こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
市民の方と話していて、「この人、上水道(水道)と下水道の違いをよくわかってないな」と思うことがよくあります。じつは、学校で土木工学を学んできたはずの土木公務員も、イマイチ違いを分かってなかったりするんです(;´・ω・)
ということで、ここでは土木公務員が知っておくべき「上水道と下水道の違い」について解説いたします。
技術的な話が多いですが、わかりやすく解説しますので事務系の職員さんもよかったら読んでください。
上水道と下水道の違い
上水道と下水道の違いですが、まあ簡単に言えばキレイな飲み水なのか、使い終わった汚い水なのか、ですね。
↑のイメージ図で言うと、川から家庭・工場等までが上水道、家庭・工場等から海までが下水道です。「都市の動脈と静脈」と言えばわかりやすいでしょうか。
※厳密には工場は工業用水道ですが。
都市用水の4つの水施設(上水道・中水道・下水道・工業用水道)はこちらの記事で解説しました↓
上水道は「水道」と呼ばれたり、下水道は「下水」と呼びれることが多いですね
そのなかで、上水道と下水道の違いを具体的に見ていきましょう。
所管の違い
まずは、所管する省庁が違います。
上水道 → 厚生労働省
下水道 → 国土交通省
追記:この情報は令和5年度までのものです。令和6年度から上水道の行政所管が国土交通省と環境省(水質関係)に移りました。
上水道は飲み水であり、人の健康に直接影響を与えるものですので、土木・建設工事にも関わらず厚生労働省が所管することになっています。それだけ、上水道のほうが水質・衛生管理が厳しいということですね。
施工に関してもそれぞれで技術的基準や積算基準などを設けているので注意してください。
水質基準の違い
水質基準の違いとしては、
水道水は、水道法第4条の規定に基づき「水質基準に関する省令」で基準値(51項目)が決められています。また、そのなかでも目標値が定められている項目もあります。水の美味しさにも関わってくるところですね。基準値(51項目)はこちらからどうぞ↓
下水道は、下水道法と都道府県条例などで、工場・事業場から公共下水道へ排出するときの水質基準を設けています。例えば、東京23区ですとこちらの基準になります↓
下水排除基準(東京23区内)|東京都下水道局 (tokyo.lg.jp)
基準を守ってもらえないと、下水管が詰まったり、有毒ガスは発生したり、清掃回数が増えたり、水処理施設の能力が下がったりするのです。
また、環境を汚染しないように、公共下水道または流域下水道からの放流水の水質基準も定められています。下水道法や水質汚濁防止法ですね。環境省の一般排水基準はこちらからどうぞ↓
私は、水質基準は全然詳しくないのですが、運用部署に配属すると必ず勉強することになりますよ。
水処理施設の違い
水処理のタイミングが違います。水道は川・ダムから取水したあとに「浄水場」に送られてキレイにする一方、下水は使い終わった後に「下水処理場」で綺麗にして川・海に放出しています。
つまり、先に綺麗にするのか、後に綺麗にするのかという違いがあります。ですので、浄水場はダムや河川上流の近くにあり、下水処理場は河口付近にあることが多いです。
水処理の仕組みとしては結構似てるところもあるのですが、水道は薬を使ってキレイにしますが、下水は微生物を使ってキレイにするという違いがあります。
水処理施設は設備・電気系の職員が配置されますが、建設や更新事業で土木職が携わることは多いです。
管種の違い
ここからは道路の下に埋設される管路の話です。
まず、使用する管の種類が違います。
水道本管は、新設ではダクタイル鋳鉄管と高密度ポリエチレン管が使われています。ほかにも橋梁添架はステンレス管や鋼管を使ったり、自治体によってはHIVP管などを使っているところもあるかもしれません。ダクタイル鋳鉄管は、鋳鉄管をより強度を高めたもので、新設では耐震継手のGX形とNS形が使われています。
宅内への給水管は、低密度ポリエチレン管や、硬質塩化ビニル管など様々な管種があります。
2022年1月に塗装問題により供給停止し、全国的に工事が止まるという異常事態がおきました( ゚Д゚) 関連記事:水道管塗料問題で何が起きているのか
一方、下水道管は、硬質塩化ビニル管(VP管)とリブ付硬質塩化ビニル管が使われています。地下水があるときはリブ付という使い分けですね。
管の直径が大きくなればコンクリート管(ヒューム管)や強化プラスチック複合管、また、シーンによっては水道と同じようにダクタイル鋳鉄管、ステンレス管、鋼管などが使われています。
材料がたくさんあって訳が分からないですね。
塩ビ管についてはこちらで解説しました↓
圧力の違い
なぜ管の種類が違うかと言うと、水質基準と圧力の有無のせいです。
水道はすべて圧力をかけて送水するため、内部に強い圧力が掛かります。車両荷重からの外圧だけでなく、内圧にも耐えられる材料が必要になるのです。
水道水圧の基準は、水道施設の技術的基準を定める省令で、配水管から給水管に分岐する箇所において0.15Mpa~0.74Mpaと範囲が定められています。
ふつうは配水管の水圧は0.2~0.4Mpaくらいです。
0.1Mpaの水圧は高さ10mに換算できますから、0.2~0.4Mpaは20~40mの高さの配水池から配水している(もしくはポンプで圧送している)ということです。配水管に大きな穴が開けば、20~40mの高さまで噴き上がることになります。それだけの強い圧力が掛かってるんですね。
下水道は原則自然流下なので圧力はほとんど発生しません。ただし、下水道でも橋梁添架などで圧送するときはありますけどね。そんなときはダクタイル鋳鉄管など圧力に耐えられる管が使われています。
内圧があるかどうかの違いは必ず押さえておきましょう。
勾配の必要性
水道は圧送するということは、勾配を気にする必要はありません。上り勾配でも配水できるのです。
下水道は自然流下なので、必ず勾配をつける必要があります。設計段階で測量をおこない、下水道管網を適切に定めて、施工でもシビアに高さ管理をすることになります。
ということで、下水道の設計施工のほうが技術的には難しいといえますね。あくまで私の感覚では。
使用料金の違い
ここからは技術的な話ではなくなりますが、一応土木公務員としては知っておくといいかなと思うところです(*´ω`*)
上水道、公共下水道を使われてる皆様は使用料を払ってますよね。
水道のメーターで使用量を測って、下水道の料金もその水量で計算されます。
自治体によって料金設定は異なりますが、だいたい下水道料金は水道料金の5~9割くらいですね。例えば大阪市は一般家庭で一月30㎥使ったら水道料3,476円、下水道料金2,189円みたいです。
大阪市水道局:水道料金・下水道使用料早見表と計算式 (水道をお使いの皆さまへ>水道料金) (osaka.lg.jp)
水道加入金と受益者負担金
日常の使用料金とはべつに、新しく加入するときは別料金が掛かります。それが水道加入金と下水道の受益者負担金です。
水道加入金は簡単ですね。建物(敷地)に新しく水道を引くときに、給水引き込み工事費用とは別に、水道事業者に加入金を納めるものです。例えば、仙台市の場合は、口径13mmで給水するとき107,800円(税込)が掛かります。なかなかの金額が掛かりますよね~(;´・ω・)このお金は水道の新設や更新工事に当てられます。
水道加入金について – 仙台市水道局 (city.sendai.jp)
一方、下水道の受益者負担金はすこし複雑で、しかもちょっと理不尽なお金です。
受益者負担金とは、公道に下水道が整備されることによって利益を受ける土地の所有者に、建設費の一部として土地の面積に応じて一度限り負担していただくものです。
新しく公共下水道が整備されると生活環境が良くなり、土地の価値が高まります。ですから、下水道に加入するしないに関わらず、区域内の宅地、田、畑等の土地全てを対象として負担してもらうことになります(市街化調整区域内は、宅地のみ)。しかも面積に応じるので大規模店舗などは数百万を負担することもザラにあるんですよ。
こちらも金額設定はピンキリですが、例えば、仙台市では1㎡あたり200円となっています。100㎡の敷地なら2万円ですね。
下水道への接続について|仙台市 (city.sendai.jp)
受益者負担金は、都市部に住んでいる方は聞いたことないかもしれませんが、郊外などで新しく下水道整備するところでは重要事項なので、土木公務員の皆様はぜひ知っておきましょう。
おわりに
ということで、上水道と下水道の違いを、いろんな視点から見てみました。
基礎的なことしか書いていませんが、なんとなく分かりましたか?
土木公務員であれば上下水道局・水道課・下水道課に異動することもありますし、道路や河川畑で上下水道と関わることはすごく多いはずです。ぜひ覚えておきましょう。
では今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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