を有し、ブレードを装備したものが多いです。ブームスイング機構とは、ブーム自体を左右に振って狭い所でも作業できる機構です。

バックホウ

機械質量が6tを超え、バケット容量(平積)0.2㎥を超える中大型のバックホウです。一般的にブレードやブームスイング機構はついていません。

ホイール型

普通はクローラ型です。

ホイール型は足回りがゴムクローラじゃなくてタイヤのやつ。公道もそこそこの速度で走れますが運転免許とナンバープレートが必要です。キャタピラでは走行してはいけません。工事の規制内であればキャタピラ走行可能ですが、舗装を痛めますので極力長い距離は移動しないでください。

標準型と後方超小旋回型と超小旋回型の違い

標準型は旋回するときに前(ブーム側)も後ろ(カウンターウエイト側)も大きくクローラからはみ出るものです。

後方超小旋回型は後ろの旋回半径が小さくなっている(クローラから少しはみ出ても可)もので、狭い場所でも取り回しがしやすくなっています。メーカーの呼び名では「超」をつけてない後方小旋回型だと思います、どうでもいいけど。

超小旋回型はもっとスリムになっていて、前も後ろも旋回半径が小さく、左右両側に障害があるような場所に適しています。掘削した土砂を小さい半径で180度旋回してダンプトラックに積み込むことができます。

電動式

作業環境を考慮してエンジンを搭載せずに電動機で油圧ポンプを駆動させるものです。例えば、基礎立坑掘削などで坑内に投入されて活躍します。

超ロングアーム型

文字通りブームとアームが長いバックホウです。長い法面の整形や掘削で用いられます。アームが長いってことは負荷を掛けれないので、通常の同クラスよりもバケット容量は半分くらいになったりしますね。

クレーン機能付き

株式会社カイノス公式サイトから引用

今ではクレーン機能がついたものが多いですね。

バケットの裏側にフックがついていて、吊り作業ができるものです。専用の「クレーンモード」に切り替えて使用します。作業半径や荷重を検出するセンサがついていて過負荷時には警報を発します。

クレーンモード中は運転席後ろくらいにあるランプがくるくる点灯しますので、監督員は必ずチェックしましょう。法令・規則で、荷を吊ってる状態で走行してはいけないと決まっていますから注意してください。労基署も表向きには絶対ダメです!と言ってますが、正直現場条件的に仕方ないこともあると思います。てか、やってる業者ばかりです。なので、やっていいですよとは言えませんが、少なくとも吊り作業中は絶対吊り荷に近づかないこと!人が近づかなければ人身事故は起きませんから。(やっちゃダメだからね!)

超低騒音型

いまでは低騒音は当たり前ですね。超低騒音型は低騒音型の騒音基準値からさらに6dbを超える騒音の低さを達成したものらしいです。私も詳しくないです…。あとややこしいですが排出ガス対策型ってのもあって、基準値が1次~4次まであります。現場では設計で指定されているものを使用していなければ減額変更の対象となりえます。

ICT施工対応型

流行りのICT施工ができるやつです。

「現場⇔ICT建設機械⇔設計データ」を衛星によって繋ぎ、ミリ単位での施工が可能となります。カーナビの超正確バージョンみたいなものですね。

なんと自動制御による施工が可能で、その場合はオペレーターはボタンを押したり、レバーを単純操作するだけで計画出来形に正確に仕上げてくれます。体験会で乗らせてもらったことがあるのですが、免許を持っていない私でもかんたんに操作することができました。

ICTについて詳しく知りたい方は↓の記事をご覧ください。

規格・サイズ

規格・サイズはちょっとややこしくて、重量で○○トンと呼んだり、バケット容量でコンマ○○と呼んだりします。土木公務員はバケット容量のほうを理解していた方が良いと思います。

さきほどは積算上の分類で小型バックホウと呼んでいましたが、メーカー的には0.3t~0.8tクラスを超ミニバックホウ、1.5t~6tクラスをミニバックホウと呼んだりします。まあ適当に0.1㎥より小さいくらいのをミニと呼んでますね。たぶん。

バケット容量はさまざまなサイズがありますが、設計積算上はおもに↓のサイズです。早めに覚えてしまいましょう。

・山積 0.08m3(平積 0.06m3)
・山積 0.13m3(平積 0.10m3)
・山積 0.28m3(平積 0.2m3)
・山積 0.45m3(平積 0.35m3)
・山積 0.8m3(平積 0.6m3)
・山積 1.4m3(平積1.0m3)

普通は山積のほうで呼びます。0.08ならミニ、0.13ならコンマイチサン、0.28ならコンマニーハチ、1.4ならイチヨンと呼びます。

ちなみにちょっと面倒くさいのが、↑のバケット容量は新JIS規格で、現場や業者さんによっては旧JIS規格で呼ばれることもあるんです。(旧JISのほうが1割ほど小さい。)実際に現場で聞いたり、書類上も使われるのは0.25、0.45、0.7、1.2、1.6あたりでしょうか。これは↑と同じ容量だけど旧JIS規格で呼んでいるだけかもしれません。私も詳しくはわかっておりません💦笑

山積と平積の違い

山積、平積……なにそれ?って思った方のために説明しておきます。

文字からイメージできると思いますが、「山積」はバケットに山盛り一杯(勾配1:1で)積んだときの容量です。

山積↓

アースマシン株式会社 公式サイトから引用

一方、「平積」はバケットのふちまで平らにした、すり切り一杯の容量です。

平積↓

アースマシン株式会社 公式サイトから引用

積算のときにイメージしよう

設計積算のときにどうやってサイズを選ぶか、の話をしましょう。

標準的な現場は、施工パッケージで勝手に選ばれますから特に何も考えず設計できると思います。

でも、現場が狭かったりしてそのサイズで施工できないなら施工パッケージは適用できない、という考え方もあります。設計間違いということ。

積算するときに現場をイメージしましょう。例えば、供用中の道路工事で考えてみましょう。まず、基本的な考え方として、施工できる最大サイズで積算します。その方が日進量が大きくなり、単位数量当たり単価は安くなるからです。

つぎに、現場の広さや掘削量から建設機械を選んでいきます。小規模や狭い場所なら0.13、狭くなくて一回り大きいサイズを持ち込める場所なら0.28、がっつり大きいバックホウを持ち込めるなら0.45、それより大きいサイズは供用道路ではまず見かけないかな、0.7くらいは見かけるかな…?広い事業用地で掘りまくる現場用ですね~って感じで選定します。これは自治体や部署にもよるのかなと思いますが。

ちなみに発注者の積算で見込んでいるサイズとは違うバックホウで施工してもOKです。それは任意施工の範疇ですので設計変更の対象となりません。ただし設計より大きいサイズで施工してしまうと役所の発注が過大設計だったということになるので、発注者の立場的にあまりよろしくないと判断して減額協議することがあるかもしれません。←ホントは変更の対象にならないんだけどね。

各種アタッチメント

バケットを各種アタッチメントに付け替えることができるのがバックホウの大きな特徴です

建設現場で見かけるものをざっくりとご紹介しますね。

ブレーカー

ブレーカー 日本キャタピラー公式サイトより引用

ハンマーとも言います。コンクリートを壊すためのアタッチメントです。ハンドブレーカーでやってたらキリがないよ~💦とか早く終わらせたいぜ!という現場ではバックホウのブレーカーでガンガン壊していきます。騒音や振動に気をつけてください。

大割と小割

パクラー 日本キャタピラー公式サイトより引用

クラッシャーとパクラーとも言います。柱や梁などコンクリート構造物を嚙み砕くようにして壊すアタッチメントです。奥歯には鉄筋などを切るためのカッターがついてます。恐竜みたいなやつですね~🦖

小割はコンクリートを小さく破砕したり、鉄筋を丸め込んだりする作業に使えます。

グラップル

グラップル 日本キャタピラー公式サイトより引用

フォークとも言います。挟むことができるアタッチメントです。幅が広いタイプは巨石用で、普通サイズは丸太を挟んで移動させたり、伐木除根したり、解体作業で挟んでバキバキ壊したりするらしいです。

オーガ

オーガ 日本キャタピラー公式サイトより引用

オーガは穴掘りで使うアタッチメントです。道路の標識や照明柱の基礎はオーガで掘削します。

その他

他にも、ふるいバケット、草刈り用、レーキなどなど、用途によってさまざまなアタッチメントがあるらしいです。私が建設現場で見かけるのは↑の4つくらいですかねー。

必要な資格免許

さて、次に免許のお話です。建設現場でバックホウの運転するためには免許が必要です。根拠法令は労働安全衛生法、労働安全規則、安全衛生特別教育規程など。公道を走る場合は自動車免許が必要です。

バックホウの免許は特別教育技能講習の2種類があります。※料金や時間は教習所・免除項目によって変わりますので参考です。

名称機体質量料金時間
小型車両系建設機械(整地等)の運転の業務に係る特別教育3トン未満約2万円学科7時間/実技6時間
車両系建設機械(整地等)運転技能講習3トン以上約5~10万円学科13時間/実技25時間

(整地等)とは(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の略ですね。

例えば、0.28㎥クラスのバックホウに乗りたければ、機体質量は6トンくらいなので技能講習が必要です。技能講習のほうは他資格をもっていれば色々と免除されるみたいですね。

カミノ
カミノ

私は免許もっておらず、いつか取ってみたいなーと思ってます。取るなら技能講習なんですけど3日間フリーな時間がないし、業務で使わないから踏ん切りがつかないんですよねー…

解体アタッチメントをつけるなら…

さきほどご紹介したブレーカーやクラッシャーなどの解体用アタッチメントをつけて作業する場合は、別に(解体用)の特別教育か技能講習を受けなければいけません。

ふつうは(整地等)を取った後に受講すると思いますが、その場合は運転実技は免除されます。

名称機体質量料金時間
小型車両系建設機械(解体用)の運転の業務に係る特別教育3トン未満約2万円学科7時間/実技7時間
車両系建設機械(解体用)運転技能講習3トン以上約3万円学科13時間/実技25時間

クレーン機能を使うなら…

クレーンモードで吊り作業を行う場合は、「つり上げ荷重5t未満の小型移動式クレーン」という扱いになりますので、小型移動式クレーン運転技能講習を受けなければいけません。

また、運転ではなく、玉掛け作業(吊り荷を引っかけて上げ下げを指示したりすること)をする場合は、玉掛けの免許が必要です。

名称対象料金時間
小型移動式クレーン運転技能講習吊上げ荷重が5トン未満の移動式クレーンの運転約5万円20時間
玉掛け特別教育吊上げ荷重が1トン未満のクレーン等の玉掛け業務約2万円9時間
玉掛け技能講習吊上げ荷重が1トン以上のクレーン等の玉掛け業務約4万円19時間

土木作業員であればバックホウの免許を持ってないってことはありえないと思いますが、玉掛けの免許を持ってない人はいる可能性がありますよ。玉掛け作業があるときは施工計画書・作業員名簿などを見て誰が免許を持ってるのか確認しておきましょう。

おわりに

公務員の仕事で使いそうなバックホウの知識をまとめてみました。なかなか網羅できたのではないでしょうか?

バックホウは掘削があるならどんな現場作業でも使いますからね~。知っておきなきゃ仕事できないような専門用語もたくさんありますね。

ココは間違ってるよとか、○○について書いてほしい、とかありましたらコメントくださいな。

ではまた。

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