市役所の「発注者支援業務」を赤裸々に語る

仕事全般

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

さて、今回は市役所の発注者支援業務について解説します。

多少踏み込んだ現場の実態をお話ししますので、そういう自治体もあるんだなー程度で、

あくまで参考程度にお願いします。

大きな枠での発注者支援業務についてはこちらの記事で説明していますのでよかったらどうぞ٩(ˊᗜˋ*)و

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市役所の発注者支援業務

発注者支援業務とは、コンサル会社からの派遣技術者が、公務員の代わりに公共工事の設計・積算や検査などの業務をおこなうものです。1年以上もしくは数か月単位で行政機関と建設コンサルタント会社が契約し、そのコンサル会社から技術者を派遣する仕組みになっています。

通常は4月1日から役所のオフィスに来てもらい、みなし公務員の立場で12か月間働いてもらいます。

市役所では主に積算技術業務工事監督支援業務の2つを委託しています。

積算技術業務

工事発注に必要な図面や資料作成、積算をおこない、発注工事の予定価格を算出します。

CADオペレーター兼事務員みたいな感じですね。積算ソフトもインストールしてもらい作業してもらいます。

① 積算に必要な現地調査
② 工事発注図面及び数量総括表(数量計算書)の作成
③ 積算資料作成
④ 積算システムへのデータ入力(データリストの作成)

カミノ
カミノ

工事発注前の仕事ですね。

工事監督支援業務

工事目的物の位置、寸法、使用する材料等についての段階確認や立会をします。また、監督職員の報告や施工業者から提出される資料と現地状況の照合をしたり、設計変更の協議用資料を作成します。

発注者支援といえば、工事監督支援を指すくらいこれがメインの業務です٩(ˊᗜˋ*)و

①工事の契約の履行に必要な資料作成等
②工事の施工状況の照合等
③地元及び関係機関との協議・調整に必要な資料の作成
④工事検査の臨場

カミノ
カミノ

発注後の仕事です。

どっちがメインなの?

どちらかというと、工事監督支援がメインですが、両方してもらってるという実態があります。

というのも市町村レベルでは設計部署と監督部署は分かれていませんし、小さい自治体なら用地取得から施工・検査、維持管理までひとつの部署が担当していたりします。

ですから、担当技術者(コンサルからの派遣の人)にも職員と同じように始めから終わりまで事業全体に関わってもらわなければならないのです。そっちのほうが効率がいいというか都合がいいんですよね。

市町村によっては、工事監督支援業務として発注したのに積算技術業務までしてもらったりしていると思います。積算ソフトまで使うかは自治体によりますが、例えば手が空いてるときに発注図面や数量表を作成してもらったり。ご厚意で仕事してもらってるわけです。

ここから蛇足ですが。
この担当業務以外をお願いする行為は共通仕様書に書いてある業務内容に違反しますし気が引けますよね。

それならルールを変えてしまえばいいのではないでしょうか。

最初から共通仕様書を修正したり、特記仕様書に役所ルールを明記したりして、発注前後の仕事を全部やってもらうようにする方法。そうしている自治体もあります。

積算基準上は問題ないの?と思うかもしれませんが、一応大丈夫だと思います。

そもそも工事管理は定量化できるものではありません。後述しますが、工事監督支援業務では「技師Cが1年間働く」という積算になっていますので、技師Cが業務時間内にできるレベルの仕事を与えるのであれば多少ルールを変えてもいいのではないかと思います。

共通仕様書と積算基準は国の業務体制に合わせたものですから、市町村では市町村なりに私たちに合う方法に変える必要があるのです。

メリット・デメリット

メリットはもちろん正規職員の負担が減ることです。あとは、民間にお金をまわすという意義もなくはないですね…。適正な業務遂行ができれば、仕事をせずにクビにもできない職員に給料を支払うよりは無駄なく予算を使えるいい方法だと思います。

デメリットとして、公務員の技術力の低下が考えられます。現場確認を他人に行ってもらうので、「現場で学ぶ」ということができなくなってしまいます。建設現場で学べることは多いです。「コンサルに行ってもらえ」とすぐ言う上司がたまにいるのですが、人材育成という観点からは致命的なデメリットだと思います。CADの操作技術や積算技術も上がらないかもしれません。

また、正規職員よりも全然能力がない人がくるかもしれないというリスクがあります。役所の発注図面を作成したことがない実績ゼロの人が派遣されてきたりします。

その場合は、逆にその人に職員が時間を取られることになったり、結局仕事をしてもらわなくなったり、予算の無駄遣いになってしまいます。

この問題は職員側の運営が悪いとも言えると思いますが、その対策については、またのちほど書きますね。

発注者支援業務っていくらかかるの?

では次に、技術員を一人雇うのにいくらかかるのか、費用計算をしてみます。

まずは、ベースとなる労務単価の説明です。

発注者支援業務には国が公表している「積算基準」がありまして、例えば国土交通省の技術管理のページに載っています。

積算基準をみてもらうと分かりますが、技師A=管理技術者と、技師C=担当技術者の労務単価を積み上げる形になっています。技師Cが実際に役所のオフィスにくる担当技術者です。技師Aは打ち合わせをたまにやる発注支援業務の責任者です。

建設コンサルタントと契約し、私たち委託者は技師Aと話し合ったり指示を出したりして、技師Aの部下である技師Cに仕事をしてもらう仕組みなのです。すごく無駄で非効率ですよね(´・д・`)

カミノ
カミノ

ちなみに、担当技術者は当然建設コンサルの社員という扱いですが、実態としては他社やフリーランスの人が一時的な雇用体制でコンサル会社所属になっていて、派遣されてたりします。ぶっちゃけフリーランスの人と半額で契約したいです(;´・ω・)

技師A、技師Cとは?

技師AとCについては、設計業務委託等技術者単価というもので価格が決まっています。また、何をする人(できる人)なのかが決まっています。国土交通省の令和3年度の通知を見てみましょう。

令和3年度 設計業務委託等技術者単価について(国土交通省)

技師A
一般的な定型業務に精通するとともに高度な定型業務を複数担当する。また、上司の指導のもとに非定型的な業務を担当する。

基準日額(1日の単価):51,200円

技師C
上司の包括的指示のもとに一般的な定型業務を担当する。また、上司の指導のもとに高度な定型業務を担当する。

基準日額(1日の単価):32,800円

基準日額は全国一律の単価で、毎年引き上げられています。皆さんの給料は上がってますか?

ここでいう定型業務とは、以下のように定義されています。

定型業務とは、

・調査項目、調査方法等が指定されており、作業量、所要工期等も明確な業務
・参考となる類似業務があり、それらをベースに応用することが可能な比較的簡易な業務
・設計条件、計画諸元の設定等が比較的容易で、立地条件や社会条件により業務遂行が大きく作用されない業務

担当技術者には、標準的な工事設計や設計変更、前例に倣った資料作りをしてもらうわけです。

カミノ
カミノ

具体的な業務内容は、共通仕様書に書いてありますよ。

費用を計算してみる

では、実際に積算基準にもとづいて計算をしてみます。(令和3年度版)

計算はものすごく簡単です。

工事監督支援というのは担当技術者が1人なら、「1か月あたり 基準日額(令和3年度は32,800円)× 19.5 人/日・月 + 超過業務標準相当額」の金額になります。つまり、残業代を抜きにすると1か月で639,000円が直接人件費ということです。

諸経費の率は固定なので、おおよそ諸経費率(税込み)は2.3倍とすると、単純計算で税込み1,469,700円。

さらに、打合せや工程管理のための管理技術者(技師A)の労務費も掛かります。

それらを加味すると、技術者1人を1か月雇うだけで160万円以上掛かる計算になります。標準残業月30時間を見込む場合は、約180万円にもなります( ゚Д゚)

カミノ
カミノ

うーん。どうですか? 高い気がしますね。

費用対効果はあるの?

1か月160万円以上を支払ってるわけですが、その効果はどれくらいあるのでしょうか。

土木技術やCAD操作に精通した有能な方は、与えられた事業をそつなくこなし、業者ともスムーズに対応してくれます。安全で適切な施工のために発注者が何をしなければならないか理解しているコンサルさんは素敵です٩(ˊᗜˋ*)و

大きく職員の負担が減り、職員1〜2人相当の効果があるかもしれません。

しかし、その一方で、正規職員よりも全然能力がない人がくることもあります。公共工事のいろはを全然分かっていない実績ゼロの人が派遣されてきたりします。入札の条件に会社の実績をつけれても、技術者には実績条件はつけれませんからね(;´・ω・)

職員にも仕事ができる・できないの大きな差があるのと同様に、コンサルさんでも技術力と事務能力に差があるんです。

ハッキリ言ってお金の無駄遣いしてるな~と感じることもありました。

カミノ
カミノ

これが市町村の発注者支援業務の実態です。

担当技術者に良い仕事をしてもらうために

あまりネガティブなことばかり言っていても仕方ありませんので、では、担当技術者に良い仕事をしてもらうためにはどうしたらいいでしょうか?

そのポイントを考えたいと思います。

責任感を与える

仕事をしっかりやってもらうための、根っこにあるものは責任感です。責任を持たない仕事は、仕事ではありません。

図面作成や書類チェックなどでミスや見落としが多発するような人がいます。初回打ち合わせや、事業毎の説明の際にしっかりと間違いがあれば責任を取ってもらいますという意識付けをしましょう。

事業の全体像を伝える

よく人へ仕事を依頼するときの方法で、「目的やビジョンを共有しましょう」という話を聞きます。小さな目標だけを相手に伝えて仕事をしてもらっても、そこに工夫や改善は見られません。モチベーションも高く持てないと思います。

なるべく事業の全体像、事業の発端と今までの経緯、これから何のために、どういう方法で、どういうスケジュールで進めていくのか、詳しく説明しましょう。

ただの「助っ人」という立場から、ビジョンを共有している「仲間」になりましょう。

成果品の仕様をくわしく伝える

忙しい職員にありがちですが、業務を依頼するときに、「このスケジュールで○○に立会にいってください」とか「これの○○をExcelで作ってください」という雑な頼み方をする人がいます。「業者と連絡とってすべて進めてください」でやっていける部署ならいいのですが、少なくとも私の部署では無理です。

何かしら成果品をもらわなければいけませんから、その仕様をできるだけ詳しく説明し、前例があるなら、それを貸与したりして、手戻りがないようにしましょう。優秀な人でも、頼み方ひとつで成果品のクオリティが変わってきます。

また、業務に対しては、小さな案件でも必ず締切日を設定しましょう。依頼日と締切日を示すことで担当技術者が自ら優先順位をつけることができます。

その他

他にも、自分や上司のこだわりポイントを伝えたり、成果品にダメなところがあった場合、丁寧になぜダメなのかを伝えたりすることで、担当技術者の仕事への取り組み方が変わってくると思います。

他人に仕事を振るときのセオリーと同じですよね。仕事に忙殺されている職員は、そんな丁寧に対応するのは難しいと感じるかもしれませんが、逆に、これらをしないほうが後から忙しくなってしまうんです。

カミノ
カミノ

何事もコツコツと丁寧に。

おわりに

ということで、市役所の発注者支援業務について、詳しく説明してみました。

月180万円の費用はなかなか高額だと思われたかもしれません。それくらい技術者の労務単価は高いのです。

しかも全国一律の価格なので地方はめちゃくちゃ不利になってます。間違いなく職員を雇った方が安いです。CADオペレーターや事務員さんを直接雇用できるだけでも全く違うんですけどね。予算の目的が違うので難しいところです…。

せっかく月180万円払って技術者に来てもらってるのでお互いに良い仕事ができるよう、制度を有効活用しましょう。

では、今日はこのあたりで。

またぬん(*’ω’*)ノ

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