単価契約とは?

契約事務

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

自治体では「単価契約」と呼ばれる契約を結ぶことがあります。

土木系の部署でも導入する自治体が増えています。ここでは単価契約とはどんなものなのか、発注側の立場から解説したいと思います。

カミノ
カミノ

国統一のルールがないので、かなり自由度の高い契約ですね。

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単価契約とは

単価契約とは、物品や委託の「単価」によって契約を締結する方法です。単契と呼ばれますね。(対義語は総価契約と呼ばれます)

総価契約は、単価×確定数量で求めた総額で契約する方法。これが原則的な契約ですが、数量を確定できないときに使われる例外的な方法が単価契約です。

例えば、コピー用紙のような物品であれば数か月おきにちょこちょこ購入が必要になるけど、1年間の最終的な数量は見込みしか分からないってことはよくありますよね。それにたいして必要となった都度総価契約で見積合わせ&契約していては事務が大変すぎます。そこで、あらかじめ単価(と見込み数量)だけで契約しておき、必要となる都度発注書を切って契約単価×数量で算出した金額を支払うほうがはるかに速く合理的なのです。

物品だけでなく、あらゆる委託・工事で利用されている方法で、反復継続して行うようなものであれば単価契約が選ばれます。

単価契約の形態内容
単価契約(単数)単価を設定する項目が1項目のみテープ反訳業務委託 1時間 〇〇〇〇円
単価契約(複数)単価を設定する項目が複数ある用紙の購入
A4  1箱  〇〇〇〇円
A3  1箱  〇〇〇〇円
単価契約(発注限度額)単価を設定する項目(工種)が複数あり、予定数量が全く想定できない樹木の剪定
混合契約総価契約と単価契約が混在する印刷及び封入封かん
新宿区のR2監査報告書より
単価契約の種別内容件数割合
物品物品購入、印刷、賃貸借、売却など8%
委託施設管理、保守、測量、労働者派遣など91%
工事道路舗装、造園、電気など1%
新宿区のR2監査報告書より

ちなみに、根拠法令は各自治体の規則です。

(予定価格の決定方法)
第十三条 予定価格は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければならない。ただし、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用等の契約の場合においては、単価についてその予定価格を定めることができる。

東京都契約事務規則

土木の単価契約

土木分野でも導入されています。

反復継続して行う簡易な維持補修工事や、緊急工事で数量を確定できない場合です。

どれくらい導入されているのかTwitterでアンケートをとってみました。

この結果は人口比に近くなるんで、単契がない自治体も結構あるでしょうね。

さて内容ですが、例を見たほうがわかりやすいと思いますので、江戸川区のWebサイトを見てみましょう↓
「契約書(PDF形式)」に単価表が載っています。

維持工事等年間単価契約について 江戸川区ホームページ (city.edogawa.tokyo.jp)

このページには、土木維持、建築、電気設備、道路照明設備、給排水設備、空調設備、塗装、樹木等維持、消防設備の工事について単価契約があることがわかりますね。

土木維持工事の契約書(PDF形式)を見ると、「土工 掘削積込工バックホウ0.1㎥ 7,510円/㎥」などの単価が2034個ずらずらーっと載っています。これが単価表です。

それにしても2034個は多すぎですね…(;´・ω・)どんな現場にも対応できるように工種を網羅しようとすればするほど単価数は増えてしまいます。自治体によっては「普通作業員1人」などの常用単価を用意してることもあります。

契約の仕方

単価契約はかなり自由度が高いので、自治体で契約締結の方法などが全然ちがいます。とりあえず、私が把握してる限りで標準的なことを説明しようかなと思います。

単価契約は「反復継続して行う業務をラクにしたい」という目的から基本的に維持系の工事によく使われています。大体の場合は、2~5月に契約して、年間の請負契約(業務委託契約)を行うわけです。

通常の総価契約では図面と仕様書を作成して求められた数量から積算しますが、単価契約の場合は工事の図面はありません。つまり、図面から拾える数量がないので、全体の予定価格が出せません。

しかし、当然予定価格がなければ入札をできないし、そもそも予算措置ができませんよね。まあ予算措置については例年の執行額を要求すれば事足りると思いますが。

ということで、予定価格の出し方です。まず、各工種を積算して単価表をつくります。100工種あるなら100工種分の単価を諸経費まで計算し、単価が求められたら、各工種で想定されている年間の予定数量を掛けて金額を算出します。これが予定の総額となります。

入札に関しては主に3つのパターンがあると思います。たぶん。

①代表の設計単価を予定価格として入札する。

②予定総額(=設計単価×予定数量)を予定価格として入札する。

③入札しない。

自治体によってかなり違う所で、皆さんなるべく適正な積算・契約になるように知恵を絞っていますね。①と②は正解不正解はないと思いますが、②のほうが総額で競争できるので実態に合っている気がしますね。落札金額に単価表の構成比率を掛けて契約単価を出したりします。

③については↑のほうで紹介した江戸川区がそうだと思います(たぶん)。仕事を請けたい業者さんに申し込みをしてもらい、複数業者と契約し、順番に仕事を依頼する方法です。まあこの方法が適正なのかは知りませんが理には適っていますね。サイトを見る限りでは用意してある見積書に金額入ってて見積合わせしてる雰囲気ないですけど、さすがに見積合わせしてから随意契約してますよね(?)

契約書を取り交わすときは、一般的に予定数量は記載せず、契約単価だけ(もしくは別添単価表によるという書き方)が記載されます。

発注・支払いの仕方

契約業者が決まったら、あとは「ココに行って○○を修繕してください~!」という発注書を切って、現場をしてもらいます。図面まで用意するべきですがそこまでしてるところは少ないかも…逆に業者さんに見積と図面を提出してもらうところもあると思います。緊急的な現場も多いので発注書を切ることすら後付けだったりします(;´・ω・)すみませんね。

そして、現場が終わったら報告書や出来形図をあげてもらい、その金額で精算します。支払いは月毎ですね。

予定数量(総額)はあくまで予定なので、最終数量(総額)と差異があってもいいはずですが、オーバーするのは業者に予定より多くの金額を支払うことになり(癒着的な意味で)あまりよろしくないとされています。発注限度額を設定する自治体もあり、発注限度額に達すると契約は終了となります。(発注はそれ以降できないので、各社ばらけないようになるべく2~3月頃になるように最初から調整します)

単価契約のメリット

さて、単価契約のメリットですが、最初に書いたように次の2つです。

・事務がラクになる

・現場着手が早くなる

とくに土木工事であれば図面を作って積算するという作業がなくなるのが大きい。変更契約もいらないし。

昔は昔で、今ほどの厳格なルール運用ではなくて単契と同じように出来高を後から精算ってのも多かったと思いますが、それを適正な形にしたのが単契ですね。

カミノ
カミノ

単契のおかげで、緊急の現場でも早く作業に入ることができます。

単価契約のデメリット・課題

そんな事務作業をラクにしてくれる単価契約ですが、じつはデメリットや問題点も多くあります。

・業者さんが簡易的な出来形図や数量をイチから作らなきゃいけない。

・職員が図面を作らないし、現場を業者任せにしてしまい、技術力が低下する。

・単契用の積算基準がない(採用している歩掛と諸経費率がよろしくない)

・常用単価を用いると、作業が遅いほどお金を稼げてしまう。

・嫌な現場を業者が断ることが出来てしまう。(現場内容は契約後に示されるので)

あげだすとキリがないほど沢山あります…。でも、1個ずつ解決していける課題だと思うので、少しずつ減らしていきたいですね。

私の感覚的には、積算については小規模な現場ばかりなので基準書の歩掛は不当に安い、でも単契はスケールメリットもある。常用単価や見積単価は高い(業者はおいしい)。そこのところでバランスは取れてるんじゃないかなと思います。積算や契約方法もそうなんですけどあとは現場の割り振りとかで飴と鞭じゃないですけど調整すればいいと思います。そんなメタ的というかロジ的なことに頭を悩ませることが多いですね、単契は。

たまに制度設計にうるさい(頭の固い)職員がいるんですけど、このように現場レベルでいくらでも調整がきくのであまり制度を詳細化していくと事務作業が増えてしまい本末転倒な気がします。

これからの時代は無駄を削る!削る!

職員の技術力低下に関しては、なるべく手書きでいいので図を描く!てのが大事かなと思います。平面図・側面図・構造図・施工図とか決まりきった2Dじゃなくてもいいので、ちゃんと絵に描いて工事内容を説明できるように。

カミノ
カミノ

もう自治体は単契無しではいられない体質になっちゃってるんですよ…。

皆さんも単契で感じてる課題あったら教えてください。では今日はこのあたりで。

またぬん。

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