「指定」と「任意」の考え方を解説

土木全般

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

建設業の七不思議のひとつ、「指定と任意」。

この2つの違いについて、ざっくりと理解してる人は多いと思いますが、とくに仮設工については指定仮設と任意仮設の違いを明確に答えられる人はほぼいません。部署によっては運用を間違えていることも多々あります。そのくらいちょっと曖昧な概念です。

ここでは、正式なルールとなぜそのような間違った運用の仕方になっているのかを解説します。

指定と任意の定義

工事請負契約書第1条(総則)第3項に基本的なことが記載してありますので見てみましょう。

工事請負契約書

第1条第3項
仮設、施行方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段(以下「施行方法等」という。)については、この契約書及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、乙がその責任において定める。

ハイ。どちらの自治体でも同じ文章が記載されているはずです。原則は任意施工なのです。

言葉の定義は次のようになります。

・指定とは、工事目的物を施工するにあたり、設計図書のとおり施工を行わなければならないもの。言い換えるならば「契約事項」です。発注者が施工方法や使用機械、使用材料などをあらかじめ決めていて、仕様書や図面に明示しているならば、受注者はその内容に従って施工しなければなりません。

・任意とは、工事目的物を施工するにあたり、請負者の責任において自由に施工を行うことができるもの。極端に言えば、「安全・品質・出来形を満足できるのであれば、どの方法で施工してもよい」という考え方です。施工会社は、自社の技術力や保有機械、コストなどを考慮して最適な施工方法を選択できます。

ポイントは、工事目的物を作る施工方法は原則任意である、という点です。設計書(積算の内訳)のなかでバックホウの規格や、材料の細かい仕様、仮設工の方法が決められていても、その設計書が「設計図書」に定義されていなければ参考図書扱いだということです。図面や仕様書に記載がなければ受注者は守る必要はありません。

あ、一応補足しておきます。

任意という言葉から、「好き勝手に施工していい」と思われることがありますが、それは誤りです。

任意施工であっても、
・契約図書(契約書・共通仕様書・特記仕様書・図面・現場説明書)
・関係法令などの各種ルール
を守る必要があります。また、品質や出来形を満足しなければならないことは当然です。任意なのは施工方法の選択であって、工事品質まで自由という意味ではありません。

施工方法を変更するときは?

任意の工種でも、発注者は施工方法を想定して設計積算しておきますが(じゃないと設計金額を出せないから。)、実際に施工方法などは受注者が選べるので、工法変更するときには基本的に協議は必要ありません。(施工計画書は出してくださいね。)しかし、例外として、現場条件が明示されていたものと異なり、発注者想定の施工方法で施工できない場合は、当初の設計金額が不適当になってしまうので、設計変更の対象となります。

一方、指定の工種では、施工方法を変更するときは原則協議を行い、発注者の指示や承諾が必要です。

項目指定任意
設計図書施工方法等について具体的に指定します。施工方法等について具体的に指定しません。参考図をつけることがあります。
施工方法等の変更発注者の指示または承諾が必要。受注者の任意。(施工計画書等の修正、提出は必要)
施工方法等の変更による設計変更行います。行いません。
当初明示された現場条件に変更があったことによる設計変更行います。行います。

「当初明示された現場条件に変更がある」というのは例えば次のようなパターンです。

・地盤状況が想定と違った(砂質土→礫質土、地中から設計図にない水道管やガス管、通信ケーブルが見つかった)
・周辺環境の影響が判明した(隣接の民地工事が開始された、騒音・振動対策として低騒音機械への変更が必要になった)
・より安全な施工方法がある

まとめると、業者都合ではなく施工方法を変えざるをえなくなった、または変えたほうが良いとき、その内容によりますが設計変更を認めることができます。まあ、監督員の裁量の部分もあると思いますね。

指定と任意の見分け方

指定と任意の見分け方についてですが、今まで説明したとおり、設計図書に示されたものが「指定」です。(「参考図」などと記載があれば任意ですが。)それ以外はすべて任意。もし疑義があれば発注者に直接確認するしかありません。

問題なのは、設計図書で明確に区分されていなかったり、ルールを無視して運用していることでしょう。
例1:関係機関協議で決まっている施工方法なのに、積算では計上されているが設計図書には記載されていない。
例2:仮設工の図面があるが、参考図と記載されていない。

例えば、例2の場合は仮設なのに参考図と書かれていなければ、施工前に発注者に「この足場は任意仮設でいいですよね?」と聞いてください。

設計図書とは何か?については次の記事で解説しています。

何が指定になるのか

原則、任意施工という説明をしましたが、ということは何が指定になるのかが大事になってきます。

役所によって慣例的に決まっているものもありますが、一般的には設計段階で工法比較して総合的に有利なものが採用されており、それを前提に全体計画されている施工方法は指定となります。具体例を見てみましょう。

① 仮締切工法の指定
例えば、河川工事で、
・鋼矢板による仮締切
・大型土のうによる仮締切
仮設であっても河川仮締切は安全性が担保された構造・材料・施工方法が河川協議によって打合せ済みで全体計画は作られており、指定仮設となることがほとんどです。受注者の判断で変更することはできません。

② 舗装の施工方法の指定
例えば、舗装工事で
・切削オーバーレイ工法
・全面打換え工法
現場条件を考慮しつつ比較検討を経て、または役所の慣例的な採用工法が指定されています。

③ 施工機械の指定
例えば、
・低騒音、低振動型、排出ガス対策型建設機械
よくあるというか、必ず上記の対策は指定されていると思います。いくつか基準があるので勉強しておきましょう。他に設計図書で指定されていなければ施工機械については任意です。

④ 仮設道路・施工ヤードの指定
例えば、
・仮設道路の位置、構造
・施工ヤードは○○側に設置すること
仮設道路は工事全体計画を作る上で最も重要であり、各種協議で打合せ済な存在ですので指定されていることが多いです。とくに一般交通に供用する迂回路は必ず指定します。施工ヤードは周辺施設や用地の制約から位置が指定されることがあります。

⑤ 使用材料の指定
例えば、
・下層路盤は再生クラッシャランRC-40
・構造物はコンクリート24-12-40BB
・管材はGX形ダクタイル鋳鉄管
など、使用する材料は工事目的物でもありますし、基本的に図面によって指定されます。

不適切な対応例

指定と任意のルールをよく知らずに、不適切な対応をしてしまうことがあります。よくある対応例を2つ挙げておきます。流し読みしてくださいね。

①土工において、バックホウ0.45㎥級で施工計画書が提出されたが、積算ではバックホウ0.28㎥級を考えているので、発注者は現場にもってくるよう指示した。
→ダメダメダメ!!積算はあくまで標準積算です。施工機械は自由に選べますし、設計変更の対象にはなりません。(当初の「標準積算」が正しかったのかという疑問は持たれるが)

②都市工事において、受注者がプラントを収容する防音ハウス(発注者が参考図として示していた任意仮設)の検討を行った結果、プラント機材のスリム化や施工を工夫することによって、参考図より小さいもので施工可能であった。発注者は設計より安くなるという理由で参考図どおりに施工するよう指導した。
→ダメダメダメ!!積算はあくまで任意仮設の参考図によるものです。参考図どおりに施工する必要はなく、設計変更の対象にはなりません。(当初の「標準積算」が正しかったのかという疑問は持たれるが)

なぜ間違った運用になってしまうのか

残念ながら今説明したように設計図書への示し方が間違っていたり、担当職員が勘違いしていたり、そもそも部署全体で間違った認識を持っていることもあります。

なぜそうなってしまうのかというと、現在の設計金額の算出の仕方が鉄筋1㎏からボルト1本から材料100円くらいものから「そんなに細かく積算する必要あるの?」って思うくらい厳格に積み上げているから。それなのに積算で用いられた作業方法と現場の作業方法に差異があった場合に多くの人が違和感を持ってしまうのでしょう。しかも、現場施工方法のほうが安くなれば、第三者から過大積算の指摘を受ける可能性が高まってしまいます。

ですから、図面や仕様書とは関係なく、「この方法で積算しているので変更できません」「施工機械変えるなら設計変更しなきゃいけないですよ」という思考になってしまうのです。指定と任意のルールを知らなければ、通常の感覚ではそう思ってしまっても不思議ではありませんよね。

ルールを知らない側の人から、監査や会計検査で「積算内容と実態が異なっているのではないか」という指摘が行われることがありますが、個々の現場で積算基準の適用範囲が合っているのであれば、積算基準と実態の違いがあっても問題になることは原則としてないものと判断されます。(だからこそ、当初の積算基準の根拠設定が大事になり責任を持たなきゃいけない職員は苦しいのですが)

土木工事に関わる皆様はしっかりと理解しておきましょう。監査にビビらずに正しいルールを運用しましょう。

そして、設計図書を作る際には何が指定で、何が任意なのか、しっかりと自分のなかで区分をして、任意のものを図面や仕様書に記載するときには「参考図」や「参考図書」という言葉を添えるようにしましょう。任意であっても、出来る限り発注者の考え方を示したほうが良いので参考図・参考資料などを添付しましょう。(まあ役所のルールに従ってください)

以上で解説終わります。皆様の土木ライフにお役に立ちましたら幸いです。

ほなまた。

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