こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
役所がおこなう仕事のなかで「単独事業」と「補助事業」という言葉をよく聞くと思います。この2つは扱う予算が違います。とくに、補助事業がどういうものなのか分からない方が多いと思いますので簡単に説明したいと思います。
予算って何?みたいな全般的なことは「予算管理」カテゴリーの他の記事を見てみてください。
私がちょっぴり詳しい道路行政をメインに解説していきますね。つまり国土交通省の所管の話です。
単独事業と補助事業
公共事業は、予算に着目すると単独事業と補助事業に分けられます。
2つの違いは自治体のお金だけで実施するか、国からのお金も使って実施するかの違いです。国のお金を使うことを国庫補助と呼んだりします。
単独事業:自治体の単独費のみで実施する事業
補助事業:国からの補助金・交付金を使う事業
もし、あなたが道路改築工事を担当することになり、先輩から「この事業は補助だよ」と言われたら国のお金を使う事業ということです。
国からもらうお金をまとめて「国庫支出金」と呼び、補助金・交付金はその中の「国庫補助金」という分類になります。ちなみに、都道府県から市町村への補助金もありますが、市の規模が大きくなればほとんど無いですね。ここでは省略します。
単独事業の場合は、ごく普通に自治体の一般財源と地方債で実施するものです。
ということで、ここでは補助事業について詳しく見ていきましょう。
補助金と交付金
さきほど補助事業は補助金・交付金を使うと書きましたが、似たような言葉ですよね。
じつは、この2つでまた種類が分かれ、補助事業(通常補助)と交付金事業に分かれます。しかも、交付金事業も2種類あります。
うーん、ややこしいですね(´・ω・`)
なんでこうなってるか説明します。昔は道路や治水、まちづくり、住宅などのそれぞれの整備事業ごとに補助金をバラバラに要望してたのですが、自由度が低いし、たくさんある事業予算をひとつひとつ厳格に管理するのは非効率な気がしますよね? そこでH22年に各事業を目的(テーマ)毎にまとめて同じ予算枠内にパッケージ化した「社会資本整備総合交付金」が誕生しました。さらにH24に「防災・安全交付金」が追加されました。
ちなみに、一般概念として「補助金」は個別に配るもの。「交付金」は複数事業に対して配るものとされています。
経緯をイメージ図にするとこんな感じ。
元々の補助金も残ってるので、大きな3つの枠組みがあるってことですね。また、これらをもらう事業をまとめて補助事業と呼んでます。
それぞれどんなものか説明します。
補助金(通常補助)とは?
上に書いた通り、昔からある補助金は個別事業につく予算です。通常補助とか個別補助とか呼ばれます。補助金事業とは呼ばない気がします。
小さい自治体は無かったりしますが、都道府県や政令市などはいくつか事業をもっていることがあります。
特徴は次のとおり。
・個別事業につく予算。
・他の事業には使えない。
・繰越はできる。
・国の予算管理が厳しい。
・無電柱化とか橋梁長寿命化とか特定事業はココで予算をとる。
イメージはこんな感じ↓
補助金を出すということは国側からするとその分の予算計上をしているということで、個別事業ならなんでもいいわけではありません。国の補助メニュー(支援メニュー、単にメニューとも呼ぶ)にあったものを選ぶ必要がありますが、ここでは詳細の解説はしません。
浜松市を例にとってどんな補助事業があるのか見てみましょう。
国交省の道路IRのサイトに各都道府県の補助事業が載ってましたので、そこから抜粋してみると、浜松市の通常補助はこちら。(道路予算、R4年度第2次補正)
工種 | 路線名など | 事業名 | 事業費(百万円) |
---|---|---|---|
改築 | (主)浜松環状線 | 中郡・笠井工区 | 2 |
改築 | 国道152号 | 池島~大原 | 500 |
土砂災害対策 | 国道152号 | 池島~長尾 | 29 |
無電柱化推進計画事業 | 省略 | 浜松市無電柱化推進計画事業 | 34 |
道路メンテナンス事業 | 13橋の修繕 | 橋梁長寿命化修繕計画 | 172 |
道路メンテナンス事業 | 2トンネルの修繕 | トンネル長寿命化修繕計画 | 54 |
上3つはもしかしたら静岡県が実施するものかもしれません。(たぶん政令市である浜松市がすると思う)こんな感じで個別事業を持ってる自治体もあります。
交付金とは?
社会資本整備総合交付金と防災・安全交付金は、同じ目的の複数事業をひとつにまとめた予算です。
まとめられたものはパッケージと呼ばれます。
この交付金では、整備計画を作成します。そして、計画のなかで「期間」と「目標」が設定されて、予算をつけてもらい、計画に基づいて複数の事業を実施して、最後にどのような効果が得られたのか評価する決まりになっています。
社会資本整備総合交付金=社交金
防災・安全交付金=防安金
整備計画=パッケージ=PG
と略称で書かれることがあるよ。
特徴は次のとおり。
・同じ目的の複数事業がパッケージ化されている。
・パッケージ内では他の事業に流用ができる。
・制度上は非重点計画から重点計画へのパッケージを越えた流用ができる。
同じ目的の事業が集められパッケージ化されてますので、そのなかで予算のやりとりが出来ます。パッケージを越えて流用することはできません。しかし、重点対象となる計画があり、一般計画から重点計画への流用は特別に認められています。そのためには変更交付申請が必要になり面倒くさいので自治体によっては認めてないところもあるでしょうね。てゆーか「計画性が無い」と断られても仕方ないですし。
また、もちろん社交金と防安金は別物ですので流用はできません。
イメージはこんな感じですね↓
また、細かい話をすると、それぞれの事業は国交省のどこかの局所管になっています。例えば道路分野でも都市局と道路局が所管している事業があり、それらがPG内に混在していることもあるのです。この局間の流用も事実上できません。
では、浜松市の例を見てみましょう。
社会資本整備総合交付金/浜松市←こちらに一覧が載っていました。このページに載ってるもので令和5年度に実施されるものは下水道・道路・河川・公園・市街地整備など21個あり、書き写すのは面倒くさいのでやめておきます(笑)どんなものがあるのか見てみてくださいね(*´ω`*)(投げやり)
さらに計画名をクリックすると個別計画書をみることができます。
例えば「浜松市都市公園等安全・安心対策の推進(防災・安全)令和4~8年度」の中身を見てみましょう。
1ページ目は、概要と成果目標(定量的指標)
2ページ目は、計画のなかに入っている事業たち
3ページ目は、その他資料(説明図面)です。
他の自治体でもウェブサイトで社会資本整備総合交付金を検索すると、このような整備計画が見つかると思います。
浜松市のように各分野をごちゃまぜに全部載せてたり、各所管課が別ページでバラバラに載せてる自治体もあります。もっと分かりやすく整理してほしいですよね。
おわりに
どんどん詳細まで書きたくなっちゃって、どこまで書けばいいのか分からない…。とりあえず今回はここまで。
ここで解説したものは国交省所管の補助制度です。土木分野でも他省庁は違う制度になりますのでご注意ください。
あと、補助事業で、事業費の何%が国のお金なのかって疑問があるかと思いますが、制度によって、また対象事業によって違うんです。だいたい5割くらいと思ってたらいいのかな。詳しくは国の各制度の手引きや交付要綱附属第3編 国費の算定方法を読んでください。
他にも色々疑問があるかと思いますが、個別に質問に答えるのはしんどいのでコメントで質問をいただいても回答できません。ごめんなさい。ただ、○○についても解説してほしいですとか要望あれば今後の参考にはしたいと思います。
交付金の返還はできませんので計画的な予算執行を心掛けましょう。ヤバそうなときは早急に主管課まで連絡してください。
では今日はこのあたりで。
参考になりましたら幸いです。
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