瑕疵(かし)とは?

契約事務

瑕疵とは、法律用語で本来あるべき機能・品質・性能が備わっていないことを言います。


こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

「瑕疵(かし)」って難しい言葉ですよね。もしかしたら読み方さえ知らなかった方もいるのでは?

公物管理や契約事務をおこなう上でまったく知らないでは話にならないので、今日は「瑕疵とは何なのか」「どういうときに使う言葉なのか」を超簡単に解説します٩(ˊᗜˋ*)و

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瑕疵(かし)とは?

瑕疵とは「キズ」のことを指し、法律用語で本来あるべき機能・品質・性能が備わっていないことを言います。ということは、瑕疵は「欠陥」や「不備」と言い換えることもできそうですね。

土木公務員としては「管理瑕疵」「瑕疵担保」という2つの言葉をよく耳にします。

この2つについて、簡単に解説してみます。

管理瑕疵

管理瑕疵もしくは設置瑕疵という言葉で使われるときは、管理している公物に関して事故や不利益が生じたときですね。

設置の瑕疵
設計や材料などに問題があり、設計・建造時点で不備がある瑕疵のこと。

管理の瑕疵
建造物を維持・管理・保管する上で不備がある瑕疵のこと。

例えば、道路に穴ぼこがあってバイクが転倒してしまうおそれがある場合は、道路が通常有すべき安全性を欠いているので、「道路管理に瑕疵がある」という言い方をします。営造物に物としての瑕疵があるわけではなく、あくまで管理という行為の瑕疵を問題としています。もし、バイクが転倒して事故が起きてしまったときは、道路管理者である首長と職員の管理責任が問われます。

厳密に言うと、事故が起きたとき、次の3つの要件を満たせば「管理瑕疵がある」と認められます。

1.危険性が存在すること

2.予見可能性があること

3.回避可能性があること

先ほどの例ですと、

①道路に穴ぼこが存在し危険性がある
②近くに亀裂があり、道路の劣化が進んでいるのが見て取れるような予見可能性がある
③その穴ぼこができる前に未然に補修を行ったりする回避可能性がある

この3つから「道路管理に瑕疵がある」と認められるわけです(´;ω;`)ウッ…

そして瑕疵が認められれば、管理責任が問われる…具体的には、被災者の怪我の治療に掛かった費用とバイクの修理費用を賠償しなければなりません。

国家賠償法 第2条
 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

国家賠償法 第2条

ただし、よく市民の方は勘違いされてますが、瑕疵があったからといって全て管理者が悪いわけでもありません。

「道路管理者としてどの程度管理瑕疵があったのか」を推量し、過失割合を算定します。

森羅万象、すべての物はいつかは壊れます。事故を予見したり未然に事故を防いだりする余裕があったのか、管理員がいつパトロールしたのか、管理の方法は適切だったのかという所がポイントとなるでしょう。

あとは運転者の前方不注視もありますし、運転者が道路にどれだけ慣れていたのか、走行速度、当時の道の明るさ、判例など様々な要素を考慮した上で、過失の割合を決めます。

過失割合の決定には、役所の顧問弁護士や保険会社の弁護士、法務職の職員、管理員である技師などの関係者が意見を出して、前例に倣いつつ決定されます。その後、示談もしくは裁判を行います。

裁判のはなしはこちらの記事をどうぞ。

お分かりの通り、かなりめんどくさい作業なんです。ですから、公物管理者は管理瑕疵が少しでもある状態を嫌いますし、過剰なまでに安全面を重視し、過保護な街ができあがるのです。

カミノ
カミノ

人身事故や物損事故は圧倒的に道路が多いです。河川や公園はほとんどありませんが、河川では水質事故がたまにあります。事故処理については別の機会に詳しく書きますね。

瑕疵担保

瑕疵担保という言葉は、請負契約でよくみられる言葉ですね。

請負契約の場合は、瑕疵担保責任という概念があります。

瑕疵担保責任とは、目的物の引き渡し後に隠れた瑕疵が見つかった場合に請負者が負わなければならない責任のことです。

ただし、2020年4月に施行された改正民法では、改正前民法の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に置き換えられることになりました。この2つは法律的な性質が異なるものですが、私のような土木公務員にとっては同じものと考えていいと思います。

契約不適合責任とは、請負契約によって引き渡した目的物が品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、請負人が負うこととなる責任です。

コチラの方を覚えておきましょう٩(ˊᗜˋ*)و

この民法の大幅な改正により、公共工事契約の約款も改訂されることになり、皆さんの自治体でも令和2年度からは「瑕疵担保」の条項が「契約不適合責任」に変わっているはずです。

工事契約以外の占用工事みたいな許可工事等では、いまだに瑕疵担保という言葉が使われていますし、実際には今後もしばらくは「瑕疵担保」という言葉でやり取りされると思いますよ。

契約工事の瑕疵担保

さて、瑕疵担保、名称が変わった「契約不適合責任」というものが何なのか具体的に見てみましょう。

最近、ゼネコンが適切な施工をしていなかった、いわゆる施工不良が何件も露見し大問題になっていますね。とくに、河川の護岸工事でとんでもない規模の施工不良が発覚しました。

長野県東御市の千曲川の護岸で行われていた災害復旧工事で、施工不良が見つかりました。その数、1万3400カ所余り。請け負った大手ゼネコンは全面的にやり直す方針で、説明会で住民に陳謝しました。 ブロックとブロックの間にできた隙間。本来、コンクリートで埋められているはずなのに空洞が…。 台風19号で崩れた千曲川護岸の復旧工事で、こうした施工不良が1万3400カ所余りも見つかりました。

Yahoo!ニュース 住民「ありえない話」 災害復旧で『施工不良』1万3400カ所余り 工事やり直し 大手ゼネコンが陳謝…

こういったものが、契約不適合責任といわれます。

引き渡した目的物が契約の内容に合ってないんです(# ゚Д゚)

1万3400カ所で施工不良!?ふざけんな!って感じですよね。どんだけ手抜きなんでしょうか。災害復旧工事なので管理体制や検査も甘かったのかもしれません。

発注者は、引き渡された工事目的物が契約不適合であるときは、受注者に対して、目的物の修補又は代替物の引渡しによる履行の追完を請求することができるとされています。さらに代金の減額請求もできます

その責任を有する期間は通常の工事目的物なら1年もしくは2年ですが、設備機器本体等の不適合については引き渡しの際に発注者が検査して直ちに履行追完を請求しなければいけないとされていますので注意が必要です。

さきほどの例のような常軌を逸した故意の施工不良の場合は、公共工事では請求期間は10年とされています。

カミノ
カミノ

詳しくは自治体ごとの契約内容により異なりますので、契約約款をよく読んでくださいね。

契約工事以外の瑕疵担保

契約工事以外の工事。例えば、占用工事。

道路管理者の許可を得て、道路の地下に電気の配管を埋設します!というようなものを占用工事と言います。

この占用工事についても瑕疵担保が存在します。工事が正しく施工されていなければ、工事後の道路で陥没や沈下が起きてしまいますよね。ですから、通常1~2年が瑕疵担保期間と設定されていることが多いかと思います。その間に瑕疵が認められれば、占用者に補修をしてもらいます。

自治体の占用許可規則などを見ると瑕疵担保期間が書かれています。瑕疵担保を明記していない自治体も多くありますが、そのようなナアナアで維持管理している自治体はダメですね。正直ダメです。

また、開発行為についても当然、瑕疵担保が認められています。道路や水路、公園を造成して自治体に所有権と管理を引き渡すのですから、あとから施工不良が判明した場合、補修してもらう責任が存在します。

こちらも占用工事と同様で、自治体によって瑕疵担保期間が違いますし、はっきりと規則や許可条件に明記している自治体もあれば、何も書かれていない自治体もあります。

一品生産のオーダメイドな土木工事において、瑕疵担保とはとても重要なものだと思います。市民が安心して公物を利用できるためには、しっかりと施工者に責任を持たせ、それをルールとして明文化することが大切です。

住宅の瑕疵担保

みなさんが新築マイホームを建てる時に、目にする言葉が住宅の瑕疵担保です。

こちらも先述の瑕疵担保と同様に、建築工事の目的物である住宅について、あとから瑕疵が発見されたときに施工事業者が負う責任のことですね。

住宅の引き渡しから10年間は瑕疵担保責任が義務付けられています。

こちらも今は、契約不適合責任と呼ばれます。でも、住宅瑕疵担保履行法という法律もあったりするので瑕疵担保という言葉も生きてると思いますよ。

ちなみに住宅瑕疵担保履行法は、事業者が倒産した後に瑕疵が見つかった場合でも、買い主に少ない負担で瑕疵の修補が行えるよう、事業者に対して「保険への加入」や「保証金の供託」で資力を確保するよう義務付ける法律です。これにより、肝心の事業者が倒産してしまっていても、保険金や保証金で修理費用をカバーしてくれます。

カミノ
カミノ

マイホームの新築を考える時は、このような瑕疵担保(契約不適合責任)という概念があることを覚えておきましょう。

おわりに

ちょっと法律の話もあったし、難しかったと思いますが、「瑕疵」というものが何なのか分かってもらえたでしょうか。

土木公務員にとって、「管理瑕疵」「瑕疵担保」という言葉は時々耳にするので、しっかり理解しておきましょう。

では今日はこのあたりで。

またぬん(*’ω’*)ノ

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