道路の照明灯(街路灯)工事を発注するまで

道路

こんにちは。土木公務員ブロガーのカミノです。

今日は公務員の“段取り力”について書いてみます。

建設業界では「段取り八分・仕事二分」という言葉があります。現場作業を伴う仕事は段取りが80%を占めるという意味です。大げさに聞こえるでしょうか?

実際段取りはかなりのウエイトを占めます。超大事です。
なぜそんなに大事なのかは後日書くとして。

今日は、要望対応としての道路照明灯の工事について「発注するまでの流れ」を説明したいと思います。

それで、どれだけ“段取り力”が必要か分かると思いますので。

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要望を受けたときに、まず整理すること

さて、具体的に説明していきます。

まずは要望を受けますよね。

今回は『横断歩道が夜真っ暗で危ないので、照明灯を設置してほしい!』という要望がきたとします。

照明柱を1本建設するという話です。

このような照明灯を“局部照明”もしくは“単独照明(単路照明)”と言いまして、局部を照らすためだけの目的なので、面的な照度分布は考えません。基本的に単独で電柱から電線を引き込みます。

↑これは連続照明かな?  株式会社 因幡電機製作所ウェブサイトより

そもそもな話、照明灯?電気職の仕事じゃないの?と思うかもしれませんが、田舎の役所だと土木職も照明灯くらいは設置します。というか電気職がそんなに居ませんし。

「電気」・「設備」・「機械」は建築だけの分野ではなく土木の傘の下にも当然存在しますよ。

要望書(陳情書)を受理する

照明灯設置のような道路付属施設を新たに設ける場合は、正式に要望書(陳情書)を出してもらいます。そして、地元の総意だと分かるように、町内自治会長の同意書も必要になります。私の役所では、隣接地権者の同意も必要になります。

なぜ隣接地権者の同意がいるかと言うと、照明で照らされることで田畑の農作物の生育障害等、何か不利益が起こるかもしれないからです。(田舎でスマンな。)その名残で市街地でもトラブルを防ぐために予め同意承諾を貰うことになっているわけです。

これらは基本的に要望者に用意してもらいますが、もし協力を請われたら職員も対応します。

目的をしっかり確認する

「誰のために」「何のために」「いつまでに」

必ず確認しましょう。これによって後述の設計仕様が変わります。

現地調査で確認すること

次に、要望箇所を調査します。

現場条件を確認することは非常に大切ですし、事前調査であなたの“段取り力”が問われます!
下記のことを確認して、設置のイメージを作っていきましょう。

照明灯設置基準と照らし合わせる

現行の「道路照明施設設置基準・同解説」はあまり当てになりません。役所独自の設置基準を決めているはずですから、それを確認します。私の市役所では、“横断歩道”が暗ければ設置していいことになっています。

ちなみに、「道路照明施設設置基準・同解説」や「LED道路・トンネル照明導入ガイドライン(案)」には、「横断歩道の照明は、運転者から見て歩行者の背景を明るくしてシルエットとして視認させる照明方式を原則とする。ただし、将来においても連続照明が設置されない道路や、横断歩道が曲線部や坂の上等に設けられ背景が路面になりにくい場合等には、歩行者自身を照明する方式とすることができる。」と書いてあります。

前者の場合、「手前50mから、子供の下半身0.5mを視認するために横断歩道の後方約35mを照らす。」となっています。

そんなん無理です。そもそも片車線に1基ずつの想定がもう無理です。

1基の場合は、歩行者自身を照明する方式、つまり横断歩道を照らす形をとります。

↑これも2基建てることを想定してますけどね…

供用されている道路に建てる場合は、色々な現場制約があり、思ったように建てられないこともあります。あくまで、現場を知らない人が机上で作ったルールなので参考程度にしましょう( ˊᵕˋ ;)💦

敷地利用者は誰か

宅地、店舗、車の乗入れ口などを確認しておきましょう。

車の通行に邪魔になるところには絶対に建てない。

また、看板もチェックしてください。看板に大きく被ったりしたらヤバいです。あまり普段気にしませんから見落としに注意してください。あとから訴訟問題になります。(一応道路管理者が強いですけど。)

そういう意味では地権者だけでなく店舗オーナーにも同意をもらっておきたいですね。

連絡先や営業時間なども控えておくと、後々役に立ちます。

地下占用物(電力・ガス・水道・下水道・通信)があるか

周辺を歩いてマンホールとか見てみます。蓋たちの位置で管路を予測します。

照明灯に支障するけど、絶対に位置を譲れないというときは、占用物件の移設を協議します。最悪の場合は道路法に則り道路管理者として移設を“命令”できます。

基礎を設置できるか

基礎の形状はアンカー基礎?スパイラルダクト?フーチング基礎?
何種類か基礎形状がありますので、幅、深さ、経済性、施工方法。色々考慮して最適案を選定します。

目的は交差点照明?横断歩道照明?

今回は横断歩道用の照明なので横断歩道に向けて照らすような位置にします。

電力元を確認する。電柱番号を写真撮る。

電柱が近くに無い場合は、近接の照明灯等の施設を確認。そこを中継したりできますからね。

支線を利用することも考えます。

引込線(架線)延長を確認。

架線の張力はバカにできません。必ず確認して、ポール・基礎メーカーに構造計算してもらいます。

街路樹等が邪魔にならないかも確認しておきましょう。

引込線(架線)が敷地内の空中占用にならないか

なるべく占用しないほうがいいですが、やむを得ない場合は一応承諾をとったほうがいいです。

事務所で行うこと

次に、現地調査後に事務所内で進める業務です。

中には現地調査前に行えるものもありますが、タイミングは自由ですのでここでも“段取り力”が問われます!

予算要求をして予算をつけてもらう

確実に建柱することが決定したら予算をとりましょう。
今回は1本だけ約150万円を交通安全という名目でつけてもらいます。

具体的には省きますが、ここもしっかり段取りした上での話です。予算を確保するタイミングは現地調査後に設計仕様が決まってからが適正と思いますが、なかなか理想通りにはいきません。ここの見積もりがガバガバだと余分な予算が配当されたりして無駄使いにつながります。

法務局で公図と要約書をとる

要望書受理のところで書きましたが、地権者の同意がない場合は、職員も手伝ってあげます。次に、平面図と地権者一覧表を作成したりします。こういう雑務もきっちりして整理しておきましょう。場合によっては同意書については職員が足を運び、汗をかくかもしれません。道路・河川整備ではこういうことは日常茶飯事です。

電力会社の設計部と現地立会

引込線や建柱位置で相談したいことがあれば電力会社の設計部と臨場立会をして、施工条件を打ち合わせます。ちなみに、電力会社が照明灯の設置を断ることはほぼ無いはずです。だって、未来永劫電気代を払ってくれる神客ですよ。

絶対に逃すはずがありません。私が電力会社の部長なら何としても電気をもってきます。

占用管理者へ地下埋設物の照会

先ほども書きましたが、電力・ガス・水道・下水道・通信NTT等がありそうなら照会を掛けます。

図面を見させてもらって、支障がないかを確認します。

工事契約後に施工業者から申請してもらっても構いませんが、位置をずらしたりできないのであれば事前に建柱位置を確定させておきましょう。

ポールと基礎の構造計算を依頼する

メーカーサイドに架線条件等を伝えて、テーパーポールと基礎の規格を相談します。

張力や風力を想定して、ポールが曲げ応力度に耐えられるのか、基礎が耐えられるのかを確認します。張力などが大きい場合はポールや基礎が太くなります。

特殊な条件であれば1~2週間かけて構造計算をしてくれます。たぶん普通に計算はすぐできますし、標準は用意しているはずですが、時間が掛かるときもあります。

同時に必要な見積もりも相談しておくと良いですね。

ポールが特注になった場合は、個別の見積もりが必要で高額になってしまうし、製造にも時間が掛かってしまうので注意が必要です。繁忙期だと納期に2か月以上掛かることもありますから契約後のスケジュールを計算して、発注は早めにしておきましょう。

交通規制が特殊なら警察署へ相談する

照明灯工事では滅多にありませんが、例えば、全面通行止めが必要なら警察署の交通規制係に協議しましょう。

と言っても工事が絶対必要なら無理矢理やるしかありませんから、

そういうときは迂回路図を用意して「やります!」と言うだけです。

いよいよ設計・積算へ!

準備が一通り出来たらいよいよ設計を行います。照明灯を1基建てるだけならそう難しくはありません。

設計図を作成する

メーカーからあがってきた図面を照査したあと、CADで切り貼りして数枚の設計図面とします。照明灯なら1枚だけで済みそうです。

Panasonic ウェブサイトより

数量を拾い出して積算する

細かい内容は省きますが、図面から施工数量を拾って数量表を作ります。

その数量をもとに積算して設計金額を算出します。

あとは発注するだけ♡♡

設計図面と設計書(金額)が出来たら、あとは仕様書等を用意して、発注するだけです。

スケジュールに余裕をもって契約部署に持ち込みましょう。照明灯1基だけなら小規模の課内で発注・契約となります。

発注してからも色々大変なのですが、

省略しますヽ(*´∀`)ノ

4ヶ月くらい経つと立派な照明灯の出来上がりです!

YSポール ウェブサイトより
カミノ
カミノ

発注して業者さんと契約したあとも、現場施工が始まるまではたくさんの段取りが必要です。

段取り力を培おう

最後の方は駆け足になってしまいましたが、ざっくり事業フローを説明しただけでも、準備の占める割合が多いことがわかったと思います。

思いつくままに書いてみましたが、漏れがあるかもしれませんね。これを漏れなくスムーズに頭に描ける人が“段取り力”がある人です。

これらの工程を省略して発注した場合、絶対何かしら問題が発生します。直ぐにリカバリーできるものならいいんですが工事や事業そのものが取りやめになったら最悪です。

過去の事業をしっかり勉強して頭の中でフローを描いて、その時期に何をしなければいけないか、段取りに漏れがないかを意識しましょう。

土木の仕事は大変ですが、最後にはちゃんと“もの”ができる仕事。ものづくりの楽しさの片鱗を感じてもらえたでしょうか。

土木に興味を持った方、いつでも転職お待ちしております。

皆様の日々の業務の助けになれば幸いです。

では、今日はこのあたりで。

ありがとうございました。

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