ベンガラってなに?

土木の材料

ベンガラとは、土中の酸化第二鉄を主成分とする赤色の無機顔料のことです。


こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

皆さんベンガラ色ってわかりますか?こんな色です↓↓

土木の世界でもたまに使います。

今日はこのベンガラ色について解説します。

スポンサーリンク

ベンガラとは?

ベンガラとは、土中の鉄が酸化した『酸化第二鉄』を主成分とし、古くから使われている赤色の無機顔料のことです。「弁柄」や「紅殻」とも表記します。

天然では赤鉄鉱として産出されていて、インドのベンガル地方で良質なものがとれたことから日本ではベンガラと呼ばれています。

煉瓦の色とも似ていますが、煉瓦は粘土や頁岩・泥を窯で焼き上げたもので、まったく別ものです。

カミノ
カミノ

「顔料」とは、着色に用いる粉末で水や油に溶けないものです。
水や油に溶けるものは「染料」といいます。

ベンガラの特徴

鮮やかな赤色ではなく、少し茶色っぽい落ち着きある色合いが特徴です。赤褐色とか赤銅色とか呼び方は様々ですね。

ベンガラは空気中で最も安定的な酸化状態なので、化学変化が起こりにくく、耐熱性・耐水性・耐光性・耐酸性・耐アルカリ性のいずれにも優れています。経年変化に強く、日光による褪色がほとんどありません。すごいですよね。

後述しますが、古墳時代の絵画であっても、何年経っても大きな色合いの変化がなく、当時の面影をしっかり残してくれています。

石油などから作られる有機顔料(絵具)を使って描かれた赤色は、化学的には不安定で、時間が経つと劣化していきます。500年前の絵具で描かれた「モナリザ」の頬と唇の赤色は現在色褪せてしまっていますよね。

また、着色力が大きく、安価な上、人体にも無害で安全なため広く使用されています。

カミノ
カミノ

ベンガラは防虫、防腐、防錆効果もあります。

ベンガラの歴史

ベンガラは人類が最初に使った赤色の無機顔料だと言われています。

古代色のひとつですね。今も使われていますけど。

古くは、フランス南西部のラスコー洞窟やスペイン北部のアルタミラ洞窟の赤色壁画があります。これらは約17,000年前に描かれました。約17,000年前といえば歴史時代よりも古く、文字が使われる前の「先史時代」のことです。

そんな昔から使われていたんですね。

可愛い絵ヾ(*ˊᗜˋ*)

ラスコー洞窟の壁画 Wikipediaより

日本の縄文時代には、赤色彩色を施された埴輪や土器でベンガラが使われています。例えば、5,500年前の青森県三内丸山遺跡からは赤漆の土器が出土しています。

津軽半島で産出したベンガラを細かくくだいて粉末にして熱したあと、漆にまぜて赤漆にしていたそうです。ベンガラ塗りの櫛も有名です。

三内丸山遺跡の朱塗土器

古墳時代には、たくさんの装飾古墳でベンガラの赤い壁画が見られます。

奈良県の高松塚古墳では、石室の内壁面に厚さ数ミリの漆喰を塗った上に、人物像、日月、四方四神などが極彩色が用いて描かれていて、女人像の赤い上衣はベンガラで、帯の赤は水銀朱で、というふうに2種類の赤色を使い分けて彩色されています。

装飾古墳のベンガラ色は、変色することなく現在まで鮮やかな色を維持しています。
すごいですよね( ゚Д゚)

高松塚古墳壁画 西壁女子群像 Wikipediaより

江戸時代では、インドのベンガル地方から輸入がはじまり、京都の紅柄格子などの建材塗料にベンガラが使われていたりします。

江戸時代後期には、岡山県の吹屋で今まで天然のベンガラ採取にたよっていたものを硫化鉄を原料として人工製造できる技術を編み出して「吹屋弁柄」として広く好まれました。国内唯一の生産地で大量生産されたベンガラは九谷焼、伊万里焼、有田焼などの陶器や漆器の赤絵にも使われていました。

吹屋ふるさと村 TABIZINEより
カミノ
カミノ

吹屋の「赤い」街並みは、国の重要伝統的建物群保存地区に指定されています。今は残念ながら廃れてしまっていますが一度行ってみたいですね~。

現代のベンガラ。どんなところで使われてるの?

現在では高純度ベンガラが化学的に大量生産されています。

近代になってからは、軍艦などの船底塗料として大量に必要になりました。他にも、工業用ベンガラとして、プラスチック、ゴムの着色、塗料・インク・絵具等に使われています。

また、人体に無害であることから天然素材として見直され繊維製品への染色、オーガニック製品にも使用されるようになりました。

ベンガラは「赤褐色」という説明を続けてきましたが、燃焼温度と調合により、黄、黒、緑、紫といった様々な色合いをつくることができます。ベンガラの専門店「古色の美」では23種類の色を作っているそうですよ( ゚Д゚)

23色のベンガラ 古色の美公式サイトより
カミノ
カミノ

赤こんにゃくはベンガラで着色しています。

土木で使われるベンガラ

土木の分野でも、セメントをはじめとして顔料(塗料)は様々なものに使われていますが、特に一番多いのは舗装です。

ベンガラ舗装という言葉もあるくらいです。

アスファルト合材にベンガラ顔料を混ぜ込むことにより、景観に配慮した舗装や、色に意味を持たせた舗装などに使い、皆さんの暮らしを彩ってくれていますよ。

私の市では、例えば、街路、商店街の舗装、公園の園路、通学路、交差点の注意喚起、バスレーンの舗装、店舗の駐車場などに使われています。

区画線のように表面に塗料を固着させる方法もあるのですが、摩耗して消えてしまったりしますから個人的にはアスファルト合材に混ぜてベンガラ舗装にするほうがいいかなと思います。

ベンガラ舗装 (株)アプローチ公式サイトより

名古屋市の緑政土木局では、積算基準・設計単価・標準仕様書・構造図・各種管理基準のページにたくさんの基準や仕様を載せてくれているんですが、その中に27 ベンガラ入り密粒度アスファルト混合物(13)ベンガラ入り細粒度アスファルト混合物(13)特記仕様書というものがあります。

市役所でベンガラ舗装をする場合は、このような仕様書を参考にされるといいかと思います。

おわりに

ということで、ベンガラという謎の色について解説してみました。

ベンガラは地球上に一番多く存在する「赤色」です。皆さんの街も彩ってくれているのではないでしょうか。

このように当たり前に普及している知らないことを知れることは面白いですね。

私も改めて調べてみたら変な分野にどんどん入っていきそうでした(笑)

では今日はこのあたりで。

またぬん(*’ω’*)ノ

コメント

タイトルとURLをコピーしました