コンクリートの受入検査

土木の材料

コンクリートの受入検査とは、荷卸し時に生コンのスランプ・空気量・温度・圧縮強度・塩化物総量・単位水量などを測定し、品質を確認することです。

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

ここでは品質管理基準の必須項目である「受入検査」について解説します。監督職員も理解しておく必要がありますよ~。

コンクリートの基礎知識について知りたい方はこちらの記事をどうぞ↓

トップ写真は建材技術センター公式サイトから引用

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なぜ受入検査をするの?

材料を現場搬入するときには材料検収をしますよね。製品の寸法を測ったりするはずです。

コンクリートの場合も同じです。なぜ受入検査で品質をチェックするのかというと、生コンが不安定な製品だからです。骨材や砂など自然材料を使うこと、気候の影響を受けることから品質にぶれが生じます。そのため、施工業者が行う受入検査で品質のぶれが許容値内に収まっているのかを確認しなければいけません。しっかりと耐久性のあるコンクリート構造物をつくるために大切な検査なのです。

何を根拠に実施するのかというと、発注機関の共通仕様書や土木施工管理基準です。このなかの品質管理基準で規定されています。一般的なルールはコンクリート標準示方書[施工編]などに記載されていますが、発注機関のルールが優先されます。

例えば、名古屋市緑政土木局の品質管理基準では、無筋・鉄筋コンクリ-ト・舗装コンクリート〈レディーミクストコンクリート及び現場練コンクリート〉の項目に書いてあります。↓のURLの下の方にPDFがあります。

名古屋市:緑政土木局の積算基準・設計単価・標準仕様書・構造図・各種管理基準(事業向け情報) (city.nagoya.jp)

品質管理基準のコンクリート工種の「施工」で「必須」となっているものが受入検査のことです。

名古屋市の請負工事品質管理基準(令和5年10月)
カミノ
カミノ

ここでは名古屋市のルールで解説していきます。そして細かい例外規定は載せませんので、必ず各発注者のルールを確認してくださいね。

検査項目

建材技術センター公式サイトから引用

検査項目は、だいたいの自治体では、スランプ・圧縮強度・空気量・塩化物総量・単位水量が必須項目になっていて、前3つがいつも実施する検査です。鉄筋コンクリートなら塩化物総量もします。打設量が多ければ単位水量もします。

他にも、コンクリート標準示方書では生コンの状態(目視確認)、生コンの温度、アルカリシリカ反応対策、配合(計量値)も確認したほうがいいとされているのでサラっと紹介だけしておきます。目視確認と温度は実際は必須ですね。

ではひとつずつ見ていきましょう。

スランプ試験(JIS A 1101)

スランプとは、生コンのコンシステンシー=軟らかさ=施工しやすさを示す指標です。

高さ30cmのスランプコーンを引き上げたときの生コンの下がり(cm)で表します。軟らかいと生コンが潰れて下がりが増えるわけです。荷卸し時に1回検査します。規格値は下の表のとおり。

スランプ規格許容差
スランプ8㎝以上18㎝未満許容差±2.5㎝
スランプ5㎝以上8㎝以下許容差±1.5㎝
スランプ2.5㎝許容差±1.0㎝

例えばスランプ12なら9.5~14.5cmのなかに入っていれば合格です。

圧縮強度試験(JIS A 1108)

圧縮強度は一般的には材齢28日の強度をいいます。

4週間後にしか結果が分かりませんが、信頼性は高い試験ですね。

荷卸し時にテストピースを3×2=6個採り、1週間後と4週間後に試験をします。1回の試験結果は3個の供試体の試験値の平均値で、指定した呼び強度の85%以上が合格基準です。3回の試験結果の平均値は、指定した呼び強度以上であることが合格基準です。

日当たり打設量が50㎥未満の場合は、打設量累計が50㎥毎に1回です。それ以上の場合は回数が増えます。

空気量

荷卸し時に1回、生コン中の空気量を計測し、普通コンクリートは4.5±1.5%であればOKです。

JIS A 1116、JIS A 1118、JIS A 1128の3通りの方法がありますが、JIS A 1128の空気室圧力方法が主流だと思います。密閉できる専用容器に生コンを詰めた後、密閉・加圧し、蓋上のエアメーターから空気量を読み取ります。

塩化物総量

1工種あたりのコンクリート総使用量が50㎥毎に1回測定し、0.3㎏/㎥以下であればOKです。

カンタブと呼ばれる塩分量測定計を生コンに差込んで測ります。カンタブは塩素イオンが存在すると茶褐色の試薬が白色に変化することを利用しているので、白色に変わった部分の数値(イオン濃度)を読み取り、換算計算式を使って塩化物含有量を求めます。カンタブを貼り付ける記録紙にそのあたりのことは書いてあると思います。3本測定して平均値が0.3㎏/㎥以下であればOKです

カンタブのカタログより引用(太平洋マテリアル株式会社)

無筋構造物の場合は省略できます。塩化物がコンクリート中の鉄筋を錆びやすくすることから、その総量を規制するために調べるものだからです。発注者は間違えて指示しないようにしましょう。

単位水量

単位水量は、打設量が100㎥/日以上の場合、午前1回、午後1回の1日2回測定します。

市役所の工事ではそんなに多く打設することはあまりないので試験する機会はほぼありません。

単位水量は他の必須項目とちょっと違っていて、平成15年の国交省通知によって検査項目に加えられました。JISで規定された方法はなく、エアメータ法などの計測方法がありますが、誤差を含んだ推定値であることに注意してください。いろいろと計測条件によって結果が変わるあやしい試験なので、あまりに水が多いときだけNGの対応となっています。規格値と対応は次のとおり。

単位水量対応
配合設計±15kg/m3以内そのまま打設していい
配合設計±20kg/m3以内そのまま施工していいが、受注者は水量変動の原因を調査し、生コン製造者に改善の指示をしなければならない。その後、±15kg/m3以内に2回連続でなるまで、運搬車の3台毎に1回、単位水量の測定を行う。
配合設計±20kg/m3を超える持ち帰らせる

生コンの状態

ここからは発注者の品質管理基準には載っていないけど、示方書に載ってる項目を説明していきます。

まずは目視確認。荷卸し時にコンクリート主任技士・技士、それと同等の技術をもった人によって目視で生コンの状態を確認することとなっています。打設後ではなく打設前の生コンを見るだけで、ワーカビリティや性状が良いかどうかを見極めてください( ゚Д゚)

生コンの温度(JIS A 1156)

規格値があるわけではないので品質管理項目にはないけど、温度測定は必須です。なぜなら、35度を超えるときは暑中コンクリートとして特別な対策が必要だから。また、外気温が4度以下になる予想のときは寒中コンクリートとして施工しなければならない。いずれにしても、生コンの温度は把握しておく必要がありますよね。

温度は20度くらいが適切です。

正しいやり方は、JISで規定されているように内径(1辺)が14㎝以上で2L以上の容量をもつ容器にコンクリートを採取し、デジタル温度計などで測定します。

アルカリシリカ反応対策

これは現場試験ではありません。書類上でアルカリシリカ反応の抑制対策がされているかを確認します。

例えば名古屋市では標準仕様書で、「アルカリ骨材反応抑制対策について」(国土交通大臣官房技術審議官通達、平成14年7月31日)及び「「アルカリ骨材反応抑制対策について」の運用について」(国土交通省大臣官房技術調査課長通達、平成14年7月31日)を遵守し、アルカリシリカ反応抑制対策の適合を確認した資料を監督員に提出しなければならない。とされています。

この国の実施要領では3つの方法があり、どれか1つでも確認できればOKです。

対策説明
コンクリート中のアルカリ総量の抑制コンクリート1m3に含まれるアルカリ総量をNa2O換算で3.0kg以下にする。
抑制効果のある混合セメント等の使用高炉セメント[B種またはC種]あるいはフライアッシュセメント[B種またはC種]、もしくは混和材をポルトランドセメントに混入した結合材でアルカリ骨材反応抑制効果の確認されたものを使用する。
安全と認められる骨材の使用骨材のアルカリシリカ反応性試験(化学法またはモルタルバー法)の結果で無害と確認された骨材を使用する。

土木工事では高炉セメントB種を使うのでクリアできてますね。高炉セメント以外を使う場合はアルカリ総量抑制しているか試験成績表から計算して求めます。

配合(計量値)

強度試験は28日後に結果が出るので、現場では生コンが正しく配合されているかを確認するしかありません。

納入書を見て、配合計画書と一致しているかを確認します。今はコンピューターで配合管理して納入書に計量印字されますので正確でわかりやすくなりました。

納入書には、コンクリートの種類、呼び強度、スランプ、粗骨材の最大寸法、セメントの種類、運搬時間、納品量、配合表などが書かれています。とくに硬化後の品質を大きく左右する「水セメント比」はしっかりチェックしましょう。

受入検査でNGだったら…

購入した生コンの品質管理は運搬・荷卸しまでは生産者の責任です。荷卸しした後は施工者の責任になります。ですから、荷卸し時の受入検査は施工者が責任をもって行い、注文した仕様と一致しているかチェックしなければなりません。

もし検査でNGの場合は、持ち帰ってもらいます。そのまま打設してはいけません。

おわりに

コンクリート構造物は50年くらい使うことを想定しています。長持ちすれば100年以上使われることもあるでしょう。その耐久性は設計どおりの仕様で生コンが打設されるかどうかに左右されます。その意味で受入検査は極めて重要です。

しかし、残念ながら数値を誤魔化したり、検査頻度を減らしたりする不正も行われているようです😢
施工の神様 | コンクリート打設時、生コン屋は受入検査をゴマかしている!?
コンクリートの単位水量試験・スランプ試験の虚偽報告に関する調査結果、再発防止対策及び役員報酬の減額についてのお知らせ(株式会社熊谷組)
これらを見抜くためにも概要をきちんと知っておくことが必要です。

業務の参考になりましたら幸いです。

ではまた。

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