こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
ここでは、点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)を設計するときの参考資料を見ながら、
ポイントと注意点を説明したいと思います。
設計する際の参考資料
まずは、いきなりですが、点字ブロックの設計をするときの参考資料の説明から。
①視覚障害者誘導用ブロック設置指針について(昭和60年)建設省
②視覚障害者誘導用ブロック設置指針・同解説(昭和60年)(社)日本道路協会
③バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編) 国土交通省
④道路の移動等円滑化に関するガイドライン 国土交通省
⑤視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)の適正な設置のためのガイドブック 国際交通安全学会
⑤各自治体の設置基準等
ネットで見れるものはリンクを貼っています。
①は簡単な指針です。②は具体的に図示している解説本ですね。どちらも昭和60年に国が示したものですので古い資料になります。
その他に、道路の点字ブロックについて言及しているガイドラインは2つあります。そして、ガイドブックが1つ。チェックしましょう(*’ω’*)
バリアフリー整備ガイドライン
バリアフリー法と「移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に関する基準」に基づき、設計方法などを具体化させたものがバリアフリー整備ガイドラインです。
バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編) 国土交通省
このガイドラインだけでも【旅客施設編】【車両編】【役務編】の3つがあり、とんでもないボリュームになっています。さらに建築、公園、船舶などにもガイドラインがあるので、全部を把握するのはとても無理でしょう。
バリアフリーに関する仕事をしている人は必修かもしれませんが、土木公務員としては必要になった時に必要な箇所だけを参照する程度でいいと思います。屋外の点字ブロックについては【旅客施設編】に少し書かれています。
道路の移動等円滑化に関するガイドライン
これが一番重要です。
バリアフリー法と「重点整備地区における移動円滑化のために必要な道路の構造に関する基準」に基づき作られたガイドラインです。
道路の移動等円滑化に関するガイドライン 国土交通省
点字ブロックの章は、設置指針を参考に書かれていますが、それなりに時勢に合わせてアップデートされているようです。
点字ブロックのみならず道路整備、とくに歩道整備のチェックしておくべき基準が載っています!
土木公務員は必読です。
視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)の適正な設置のためのガイドブック
あまり知られていないかもしれませんが、国際交通安全学会がまとめてくれたガイドブックもあります。
視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)の適正な設置のためのガイドブック 国際交通安全学会
このガイドブックは指針や基準ではありませんが、実際に視覚障害者を混乱させてる誤った設置例と、その改善策を写真などでわかりやすく示したものです。
各自治体の設置基準等
道路の移動等円滑化に関するガイドラインを受けて、各自治体も道路の移動等円滑化ガイドラインを整備しています。
さらに、大きい自治体になると、点字ブロックの設置基準なども具体的に定めていることがあります。
ここでは、オススメな大阪市と石川県の資料をご紹介します。
大阪市:視覚障がい者誘導用ブロック敷設基準・同解説 (osaka.lg.jp)
「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」(+設置指針)と同じことが書かれていますが、実際に利用者の声を聴きながら変えているところもあるようです。
石川県の資料はこちらです↓
石川県バリアフリー社会の推進に関する条例「施設整備の手引き」 (ishikawa.lg.jp)
第Ⅳ章「道路」に点字ブロックも書かれています。設置指針同解説がそのままな感じで載っているようですので、これらの資料を参考に設計しましょう。
ネットで公表してくれている自治体はありがたいですね。皆さんの自治体になければ、近隣の自治体を参考にしちゃいましょう。
点字ブロックを設計するときのポイント
では、参考にする文献を説明したところで、本題に入っていきます。
点字ブロックの設計に100%正解はないのですが、私なりに注意するところを簡単に説明したいと思います。
・線状ブロックと点状ブロックを正しく使い分ける
・隙間をあけず連続的に敷設する
・マンホール蓋などは化粧蓋を用いる
・利用者の歩く位置を考える
・滑らない材料を使う
・水溜まりに気を付ける
まずは点字ブロックについて理解することが必要です。こちらの記事をどうぞ↓
線状ブロックと点状ブロックを正しく使い分ける
線状ブロックは、「誘導ブロック」とも呼ばれ、歩行者の進行方向を示します。歩いて進める場所に直線的にならべるブロックですね。
点状ブロックは、「警告ブロック」とも呼ばれ、注意してください!という意味です。注意するところは、階段前、横断歩道前、誘導ブロックが交差する分岐点、道の角度が急に変わるところ、案内板の前、障害物の前、バス停前、駅のホームの端などですね。
利用者にとって警告ブロックのほうがわかりやすいということで、すべて警告ブロックを並べている施設もありますがそれはルール違反ですよ。外部からも訪問者が来る場合は必ず統一ルールを守りましょう。
警告ブロックは多すぎても少なすぎてもダメですね。
それぞれの意味を理解すれば、大きな間違いは無くなります。
隙間をあけず連続的に敷設する
目が見えない人にとっては、連続性がないと歩けなくなります。
それでも途切れてしまっている場所があります。例えば、
- 道路・施設管理者が変わる場所
- マンホールやハンドホールの蓋
- 側溝・グレーチング
- 経年劣化で剥げている(剝げやすい)場所
- 工事中の場所
- 後から舗装をして点字ブロックが施工されていない場所
などですね。できるだけ繋げられるように、現場調査をして考慮したほうがいいと思います。工事中は仮設の点字ブロックを置きましょう。
マンホール蓋などは化粧蓋を用いる
マンホールやハンドホールの蓋は「化粧蓋」にして点字ブロックを設置しましょう。
化粧蓋とは、ふつうの鋳鉄模様の蓋ではなく、タイルやインターロッキングブロックによる「化粧」ができる蓋のことです。
施工段階でいきなり化粧蓋にしてくださいと言っても管理者は難しいと思いますので、歩道整備の設計段階で相談しておきましょう。
できれば、点字ブロックが並ぶ位置にはマンホール蓋がこないようにするのが一番いいのですが…。
利用者の歩く位置を考える
利用者の歩く位置を把握しておくことも大事です。
他記事でも書きましたが、利用者は点字ブロックの上だけを歩くわけではありません。
大きく分けると
①片足をブロックの上に乗せて歩く
②ブロックの横に立って歩く
③両足ともブロックの上に乗せて歩く
の3つのパターンがあります。
ということで、点字ブロックの両側には60cmほどの歩行スペースが必要ですし、警告ブロックは両側にはみ出たほうが望ましいかもしれません。
このあたりは設置指針・同解説、ガイドラインなどと少し異なりますが、本当に利用者の人が使いやすい安全な設計を心掛けるなら、利用者に聞いたりして、細部を工夫したほうがいいと思います。
滑らない材料を使う
バリアフリーの観点だけに集中しすぎると、設置デメリットを見落としてしまいますね。
ご存知のことも多いと思いますが、点字ブロックは雨の日よく滑ります。
なるべく滑らない材料を使うこと、摩耗しにくい材料を使うこと、自転車や歩行者が多い道路は設計手法を検討することが必要です。
関連記事:点字ブロックの種類を解説します
水溜まりに気を付ける
おまけで、施工のときには、水溜まりについても注意してください。
近年多くなっているMMA樹脂で接着するタイプは、路面から2~3mm盛り上がり雨水が横断できなくなります。
おそらくメーカーや施工者はそんなこと気にしないし考えもしないかもしれませんが、道路管理者としては排水は大事なのです。水は舗装劣化を引き起こします。また、バリアフリーを意識しすぎてその他大勢の通行者の不便なものになってはいけません。
材料に影響がない程度に目地(溝)切りをしたり、設置面を低くしたりして水が通る道を作りましょう。
おわりに
ということで、点字ブロックの設計ポイントや注意点をかんたんに書いてみました。
道路や施設の些細な付属品ではありますが、施工してしまえば修繕を繰り返し半永久的に残るものになります。
なるべく正しく設計・施工するようにしたいですね。正解はありませんけどね。
では、今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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