鉄筋とは、金属をロールで押しつぶして伸ばして棒状に加工した鋼材です。
こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
今日は「鉄筋」について、概要を解説したいと思います。
建設工事では必須の材料ですよね。
鉄筋とは
鉄筋とは、金属をロールで押しつぶして伸ばして棒状に加工した鋼材です。
コンクリートの中に入れて、鉄筋コンクリートとしてよく使われています。
GIS規格では、JIS G 3112「鉄筋コンクリート用棒鋼」、JIS G 3117「鉄筋コンクリート用再生棒鋼」として規定されています。
区分として「丸鋼」と「異形棒鋼」がありますが、丸鋼はほとんど使われません。リブ(節)がついた異形棒鋼の方がコンクリートやモルタルの付着性が高く、引張力への抵抗力が高いからです。
異形棒鋼は一般的には、「異形鉄筋」と呼ばれます。
ということで、ここでは異形鉄筋について土木の視点から解説したいと思います(*’ω’*)
異形鉄筋の種類
異形鉄筋には、SD295、SD345、SD390、SD490、SD590A、SD590B、SD685A、SD685B、SD685R、SD785R、の10種類があります。
主に、使う鉄筋は、SD295とSD345です。
SD295とSD345の使い分け
SD295とSD345は強度が違います。
ですから、使用区分がおおまかに分かれていますので、なんとなく覚えておくといいかと思います。こんな感じです↓
SD295
- 橋梁上部
- 堰
- 水門
- 樋門
- 樋管
- ポンプ場
SD345
- 橋梁下部
- 擁壁
- ボックスカルバート
- 場所打ち杭
- ケーソン
これはあくまで一般的な例です。使い分けを見て何か気付きましたか?
んーSD295のほうが建築物っぽくないですか?
そうなのです!実はSD295は建築、SD345は土木という使い分けをされています!あくまで一般的にはね。
ちなみに、SD345はD19以上などの鉄筋径が大きいものが使われますよ。
JIS改正について
ここで、あれ?SD295Aは?
と思われた方がいらっしゃるかもしれません( ゚Д゚)
以前は295のなかに295Aと295Bの2種類ありましたが、2020年のJIS G 3112改正により、295Bが廃止されて、295Aが295になりました。
令和3年4月19日までの間は、JISマーク表示認証において、JIS G 3112:2010を適用してもよいこととなっていますので、当面はSD295Aとして製造されることも考えられます。
それ以降は「SD295A」という表記は使わないように注意しましょう。
鉄筋の特徴
鉄筋の特徴について解説します。
鉄筋はなんといっても、引張力に強い( ゚Д゚)
細い鉄筋で自動車を宙づりにできるほどです。
コンクリートは引張力に弱いため、コンクリートと一緒に使うことで弱点を補ってくれるだけでなく、さらに、鉄の温度膨張係数がコンクリートと似ていること、コンクリートのアルカリ性が鉄筋の酸化を防いでくれることから、相性は抜群で、土木構造物の多くが「鉄筋コンクリート」で造られています。
鉄筋は金属ですから、「靭性」があります。靭性とは“材料の粘り強さ”のことで、荷重に対して、すぐにブチっと切れてしまうのではなく、グニューっと伸びてなかなか切れないような性質です。
構造設計者は「靭性」を重視します。
構造物がいきなり壊れてしまっては、大惨事になってしまいますから、荷重に対して変状が出るのは仕方ありませんが、変状を確認しつつも、対策を施すだけの猶予を与えてくれる構造物が求められるのです。
設計の際には、設計条件から、構造物の寸法と鉄筋の種類と径などの必要量が求められます。その必要量が正しい計算結果なのか、必要量を満たしているかの確認は重要なものです。
鉄筋の表記
図面、仕様書、設計書で表記される鉄筋の規格等について解説します。
このように表記がされますよね。ひとつずつ見ていきます。
鉄筋の種別
先頭のSDは鉄筋の種類で、異形棒鋼という意味です。
SR:丸鋼
SD:異形棒鋼
ちなみにSSは一般構造物用の圧延鋼材(普通は鋼板のこと)を表しますが、SS400がシンプルな棒鋼を意味していることもありますので頭の片隅に置いておいてください。
機械的性質
295というのは、機械的性質を表していて、
降伏点または耐力が295N/mm2以上であるものを意味します。
また、引張強さも表のとおり規定されています。
種別 | 種類の記号 | 降伏点または耐力(N/mm2) | 引張強さ(N/mm2) |
---|---|---|---|
丸鋼 | SR235 | 235以上 | 380~520 |
丸鋼 | SR295 | 295以上 | 440~600 |
異形棒鋼 | SD295 | 295以上 | 440~600 |
異形棒鋼 | SD345 | 345以上 | 490以上 |
異形棒鋼 | SD390 | 390以上 | 560以上 |
異形棒鋼 | SD490 | 490以上 | 620以上 |
呼び名(公称直径)
D13は、公称直径にちなんだ「呼び名」です。
サイズを意味しています。
それぞれの規格はこちらの表になります。
呼び名 | 公称直径(mm) | 公称周長(mm) | 公称断面積(mm2) | 単位質量(kg/m) |
---|---|---|---|---|
D10 | 9.53 | 29.9 | 71.33 | 0.560 |
D13 | 12.7 | 39.9 | 126.7 | 0.995 |
D16 | 15.9 | 50.0 | 198.6 | 1.56 |
D19 | 19.1 | 60.0 | 286.5 | 2.25 |
D22 | 22.2 | 69.8 | 387.1 | 3.04 |
D25 | 25.4 | 79.8 | 506.7 | 3.98 |
D29 | 28.6 | 89.9 | 642.4 | 5.04 |
D32 | 31.8 | 99.9 | 794.2 | 6.23 |
D35 | 34.9 | 109.7 | 956.6 | 7.51 |
D38 | 38.1 | 119.7 | 1140 | 8.95 |
D41 | 41.3 | 129.8 | 1340 | 10.5 |
D51 | 50.8 | 159.6 | 2027 | 15.9 |
なお、公称直径は、あくまで設計上の想定の数値であって、現物の実直径のことではありません。
メーカーによってわずかにズレはありますし、D13の鉄筋の節の上を測っても、節の下を測っても12.7mmではありません。
検査では直径を測ってる写真をとるかもしれませんが、あくまで現場でモノを確認しました、という形だけのものだと覚えておきましょう。また、呼び名と種別は鉄筋に印字されていますので、それも併せて確認しましょう。
現場での判別方法はこちらの記事でご紹介しています。
よく使うD13は、1mでおよそ1kgです。
覚えやすいですね。
鉄筋を配置する間隔(ピッチ)
@100というのは、鉄筋を100mmピッチで平行配置していくという意味です。100mmなら結構密な小型構造物ですね。
図面では@もしくはctc(center to center)と表記します。「芯芯」と言ったりしますね。
「@100」と「ctc100」は同じ意味です。
また、寸法が5@100と書いてあれば、鉄筋を100mm間隔で配置して、5個の隙間ができるという意味なので、鉄筋は6本必要です。注意してください。
ちなみに、「間隔」は、基本的に鉄筋の断面の中心から中心の距離のことを指しますが、図面によっては、鉄筋径を除いた隙間である「あき」のことを示していることもあるかもしれません。
役割による鉄筋の名称
鉄筋は、どこに配置されるか、どのような役割を持っているかによって、いろいろな呼び方があります。
私のイメージで一部をご紹介します。
名称 | 説明 |
---|---|
主鉄筋(主筋) | 荷重を主に負担する鉄筋です。土木技術者としては、当然、主筋を見分けられることが大切です。荷重方向にもよりますが、柱の場合は垂直方向に延びた鉄筋。梁の場合は柱や梁から延びた鉄筋。スラブの場合は短辺方向の鉄筋です。 |
正鉄筋 | スラブや梁において、正の曲げモーメントによって起こる引張応力を受けるように配置した主鉄筋のこと。 |
負鉄筋 | スラブや梁において、負の曲げモーメントによって起こる引張応力を受けるように配置した主鉄筋のこと。 |
配力鉄筋(配力筋) | 主鉄筋と直角に配置される鉄筋。応力を分散させることを目的とし、乾燥収縮や温度応力によるひび割れを抑制する効果もあります。 |
腹鉄筋 | スターラップと折曲鉄筋のこと。 はり等に配置される斜め引張鉄筋で、せん断補強として用いられます。 |
スターラップ | 鉄筋コンクリート造の梁の主筋に一定間隔で垂直に巻き付けた鉄筋のこと。 部材のせん断強度を高めるために、軸方向鉄筋を取り囲むように梁と直角方向に配置されます。 |
折曲鉄筋 | 主鉄筋を曲げ上げ、あるいは曲げ下げたもの。一般には45°で折り曲げます。 |
帯鉄筋、フープ筋 | 柱の軸方向鉄筋の座屈防止とせん断補強のために、軸方向鉄筋を所定の間隔ごとに取囲んで配置した横方向鉄筋のことです。 |
用心鉄筋、補強鉄筋 | 応力度を計算で求めることはできない個所に、用心のため配置される鉄筋です。 |
組立鉄筋 | 鉄筋を組み立てるときに、鉄筋の位置を確保するための補助の鉄筋です。 |
ハンチ筋 | ハンチ部に配置される鉄筋で、組み立て筋の一種。用心鉄筋でもあります。 |
フック | 鉄筋の定着または重ね継手のために鉄筋の端部を折曲げた部分のことです。 |
私も初めて見る構造物ならよくわからなかったりします。
なるべく多くの配筋図を見て勉強することが大切ですね。
土木と建築の鉄筋工事の違い
建設工事で広く使われている鉄筋ですが、
土木と建築では少し違いがあります。
図面・仕様書の違い
まず、図面ですが、建築は標準の鉄筋仕様書があり、そのルールのもとで、材料を拾い出し、加工を行い、配筋、組み立てを行うことになります。この許容範囲内で自由度の高い配筋ができるということです。
一方、土木では、発注図面で配筋図と設計数量が指定してあり、加工筋の形状・寸法・本数・ピッチ・かぶり・継ぎ手の長さなどが細かく決められています。施工業者は図面通りに施工する必要があります。
施工方法の違い
建築では、比較的小さめの径が使われるので、人力作業になります。さらに、鉄筋が交差した部分を一箇所おきや二箇所おきに結束すればよいとされています。
一方、土木では、同じようにD10~D25くらいの径が主流ではあるものの、橋梁やダム、トンネルなどの大型構造物になると、それより大きくD25~D51の鉄筋も普通に使います。
大型の鉄筋工事ですと、クレーンなどを使うことになります。
しかも、結束については、原則交差した部分を全て結束しなければなりません。
配筋図の例
土木工事の配筋図のイメージはこのようなものになります。これはボックスカルバートの例です。
詳しく書かれててごちゃごちゃしてますね。
配筋図の読み方については、こちらの記事で解説しました。
おわりに
ということで、鉄筋の概要について解説してみました。
その他、鉄筋にまつわる専門用語などは、それぞれ解説していきたいと思います。
勉強熱心な皆さまの参考になれば幸いです。
では、今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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