こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
契約にまつわる2つの保証金をご存知でしょうか?
ここでは「契約保証金」についてサクッと解説します。
入札保証金についてはコチラ↓の記事からどうぞ。
(一般的なことを書きますが、自治体の規定によって異なることがあります。)
契約保証金とは
自治体と契約するときは「契約保証金」を納めなければなりません。
契約保証金とは、ちゃんと契約を履行させるために契約締結の前に金額の一部を発注者が預かる制度です。もし万が一、契約が不履行になってしまった場合は、保証金はそのまま没収となり自治体の損害に補填されます。業者はお金を取られてるので履行途中で「やっぱやーめた」はできないわけです。
納めてもらった契約保証金は契約履行が完了されれば業者に返還されます。
(契約保証金)
自治法施行令第167条の16第1項
第167条の16第1項
普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体と契約を締結する者をして当該普通地方公共団体の規則で定める率又は額の契約保証金を納めさせなければならない。
契約保証金の金額
契約保証金の金額は国の会計法にならって契約額の10%以上とされてることが多いのかなと思います。
入札保証金は3%とか5%以上が多いですよね。契約保証金が2倍になってるのはそれだけ事業が進んだことで自治体側の損害がでかくなるし、抑止力としては多めに積んでおかなきゃいけないってことでしょうね。
契約保証の種類
発注者からすれば契約履行を保証するものであればいいので、現金じゃなくても大丈夫です。
おおまかに五種類ありまして、契約約款に記載がありますので国交省の公共工事標準請負契約約款を見てみましょう。これは「金銭的な保証」を発注者が求めているときの記載です。
(契約の保証)
公共工事標準請負契約約款(国土交通省)
第四条(A) 受注者は、この契約の締結と同時に、次の各号のいずれかに掲げる保証を付さなければならない。ただし、第五号の場合においては、履行保証保険契約の締結後、直ちにその保険証券を発注者に寄託しなければならない。
一 契約保証金の納付
二 契約保証金に代わる担保となる有価証券等の提供
三 この契約による債務の不履行により生ずる損害金の支払いを保証する銀行又は発注者が確実と認める金融機関等の保証
四 この契約による債務の履行を保証する公共工事履行保証証券による保証
五 この契約による債務の不履行により生ずる損害をてん補する履行保証保険契約の締結
分かりやすく書くと、次の5つです。
現金納付…
契約保証金と呼んでいるものです。
有価証券など…
国債、地方債など。
金融機関または保証事業会社の保証…
銀行などの保証ですね。保証事業会社って何だ?は後述します。
履行保証保険…
保険会社と契約するものです。定額填補となります。
公共工事履行保証証券による保証…
履行ボンドと呼ばれるもの。こちらも後述します。
現金納付はなかなか珍しい。私も数々の案件を見てきましたが数えるほどしか見てないかな。
大体いつもうしろの3つのどれかですね。
契約保証金を減免できる場合
さて、契約不履行なんて滅多に起きるもんでもないのに毎回納めてもらうのは面倒ですよね。ってことで減免できる場合が自治体規則に定められています。
でも先に契約約款の記載を見てみましょう。第4条第5項ではこのように書かれています。
(契約の保証)
公共工事標準請負契約約款(国土交通省)
第四条
5 第一項の規定により、受注者が同項第二号又は第三号に掲げる保証を付したときは、当該保証は契約保証金に代わる担保の提供として行われたものとし、同項第四号又は第五号に掲げる保証を付したときは、契約保証金の納付を免除する。
第4条第1項にさきほどの5種類の契約保証が書かれていましたが、そのうち2号と3号は「代わる担保」という扱いで、4号と5号は「免除」とのことです。つまり、履行ボンドと保証保険契約は免除扱いってことですね。
では、これらも含めて、自治体によくある減免規定を見てみましょう。
①保険会社との間に自治体を被保険者とする履行保証保険契約を締結した場合(保証保険)
②公共工事履行保証証券による保証がある場合(履行ボンド)
③官公庁が発注する種類を同じくする契約を、過去〇年間に〇回以上誠実に履行を完了した実績を有する場合(履行実績)
④契約金額が○○万円未満である場合
①、②は割愛。
③について、入札保証の記事でも書きましたが、履行実績証明を示せれば保証金は免除できます。このように規定している自治体があります。規則を見てみてください。ただし、皆さん公共工事の場合はこのルールを採用せずに別の証券や証書をわざわざ用意されています。そもそも周知されてない気がします……?私が知らないだけで公共工事は適用除外なのでしょうか。受注者側にも保証を用意しておくメリットがあることは分かるのですが…。
④について、例えば、150万円未満とか250万円未満は保証金免除できると規定されています。1号随契の金額とリンクしてたりしますね。金額が少なければ損害も少ないので、まあ事務量削減ってことで。
代表的なものだけを書いてますので、他にも自治体によって「契約を履行しないこととなるおそれがないと認められる」いろいろな免除規定がありますよ。
銀行や保証事業会社の証書は「免除扱い」にはなりませんので注意して!
代わる担保が提出されただけですから、契約書の保証金欄は10%の金額を記載しなければいけません。
履行ボンド
種類が多くてメンドクサイですよね。でもそれぞれ方式が違うものが制度化されてしまっているので対応するしかないですね。
私たち発注者は提出された証券を確認しますが、保険会社が発行する保証保険の証券も履行ボンドもそっくりで違いがよくわかりません。履行ボンドは『公共工事履行保証証券』と書かれていて、履行保証しますよ~とだけ書かれています。
履行ボンドは、公共工事履行保証証券のことで、保険会社が発行します。保険契約でええやんって思いますが、履行ボンドは「金銭的な保証」と「役務的な保証」の両方に対応できるのが特徴らしいです。契約約款を見て発注者がどちらを要求しているのか確認しましょう。
「金銭的な保証」とは、受注者の債務不履行になったときに受注者が負担する違約金の支払い債務の履行を保証するものです。
「役務的な保証」とは、受注者の債務不履行となったときに金銭を保証するのではなく、役務、つまり工事完成を保証するものです。この場合、保険会社は代替履行業者を選定して残工事を完成させることになります。
また、私は詳しくありませんが、銀行の与信枠に影響を与えないメリットもあるみたいです。いろいろメリット・デメリットあるんでしょうね( ゚Д゚)ハハハ
手数料など実費のことも全然詳しくないので割愛します。やはり金額にもバラツキがあるようですね。土木公務員としてはこのくらいの知識で良いと思います。
前払金保証事業会社とは?
さきほどから保証事業会社と書いてるのは前払金保証事業会社のことです。
前払金保証事業会社とは、「公共工事の前払金保証事業に関する法律」で定められた公共工事の前払い金を保証する事業者のことです。文字通りですね。
Wikipedia先生によると、現在は次の3社だけらしいです。
- 西日本建設業保証株式会社 西日本建設業保証株式会社(外部リンク)
- 東日本建設業保証株式会社 東日本建設業保証株式会社(外部リンク)
- 北海道建設業信用保証株式会社
保証書が提出されるので皆さんもよく見かけると思います。
この3社は前払い保証の会社なので、前払いが規定されていない工事や業務委託では使えません。あくまで前払いが可能な工事の入札保証(入札ボンド)や契約保証を特約条項的におこなうのです。
まあ知らなくてもいい知識かもしれませんが、記事の中で「保証事業会社」っていっぱい書いたので一応説明しました(/・ω・)/
契約金額が変更になったときどうすればいいの?
あれ?契約変更で増額になったときって証券・証書を出しなおしてもらうの?と疑問に思うかもしれません。
結論から言うと、金額が大幅に上がったりしなければそのままでOKです。
例えば、ある自治体では契約変更により保証金が5%以下になるときは、保証金も変更後の金額の10%以上となるように変更されます。現金ならば追加納付ですし、金融機関等の保証なら変更契約書、保険会社からは異動承認書などが必要となります。
また、工期変更もいろいろ提出が必要となる場合があります。金融機関等の保証ならば、変更契約書が必要です。ただし、保証事業会社は受注者が変更契約書の写しなどを提出するだけで機械的に処理されて変更契約書などは発行されないので、発注者に提出するものはありません。保険会社からは異動承認書が必要となります。
これらは自治体ごとに「契約保証に関する事務取扱要領」のような名称で規定されていますので、確認してみてください。
では今日はこのあたりで。
契約事務の参考になりましたら幸いです。
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