子どもが安心して遊ぶための遊具の安全基準(開口寸法・安全領域)

公園

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

最近は子どもと公園で遊ぶことが多くなりました。特にうちの子のお気に入りはすべり台です。

皆さんが利用している都市公園にもすべり台やブランコなどの遊具がありますよね。そんな遊具には、子どもたちが安全に遊べるように、安全基準が設けられています。

ここではその中で主な基準である「開口寸法」「安全領域」をご紹介します。

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安全指針と安全基準

国交省の安全確保の指針と、それに準拠するように遊具メーカーの協会である日本公園施設業協会が安全基準を設けています。2024年現在の最新基準は下記のとおり

・国土交通省の「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第3版)」令和6年6月

・日本公園施設業協会の「遊具の安全に関する規準 JPFA-SP-S:2024」2024年4月

ここではこの2つに規定されている安全基準について説明します。

カミノ
カミノ

指針は、都市公園の遊具について公園管理者に対する国の技術的助言に相当するものですが、

安全基準のほうは都市公園の遊具をはじめ、保育所・幼稚園・小学校・児童館・その他の公共の遊び場や広場の遊具が対象となっています

構造に関するもの(開口寸法)

開口寸法は遊具の構造に関する基準です。

子どもの体型は胴体よりも頭部の方が大きいため、胴体は通っても頭部が抜けないという非常に危険な状態に陥ってしまうことがあります。そのような事態を防ぐために、遊具では「①胴体が入らない」または「②胴体と頭部が容易に抜ける」寸法での設計を行う必要があります。おまけでそれ以外の構造に関する基準も一緒に見ていきましょう。

①胴体が入らない構造にする

幼児の胴体サイズを再現した100×157mmのJPFA検査器具Bが入ってはいけません。柵などの隙間は100mm未満とされています。

遊具の安全に関する規準 | 日都産業株式会社より引用

また、ネットの網目などは、幼児の胴体サイズを再現したΦ127mmの器具(JPFA点検器具A)が入らないように設計しなければなりません。

遊具の安全に関する規準 | 日都産業株式会社より引用

②胴体と頭部が容易に抜ける構造にする

児童の頭部サイズを再現したΦ230mmの器具(JPFA点検器具A)が通り抜けられる設計をしなければなりません。その下に障害物などを設けないこと。

遊具の安全に関する規準 | 日都産業株式会社より引用

③頭部または首が挟まらない構造にする

頭部または首が挟まって抜けなくなるような、開口角度が 55°未満の上向きのV字型開口部を設けてはならない。そんな構造めったに見ませんが、事故があったから規定になってるのかな。意識していないとデザインしてしまうかもしれないということですね。

④指の挟み込みを防止する構造にする

指を入れたときに抜けなくなるため、Φ8mm以上25mm未満の隙間や穴は設けてはなりません。また、ヒンジなどの可動部は、高さにかかわらず指先をつぶしたり、切断したりする危険性がないようにします。

国交省の指針より引用

カミノ
カミノ

他にも、衣服がひっからないように突起をなくすとか、不測的に登って落ちないように足がかりをつくらないとか、トンネルなどで救助できるように内部に大人が入れるようにするとか、いろいろと構造に関する安全基準があります。

配置に関するもの(安全領域)

次は配置に関するものを見ていきましょう。

遊具には安全領域という子どもが安全に遊ぶためのスペースが設けられています。

安全領域(セーフティエリア)とは、子どもが落下したり、飛び出したりしたときに到達すると想定される範囲です。安全領域には重大な事故につながりかねない障害物や、石やガラスなどの異物、固い設置面や凹凸のある設置面があってはいけません。

安全領域の標準範囲

安全領域の標準的な範囲は、
落下高さが600mm以下の場合=遊具の外形からあらゆる方向へ1500mm(最小値)
落下高さが600mmを超える場合=遊具の外形からあらゆる方向へ1800mm(最小値)

この範囲は上空も含みます。図で示すと次のとおり。

JPFA-SP-S:2024

公園の風景を思い浮かべてほしいんですけど、公園遊具の1.5mの範囲には、樹木、柵、花壇、縁石などの障害物は無いはずです。それが安全領域です。上記の1500mmと1800mmは標準的なものであり、遊具によっては数値が異なることがあります。例えば、すべり台の降り口方向は2000mmとか。勢いよく滑りますからね。

重複条件

安全領域のなかに障害物が存在してはいけませんが、遊具同士が隣接する場合は安全領域が重複してもいいという重複条件があります。重複条件は遊具の種別ごとに異なります。

子どもの安全確保のための領域なのに、他の遊具(モノ)があったらぶつかって危ないんじゃないの?と思うかもしれませんが、安全領域が重なるだけで、遊具本体はお互いの安全領域外にあります。図で示すと↓のようになります。

左から、スイング式遊具(着座型)と鉄棒と雲梯を配置したときの例です。

遊具の安全に関する規準 | 日都産業株式会社より引用

ちなみに、上図では鉄棒と雲梯がありますが、「ぶら下がる」という機能が似てるので、スペースが限られているなら別の遊具を並べた方が子どもの遊びのためには良いんじゃないかなと個人的には思います。

設置面への配慮

遊具はコンクリートやアスファルトなどの固い設置面に設置してはいけません。安全領域内では、子どもの落下が想定されますし、飛び跳ねたりもするので衝撃を吸収する素材を敷くことが望ましいとされています。

普通は砂や芝ですよね。ウッドチップ、ラバーなどの衝撃吸収材の使用についても検討してください。特に、高い所から飛び降りるとか、チャレンジ性の高い遊びがされるところは十分に検討しましょう。私の地域の公園にはわざとジャンプさせる遊具があるんですが、下にはフワフワのマットが用意されています。維持管理どうしてるんやろと思うんですが(数年おきに交換するんでしょうかね)そのマットのおかげで足から着地すれば怪我しませんね。

なお、標準的な落下高さの最大値は、

幼児用では 2000mm
児童用では 3000mm

となっています。

おわりに

ということで、遊具の安全基準について、特に開口寸法と安全領域をご紹介しました。これで公園に遊びに行ったときに見方が変わると思います。ぜひ遊具をチェックしてみてください。

今回は構造と配置についてだけ紹介しましたが、もちろん遊具の製造・施工・維持管理(安全点検)など各工程で安全基準が定められています。国交省の指針を読むだけでも概要が分かると思いますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

公園行政について気になったトピックの記事を書いていきたいと思います。

では、今日はこのあたりで。

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