こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
日本には色々な道路があり、色々な道路管理者がいます。
ここでは道路の種類と、それぞれ誰が管理しているのかを解説します。
職員は道路管理“員”となりますが、会話のなかでは職員(部署)も「道路管理者」と呼ばれます。この記事でも道路管理者=管理している人たちという意味合いで使います。
道路の種類
私なりに種類を分けてみたところ、このような表になりました。
種別 | 道路管理者 | |
---|---|---|
高速自動車国道 | 国交省・NEXCO・ 高速道路機構 | |
一般国道 | 直轄国道(1,2桁) | 国交省・NEXCO |
補助国道(3桁) | 都府県(政令市) | |
都道府県道 | 都道府県(政令市) | |
自動車専用道路・有料道路 | 地方公社・株式会社 | |
市町村 | ||
市町村道 | ||
自動車専用道路・有料道路 | 地方公社・株式会社 | |
里道(法定外公共物) | 市町村・地元 | |
農道 | 自治体・土地改良区・地元 | |
林道 | 国有林林道 | 林野庁 |
民有林林道 | 自治体・森林組合 | |
私道 | 各所有者 | |
その他の道路 | 各管理者 |
表でいうと市町村道までは道路法上の道路(公道)です。それ以外はいわゆる法定外の道路となります。しかし、それら法定外の道路も世の中にはたくさんあるし、公共的に使われています。
あくまで一般論で、表とそぐわない例外もあると思いますので参考までに。
では、市役所職員の目線から各道路を解説していきましょう。
高速自動車国道
いわゆる高速道路です。
日本の国土を形作る背骨ともいえる「高規格幹線道路」のうちの一つ。
高速自動車国道法で規定される道路。私が全然詳しくない分野です(笑)
(例)東名高速道路、中央自動車道、名神高速道路、山陽自動車道
↑のように緑色の標識でE○○とかC○○などのナンバリングがされています。
名前の通り国道なのですが、国交省から委任されて東日本・中日本・西日本の各高速道路会社(NEXCO3社)と高速道路機構(正式名称は日本高速道路保有・債務返済機構)が管理しています。昔は日本道路公団という特殊法人でしたが、民営化が流行っていたときに解体されて利権をまるごとNEXCO3社に引き継がれることになりました。まあだいぶ端折りましたがそんな感じです。
高速道路っぽいのに高速自動車国道ではないものは、一般国道や都道府県道や市道です。また、道路運送法に基づく自動車道の可能性もあります。(後述します)
市役所が高速自動車国道に関係する事業をもつことは少ないのですが、例を挙げれば、高速に架かる跨道橋(市道)の点検・修繕ですかね。他にはインターチェンジ本体・周りの整備も稀にあります。これらの事業は管理者であるNEXCOと協議することになります。交通規制や周知の方法も普通の道路とは違いますから注意が必要ですね( ゚Д゚)
一般国道
一般国道は、高速自動車国道以外の国道です。
1,2桁の国道は直轄国道(指定区間)と呼ばれ、国交省の管理です。有料道路はNEXCO管理のところもあります。
3桁の国道は補助国道(指定区間外)と呼ばれ、都府県と政令市の管理となります。たまに3桁でも直轄国道があります。
(例)国道1号は直轄国道で国交省地方整備局の各国道事務所が管理、
国道134号は補助国道で神奈川県の各土木事務所が管理
そういえば、たまに「一般国道」の対義語を「直轄国道」もしくは「補助国道」と勘違いしている人がいるんですけど、「一般国道」の対義語を敢えて言うならば「高速自動車国道」ですよね。法令を読みましょう。
県が管理するのでもはや県道みたいなものですね。
自動車専用道路・有料道路
先に出しちゃいますが、都道府県道や市町村道の特殊な例としては、自動車専用道路などの有料道路があります。有料道路は県や市が出資して設立された地方道路公社が管理しています。
他にも、首都高速道路と阪神高速道路などは民営化されていて株式会社が管理していますね。
(例)湾岸道路(正式名称は神奈川県道・東京都道・千葉県道294号高速湾岸線)
福岡都市高速道路
都道府県道
都道府県道は都道府県が管理します。そりゃそうだ。あまり言うことないですね。
一般国道と同様に、政令市は県の権限を譲渡されているので、政令市内の区間は政令市の管理になります。政令市でなくても、市町村と協定を組んだりして一部区間は市町村の管理になることがあるようです。道路法第17条(管理の特例)
1,2桁の都道府県道は「主要地方道」とされている自治体が多いと思います。3桁は一般都道府県道です(例外もありますが)。ぶっちゃけ主要地方道であることのメリットはよくわかりませんが、国からの補助がつきやすいとかあるらしいけど、でも一般県道でも普通に補助もらってるみたいだし…。とりあえず小さい番号=昔に整備された道なので、主要地方道は複数の市町村を繋げるくらい広範なんだなーっていう認識でいいんじゃないでしょうか。
(例)東京都道2号東京丸子横浜線、神奈川県道2号東京丸子横浜線
北海道は道道です。
市町村道
きました!市町村道です。
市町村道は市町村が管理します。
大きな幹線道路もありますし、いわゆる生活道路と呼ばれる細い毛細血管のように都市を形作ってる道路も市町村道です。新設改良・維持管理、すべて市町村が行います。
市道=市役所管理って当たり前ですよね。
問題は、そもそも道が市道なのかどうかが分からないってことだと思います。今は行政地図情報公開システム(公開GIS)などがあってインターネット上で認定路線図や道路台帳を確認できる時代になりました。先進自治体だけでなく全国の自治体で使えるようになってほしいですね。
私たち土木公務員が管理する上で、要望のあった道路が認定市道なのかは凄く重要です。なぜなら私道なら何もできませんし、里道や農道であっても自治体が主体的に維持管理しないことがあるからです。
今新しく市道認定を受けるなら市道認定基準ってのがありまして、例えば開発行為で民間企業が道路を作ったとして、その幅員や形状、構造が公共物としての機能と安全性を満たしているか、使いやすいものかをチェックして基準を満たしていれば市道認定できます。多くの自治体で幅員4m以上という基準があると思いますが、3m95cmしかない部分があれば市道認定できません。その場合は後述の「私道」ということになります。
設計施工ミスでこんなこともありえますね……
里道(法定外公共物)
里道は正式には「法定外公共物」といい、道路法の適用を受けない法定外だけど公共の用に供する物です。公図の名残で赤道(あかみち)・赤線(あかせん)とも呼ばれます。
昔は国の財産でしたが(都道府県管理とか)、平成17年頃に市町村へ譲与されました。道や水路としての機能を有している法定外公共物は譲与され、それ以外のものは用途廃止されて国が直接管理する普通財産となっています。…という説明がされますが、実際には道路・水路の形態がないものも市町村に多く譲与されていますね。
維持管理については自治体によって異なりまして、大きめの自治体では、行政が主体的に維持管理をしています。ルールが必要なので、法定外公共物管理条例などをつくり、道路法を準用するかたちで里道を管理しています。
小さめの自治体(町や村)は地域に密着した形で使われていることから地元で管理をお願いしていることがあります。また、自治体から砕石やコンクリートなどの材料だけ支給することもあります。
農道
農道とは、一般的に土地改良法に基づく農業用道路のことです。道路法は適用されません。
農水省の定義によると、土地改良法だけでなく、旧独立行政法人森林総合研究所法や地域再生法に基づいて造成された、農道台帳により管理されている幅員1.8m以上の道路をいうそうです。
所管は農水省ですが、実際の管理は市町村だったり、土地改良区だったり、地元組合だったり…ですね。市町村が管理する場合は、法定外公共物管理条例が適用されて、地元と協力しながら農政部局が整備・維持管理を行います。
農道は大小さまざまで、集落内の生活道路の役割を担い一般交通に開放されていることもありますが、特定の耕作地を結ぶために特定の農家以外立ち入り禁止にしていることもあります。農家だけが使う場合は、農業のためのトラクターやトラックが通れさえすればいいので構造上も簡易的なことが多く、一般車両がバンバン通ってしまうと道路が壊れてしまいます。
↓未舗装の農道。見た目あぜ道とも呼ばれますが、あぜ道=農道というわけではありません。
↓1車線の農道。区画整理された道をよく見かけますね。
↓幹線道路
写真はすべて総務省|農道・林道の維持管理に関する行政評価・監視より引用しました。
ちなみに、「ふるさと農道」とか「農免道路」とかいう名前を聞いたことがあるかもしれませんが、これらは事業(財源)の名前でして、事業中にそう呼んでいたものがそのまま道路の愛称になっています。事業完了後に市道や県道などの公道になっている場合は正しくは農道ではありません。
林道
林道とは、林道規定に基づき造られた道路で、林道台帳により管理されている幅員1.8m以上の道路をいいます。林道には国有林林道と民有林林道の2種類があります。道路法は適用されません。
国有林林道は林野庁が管理します。管理者は出先機関の「森林管理署長」「支署長」「森林管理局」たちですね。
民有林林道は国有林林道以外の林道をいい、自治体や森林組合などが管理します。
平野部の自治体には林道は無かったりしますが、うちみたいな田舎の自治体は少なからず山地や森林がありますから林道もいくつか管理しています。私は詳しくありませんが(;´・ω・)
写真はすべて総務省|農道・林道の維持管理に関する行政評価・監視より引用しました。
林道は道が狭いうえに急勾配や急カーブが多いので、制限速度が20キロに設定されていることが多いですね。気を付けて運転しましょう。
私道
私道には明確な定義がありませんが、だいたいの場合は一般に道路として使われている私有地のことをいいます。市道と分けて「わたくしどう」と呼んでます。
所有者不明私道への対応ガイドラインによると「国や地方公共団体以外の者が所有する、一般の用に供されている通路であって、法令上、国や地方公共団体が管理することとされていないもの」を対象に調査していますから、業務で私道について考える時はこの認識で良いと思います。
私有地なので通常は所有者しか通行できませんが、所有者が誰でも利用できるように開放していることがあります。一方、見た目通れる状態ですが「通るな!」と看板が立ってる私道もありますね( ゚Д゚)
営利目的で整備された立派な私道もあるらしいですが、私のような木っ端役人が関わるのは生活道路の一部になっている私道たちです。
私道はいろいろと問題を含んでいまして、とくに複数の者が所有者のときメンドクサイ。大きく次の2つパターンがあって、
①私道全体を複数の者が所有するパターン(共同所有型)
②私道が複数の筆から成っていて各筆それぞれ所有者が違うパターン
(図は所有者不明私道への対応ガイドラインから引用)
近年は所有者不明な空き地・空き家が問題になってますが、私道も所有者不明によりインフラ維持ができない問題が多発しています。というか所有者が分かっていても費用を捻出できないケースも多いですね。市町村が助成金制度を設けていることもあります。
なるべく私道を買わないようにしましょうね…
その他の道路
え~と、メインの道路を色々紹介してきましたが、これ以外にも業務でたまに出会うマイナーな道路もあったりして、よく分からなくて困るんですよね…。てことでざっくり説明していきます。
道路運送法に基づく「自動車道」
高速道路とおなじように料金を徴収する自動車専用道路だったりしますが、正式には公道ではありません。私道だと思います(よく知らん)。例えば、東京高速道路や九十九里有料道路など。
河川管理用通路
河川管理者(国や自治体)が、日常の河川巡視などのために堤防上や河川沿いに設置した通路です。
市道などに認定されている区間もありますが、その場合は管理ルールは河川管理者との兼用工作物管理協定や占用許可によって定められます。しかし、実状としてはこの兼用工作物管理協定や占用許可がない状態の兼用道路もたくさんあります…。ルールが無いので改築工事や事故発生時には問題が生じてしまいますね。
道路認定されていない区間は、河川管理者の車が通るだけを想定しているので簡易的な舗装や未舗装だったりします。一般車両は通行してはいけません。もし車止めなどが無くて通り抜けできるようになっているなら通行禁止ではないかもしれませんが、なるべく通行しないようにしましょう。
臨港道路
港湾道路とも呼ばれます。
港湾区域や臨港地区内にある港湾のための道路です。港湾法の第2条第5項第4号「臨港交通施設」にあたります。一般車は進入禁止になっています。道路管理者は国(国交省港湾局)または自治体です。
(例)横浜港臨港幹線道路 – 瑞穂大橋、コットン大橋、みなとみらい橋、みなとみらいトンネル(国際大通り地下部分)
漁港道路
港湾と似ていますが、漁港は法律が違います。漁港漁場整備法第3条の漁港施設にあたる道路です。
私が知る限りでは、自治体の漁港事務所が管理しています。
団地や学校の道路
公園内の園路みたいなものは管理境界を見分けやすいと思いますが、見た目まったく公道と変わらない非公道があります。
例えば、公営団地や公立学校が建物周辺の道路を所有してることがあります。見た目は普通の道路ですが、じつは公道ではありません。管理は教育委員会や営繕建築部署が行っています。
おわりに
ということで道路の種類を解説してみました。
成り立ちや目的によっていろいろな道路があることがわかったかと思います。普段使っている道路についてその区分を調べてみると意外なことが分かって面白いかもしれませんね。
建築基準法で扱われる「位置指定道路」や「2項道路」についてはまた違う概念ですので別記事で解説します。
この記事を読んで何か新しい気付きがあれば嬉しいです。
河川管理者についてはこちら↓の記事で解説しています。
では、今日はこのあたりで。
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