契約とは、「個人同士の約束」のことで、当事者間に法律関係(権利義務の関係)を生じさせるものを言います。
こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
今日は契約とは何か?自治体の契約事務について解説いたします。
契約とは?
契約とは、「個人同士の約束」のことで、当事者間に法律関係(権利義務の関係)を生じさせるものを言います。
人が生活する集団社会は「約束(合意)」によって成り立ってきました。「約束」によって権利と義務が発生し、仕事が行えるからです。
もし、約束を破ってもいい社会だとしたら、人間関係は破綻し、何も有意義なことが行えなくなってしまいますよね。そのため、約束(合意)はもっとも尊重されなければならないものとされています。
社会に出たばかりの新人さんは、世の中が、予想以上に契約をもとに運営されていることに驚いたのではないでしょうか? もしかしたら、入社や入庁する前に“契約書”を見たことがなかったかもしれません。
契約は、申し込みの意思表示と、承諾の意思表示が合致したときに成立します。
例えば、売買契約のときは、売り手の「売ります」と買い手の「買います」という口約束だけで契約が成立します。皆さんが普通にしてる買い物も“契約”の一種なんですよね。
本来、このように契約は口約束だけで成立可能なものです。
なんで契約書を作るの?
では、なぜ契約書を作るのでしょうか?
契約書は、契約成立の事実とお互いの権利義務を証明できるようにしておくために作られます。
契約の守るべき約束事項はたくさんあったりしますよね。すべて明確にしておき、書いてあることはしなきゃいけないし、書いてないことは相手に要求できません。
いったん契約が成立すると、その内容に基づいて当事者は義務を果たさなければなりません。
契約内容を証明できるようにしておくことで、「言った・言ってない」という紛争を防げますし、裁判になったときの証拠としても使えます。契約内容を履行しないなどの違反に対しては、損害賠償が課されることもありますから注意しましょう。
このような理由で、お互いに必要だと認める場合は契約書を作るのです。

契約書の内容は、「書いてなくても、みんなやってることだからやってくれるだろう」や「前回と同じコピペでいいだろう」はダメですよ。
自治体では原則、契約書を作成する

今までの話は、民法の原則でしたが、税金などを使って事業を行う自治体では、健全な財政運営を図るため、より厳正に契約締結を行わなければなりません。
ということで、自治体では原則、契約書を作成することになっています。
さらに、地方自治法では、当事者が記名押印をしない限り、契約が確定しないものとされています。落札業者が決まっても口約束だけではまだ何も効力は発揮されません。
(契約の締結)
地方自治法
第234条
5 普通地方公共団体が契約につき契約書又は契約内容を記録した電磁的記録を作成する場合においては、当該普通地方公共団体の長又はその委任を受けた者が契約の相手方とともに、契約書に記名押印し・・・なければ、当該契約は、確定しないものとする。
自治体の契約は、誰と誰が契約するの?
契約は、個人同士の約束である、と説明しましたが、それでは、自治体という組織では誰が契約するのでしょうか。
契約締結するのは「法人」としての自治体ですが、代表者として、首長の名前で契約締結をします。たとえ専決で課長が決裁をしていたとしても、予算の執行や所有権の取得・処分などの契約については、権限を持つ首長が対外的に契約することになっています。(地方自治法第149条第2号、第6号)
相手側は、企業であれば、「法人」としての企業の代表者である代表取締役などが契約締結をおこないます。

この例外として、地方公営企業があります。地方公営企業においては、首長ではなく企業管理者が代表することになっています。(地方公営企業法第9条)
例えば、水道局なら水道事業管理者(水道局長)が契約締結をおこなうわけですね。

市長が契約をしても、権利・義務は「法人」としての市に発生します。当然ながら、市長に支払いの義務が発生することはありませんので安心してください。
契約事務をやってくれる契約課様
大きい自治体になれば、契約件数はとんでもない数になります。それぞれの部署で公告・入札・契約するのは非効率ですよね。
そこで、効率化のために、件数の多い同種類の契約については、契約課がとりまとめて実施してくれます。
契約課は、各課からの依頼を受けて契約手続きなどを行うほか、入札などに参加する事業者の資格審査・受付などを行っています。
契約課が受け付けてくれる案件は、例えば、物品の購入・修繕・売り払い、複写機の賃貸借、庁舎の清掃、保守点検などがありますね。そして、もちろん、建設工事の請負も。
ですから、私たち土木技師は設計図書まで作成してから、契約課へ契約依頼をするだけでいいのです。
契約課さまには、宝塚の先輩への挨拶並みに丁寧に対応しましょう。

契約課さま、ありがとうございます٩(ˊᗜˋ*)و
少額の工事などは、各部署で契約執行したりするかもしれません。市役所の内部ルールで決まっています。
入札・契約制度の種類
入札制度の種類についても、かんたんに説明しておきます。
地方自治法第234条第1項に、自治体の契約の仕方が4種類定められています。
1.一般競争入札
2.指名競争入札
3.随意契約
4.せり売り

せり売りとはオークションのことで、めったに実施されません。
自治体では、その財源が税金によって賄われるものであるため、できるだけ良いもの、安いものを調達しなければなりませんよね。
そのため、自治体が発注を行う場合には、不特定多数の参加者を募る「一般競争入札」が原則とされています。
しかし、公正性が高い一般競争入札のデメリットとして、手続きがめんどくさくて時間が掛かることが挙げられます。また、不良業者が参加し、公正な競争を妨害する可能性も少なからずあります。
このようなデメリットがあるため、自治法施行令で定める一定の場合に限り、指名競争入札または随意契約が認められています。
実務上は、指名競争入札も随意契約もたくさん行っています。

工事の場合は、金額が低いときに、指名競争入札や随意契約になったりしますよ。
談合ってあるの?
談合とは、競争入札において、競争するはずの業者同士があらかじめ裏で話し合って、高い金額で落札したり、持ち回りで落札業者を決めることです。
談合によって、公正性がなくなったり、役所は無駄に高いお金を払うこともあります。
談合って実際にあるのでしょうか?どのくらいあるのでしょうか?
よくニュースになって業者や自治体職員から逮捕者が出たりしますよね。調べてみると、残念ながら、談合事件は毎日報道されるくらい頻発しています。
自治体の職員でよくあるのが、非公表であるはずの工事の予定価格や最低制限価格を漏らす事件です。工事価格の情報があれば、入札によって工事を受注しやすくなります。もし業者へ情報を漏らしてしまえば、官製談合防止法違反で逮捕されてしまいます。

「談合 ニュース」で検索すると、逮捕者が実名報道されてますよね。
実際、談合はどこの市町村でもあると思います。数千万、数億の工事受注を1回の入札で決めてしまうんですから、そこで裏工作はあり得る話です。
市役所職員が情報を漏らすメリットはあまり無いので、借金で死にかけてるとか、偉い人に強い圧力をかけられたとかでもない限り、市役所職員が絡む談合はあまりないかなと思います。業者側の談合のような口裏合わせはあると思いますね。
業者さんたちにもテリトリーみたいなものがあるし、協会が業者をローテーションさせてるみたいな噂も聞きます。特殊な業務委託などでは、そもそも業者が限られていますし、発注本数も限られていますから、「ハイ、今年度は受注ゼロでした」では生活できません。仕事と生活を守るために、他社を排除したりする地場業者はいると思います。
まあ、裏の話ですから市役所職員の私には詳しく分からない世界です…。
おわりに
「自治体の契約」についての概要をお話ししました。
契約は、自治体職員であれば、ずっとお付き合いする仕事ですので、自治体の条例・規則・実務マニュアルなどを読んでよく理解しておきましょう。
契約課が全部やってくれるからといって、そっちにすべてお任せしていたらとんでもないミスを見逃すかもしれませんよ。

もしかしたら土木技師が公告・入札事務までするかもしれません。入札執行のときに入札価格の読み上げやチェックをおこなったりします。ミスしないように気を付けましょう。
では、今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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