業務効率化は自分たちを苦しめる

仕事全般

効率化が完全な正義のように扱われて久しくなりました。ブームは終わることはなく、市役所でも何かにつけて業務の効率化が叫ばれています。

しかし、私は効率化には悪い側面もあると感じています。簡単に結論だけ書くと、効率化で業務が圧縮されたら効率化できない大変な仕事だけが残ってしまうのではないかと懸念しています。そのお話を書いてみようと思います。

カミノ
カミノ

成果報酬制度がほぼない自治体の話ですよ。

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ここでいう効率化とは

まず定義としては、業務のなかのムリ・ムダ・ムラを排除して、業務に掛かる時間・コスト・人材リソースなどを減らすことが効率化と呼ばれていますよね。市役所の場合はコスト=職員の人件費という側面が強く、コスト=人材リソース=職員の勤務時間と考えられるので、ここでは見かけ上の処理時間を減らすことが業務効率化の目的とします。

効率化のニュアンスに「適切に行う」という意味も含まれてることがありますが、それは標準化や平準化に任せるとして、ここではあくまで効率化=時間短縮のみで考えてみます。

ちなみに業務の効率化でググると「業務効率化のアイデア10選」みたいなサイトがたくさんヒットしますね。業務効率化のアイデア10選 進め方と成功のポイントを解説 (teachme.jp)という記事によるとその10選は次のとおり。

  1. 業務をなくす
  2. 業務の優先順位を決める
  3. 自動化する
  4. 業務マニュアルを作成する
  5. 業務フローチャートを作成しておく
  6. データベースを活用する
  7. 業務を複数回に分ける
  8. 業務の担当を変える
  9. 作業のスピードアップ
  10. 色々なアイデアを組み合わせる

ここでは詳細は割愛します(/・ω・)/

個人と組織の違い

効率化は大きく分けると個人の効率化組織の効率化があろうかと思います。

個人の効率化はデスク周りを使いやすいように改良したりパソコンのショートカットキーを使ったりする簡単なものから、使い捨てマクロを組んだり高度なテクニックを必要とするものまで、いずれにしても個人レベルで時間短縮を図るものですね。特にデメリットは無いから個人で完結できる分はどんどん効率化していいと思う。後任が苦労するのはダメだけどね。その短縮できた時間は仕事の質を上げるために使ったり、自己研鑽したり、休んだりしてもいいでしょう。

私も「業務効率化」カテゴリーで雀の涙ほど効率化が図れる小技をご紹介しています。じつはガチ有用な情報も書いてたりしますのでぜひチェックしてみてくださいね!

業務効率化 | カミノブログ (kamino.blog)

さて、本題は組織で取り組む効率化です。

これも一概には言えませんが、自治体の場合も、さきほどご紹介した効率化アイデア10選のような方法で業務時間を減らすことを行っています(行おうとしています)。

課単位だったり、全庁的な取り組みだったり、小さいものではPC周りやマニュアル系の整備が多いと思いますが、大きな変革をするとしたら、業務のアウトソーシングやシステムの導入が挙げられます。最近はPPP/PFIのような官民連携が流行っていますし、今後さらに拡大していくと感じています。ICTも叫ばれていますから、デジタルとは正反対のジャンルである建設業界でもICT系のシステム導入が盛んなくらいです。事務作業なら当然のことながら役所を対象とした効率化のシステムは多種多様にあると思います。

例えば、そうした方法によって、今まで職員一人が1日かけて行っていたA業務の実処理時間が、条件入力とシステム出力チェックの30分に短縮されれば一見大きな成果のように思えます。

効率化できた先にあるものは…

A業務が30分で済むようになったからと言っても、残り7時間以上は休めるのでしょうか?そんなわけないですよね…。その7時間は別の効率化できない(まだされていない)業務が詰め込まれることになります。パーキンソンの法則でも公務員の仕事は常に時間一杯を満たすように膨れ上がると言われています。

効率化可能な業務はできるかぎり時間が圧縮されていくと思いますから、残りは効率化できない業務で埋め尽くされることになります。

では、効率化できない業務とは何でしょう?

まず効率化できるものを考えてみると、マクロで処理できるような比較的単純な作業だったり、量が多い、繰り返し行う業務、民間でもノウハウを持っている業務でしょうか。例がないと分かりづらいですよね。たとえば、ある設計条件に基づき舗装工事の設計図と設計数量を作成する業務。測量図があれば現地調査をして仕様・条件が決まりさえすればあとは黙々と遂行できるものです。

では効率化できない業務とは?

仕様・条件がないもの、またはその仕様・条件を設定するための業務でしょうか。代表的なのはコミュニケーション系の業務です。

上司・部下との意思疎通、関係機関との協議、利害関係者との折衝、要望クレーム対応などなど。これらはデジタルを駆使して手段としての効率化はできるかもしれませんが、本質的な業務は削れるものではありませんから効率化できません。つまり、効率化を進めた先には、担当業務数は増えるうえに、このようなコミュニケーション系の業務ばかりを行うことになるのです。

1日のスケジュールを想像してみてください。

8:30~係のミーティング
9:00~A機関と○○についての協議
10:00~B機関と△△についての協議
10:30~C機関との□□についての協議
11:00~協議のための資料作成
13:00~自動化で作成した設計資料の確認
13:30~委託D協議事項の確認
14:00~委託E協議事項の確認
14:30~自動化で作成した手続き書類の確認
15:00~他部署と☆☆についての協議
16:00~委託先Dとの打合せ
16:30~委託先Eとの打合せ
17:00~協議資料整理、片付け

疲れませんか?

仲の良い友達との会話とは違い、ビジネスのコミュニケーションは相手のことをよく知らない状態での交渉も多いですからとにかく脳が疲弊すると思います。コミュ力おばけな一部の人間以外は精神的にもしんどいはずです。。全体の能率も落ちますし、そもそも働く気力さえ無くなってしまうかもしれません。

効率化で何らかの改良を加えたりシステムを導入するのもすごい骨が折れるのに、その先にあるのが幸せな世界ではなく超しんどい世界だったら絶望じゃないですか。

私は、仕事というか人生にはメリハリが必要だと思っていて、つまり、それは余裕を作るということです。以前エッセイでもご紹介しました。

カミノ
カミノ

十分な成果報酬が得られる民間企業であれば考え方が違うかもしれませんが…。

デメリットも意識しよう

効率化はメリットばかりが注目されますが、職員側から考えると「残業代が減る」とか「じっくり考える時間が減る」という弊害もあったりします。

今回は他の弊害には詳しく言及しませんでしたが、時間が圧縮されて大変な仕事ばかりになることに加えて残業代は減り、1件の仕事とじっくり向き合えずにスキルとして身につけることもできなければ、やりがいを感じることはできないと思います。

「あ~この業務ちょっと無駄なんだよな~」といいつつも、誰かが無駄ではないと思っているから現在も残っているのです。管理職から平職員まで10人が10人とも「これはさすがに無駄」と言うような業務だけテコ入れを行い(てかそんな業務さっさと潰してしまえ)、それ以外の効率化は本当に必要なのか慎重に判断することも大切なのではないでしょうか。

たぶん読まれた方のなかには「いや公僕なんだから業務の効率化をして無駄な税金を使うんじゃねえよ」とか「いやラクしたいだけやん」って感想になった人もいると思いますが、そんな単純な話ではなく、組織として職員が働きやすい環境を作らないと人が離れて破綻してしまうんです。他にもいろいろな素因によって生きづらい世の中になっていますからね…。

兎にも角にも「効率化が正義」みたいな風潮なので、いやそうじゃないんだよという私の考えを書いてみました。

では、読んでいただきありがとうございました。感想などお待ちしております。

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