こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
ここでは、河川の分類(一級河川、二級河川、準用河川、普通河川)と誰が管理しているのかを解説します。
河川の分類
河川は重要な順に一級河川、二級河川、準用河川、普通河川の4つに分けられます。
それぞれ誰が管理しているのかを図表にしたものがこちらです。
水系とは?
まず「水系」の説明をしなければいけませんね。
雨水が集まり一つの大きな川になってゆく、こうした川のなりたちの全体を「水系」と呼んでいます。水系の中で「国土の保安上や国民の経済上特に重要な水系」を国土交通大臣が「一級水系」に指定しています。二つの県にまたがる水系はほとんど一級水系となってますよ。
異なる水系が交わることは原則ありません。
水系は木の幹や枝のように見えますよね。
一級河川
一級水系のうち河川法による管理を行う必要がある河川が「一級河川」です。
一級水系の河川は、河川法によって指定される際は原則として一級河川となりますが、一部の区間については都道府県知事や政令指定都市市長に管理のみを委任できます(法定受託事務ですね)。
また、都市部や源流部の小河川などでは、河川法での未指定部分を市町村長が準用河川に指定して管理したり、どこも指定管理しない場合は河川法の適用を受けない普通河川として扱われ、市町村が管理しています。これらの区間は一級河川ではありません。
つまり、一級河川は区間を分けて、国、都道府県、政令市が管理しているということです。
国の直轄区間は、出先の地方整備局のさらに出先機関の河川事務所などが管理しています。
都道府県の管理区間(指定区間と呼びます)は本庁河川課や出先の土木事務所が管理しています。政令市の場合も同様です。
一級河川の管理区間はこちらのページのURLから確認することができます。
河川の管理区分について – 国土交通省水管理・国土保全局 (mlit.go.jp)
また、おなじく国交省Webサイトで河川概要・歴史・災害・地域・自然環境・資料リンクがわかりやすくまとめてありますので、興味がある方はご覧ください。
日本の川 – 国土交通省水管理・国土保全局 (mlit.go.jp)
一級河川が存在しない都道府県は沖縄県だけです。
二級河川
一級水系ほど重要でないものは二級水系に指定され、本流は二級河川となります。
二級河川は都道府県が管理しています。政令市を流れている場合は、一部区間の管理権限を政令市に委ねますが、除草などの維持工事だけを政令市が行うこともあるようです。
一級河川と二級河川が同じ水系に属することはありません。よく一級水系の支流は都道府県が管理しているので二級河川と勘違いしそうになりますが、そこは一級河川の指定区間なのです。
一級河川と二級河川をあわせて法河川と呼んだりします。
準用河川
準用河川は、その名の通り河川法の二級河川の規定を準用し、市町村長が管理する河川です。一級水系、二級水系、単独水系にかかわらず設定されます。
河川法に基づき管理されるので、市町村に河川台帳も整備されているはずです。
普通河川
一級河川、二級河川、準用河川以外の小河川を普通河川と呼びます。実際の管理は市町村などが行っています。
「上記3つ以外のすべて」という分類の仕方ですので、普通河川は様々なものがあり、しっかり川の形態をしていることもあるし、「え?これが川?」という見た目のときもあります。渇水期には水が流れていないことも多々あります。現場ではただ単に水路、排水路などと呼ばれていたりするかもしれませんね。
河川の水系地図を見てみよう
では、具体例を見た方が分かりやすいと思いますので、水系地図を見てみましょう。
熊本県のこちらのページや栃木県のこちらのページのように、都道府県ごとに作成した河川パンフレットをWEBサイトに公開してくれてたりします。その裏面が管理区間を示した地図になっているのです(*’ω’*)
具体例1 熊本県の緑川水系
熊本県のWebサイトにあるパンフレット裏の地図で緑川水系を見てみましょう。(市町村ではなく県主体の地図です)
緑川水系は熊本県だけで完結するので分かりやすいと思います。例えば筑後川なら熊本・大分・福岡・佐賀の4県を流れているので管理区間が細かく分かれていて見るのが大変なんです…。
↓に緑川水系を抜粋しました。見づらかったら↑のリンクから拡大して見てくださいね。
茶太線が一級河川の国管理区間、
緑太線が一級河川の熊本県管理区間、
青の太線が二級河川の熊本県管理区間、
青の細い線が市町村管理河川(おそらく準用河川)です。
緑川の本流を遡っていくと、途中で県管理になり、また緑川ダム周辺で国管理になっていることが分かると思います。重要な区間は国が管理しているということですね。
さらに上流にいくと県管理区間となり、その源流部は青細線で表記されています。ここは同じ「緑川」という名称で山都町が管理しているみたいですが、この区間は一級河川ではなく準用河川(と思われる)ということです。
また、緑川水系の北側は政令市である熊本市を流れていますので、本来は県管理である一級河川の指定区間(加勢川、健軍川など茶色文字の河川)が熊本市管理になっています。ちなみに、「保田窪放水路」が緑川水系から白川水系へ繋がっているように見えますが、調べたところ本当に繋がっていて、氾濫しやすいので白川に逃がしているみたいです(ほんとか?)普通は水系同士は交わらないので特殊な例ですね。
二級河川のところでも説明しましたが、一級河川の支流は二級河川ではありませんので注意してください。
具体例2 横浜市の河川
次に横浜市の河川地図も見てみましょう。こちらは市主体の地図です。
横浜市を流れる河川一覧 横浜市 (yokohama.lg.jp)
まず、北に位置する一級水系の鶴見川水系を見てみましょう。鶴見川水系に属する9つの一級河川のうち、梅田川、鳥山川、砂田川の3つが横浜市が管理する一級河川となっていますね。
また、鶴見川水系には黒須田川、奈良川、岩川、早渕川、布川の5つの準用河川もあります。準用河川ですので、もちろん横浜市が管理しています。
二級河川のほうにも注目してみましょう。市の中央あたりに位置する帷子川水系を見てみると、下流は神奈川県の管理区間ですが、上流は「県知事管理 市長施工・維持区間」となっています。これは維持工事のみを横浜市がおこなう特殊な区間だと考えられますね。私は詳しくないので、この特殊な取り扱いをどのような根拠で運用されているのかよく知りません(;´・ω・) 横浜市はこのような取り扱いの二級河川が多いみたいですね。
政令市ではない市町村は準用河川以下だけを管理すればいいので分かりやすいですね。
河川は共同管理するものである
ここまで管理区間の説明をしてきましたが、当然河川は行政境を気にせず自由気ままに流れていますから、人間側の都合で管理区間を分けたとしたら色々と不都合が出てくるものです。
防災の面では、流域治水が一層求められる時代になっていて、「河川は国と自治体が共同で管理するものである」という認識を強く持つべきです。
具体的に言うと、市役所の土木系の公務員であっても国や県が管理する一級河川・二級河川の知識をもつこと。
これが大事だと思います。
また、実際に管理区分の垣根を越えて、共同管理によるコストカット・効率化の取り組みも行われています。
こんな感じで、2つの行政組織が一体的に公募して工事をしたり管理したりすることも増えるかもしれませんね。
超基礎的な河川区分の解説でした。また河川の基礎知識を書いていきますのでお楽しみに。
コメント
いつもブログを拝見しております。
当方事務屋でして河川予算を持っていたこともあり、本記事の内容にもっと早く出会えていたらと思います。
とても分かりやすい解説ありがとうございます。
SKさん、
実務を担ってる方からそう言ってもらえると嬉しいです。ありがとうございます。
事務の皆さんにも分かるように基礎的な記事を書いていきたいと思います。
お名前は本名っぽかったので勝手ながら仮名に変えています。