地方債のダメなところ

予算管理

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

前回まで地方債について解説記事を書きましたが、実は地方債にはデメリットも多く言及されています。

私も土木行政に携わってきて、「地方債ってなんかおかしいよね~」と疑問を感じることがありました。これらの問題点は一般的にあまり認知されていない気がするのであえてここで文章化したいと思います。

カミノ
カミノ

地方財政シロウトの意見です。

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地方債制度の問題点

財政の話はむずかしいのでよくわかりませんし、教科書とかに書かれているデメリットはここでは解説しません。

私が疑問に思う問題点は次の2つです。

①将来的に費用負担する住民には決定権がない

②起債対象になることで財政健全化の意識が低くなる

将来的に費用負担する住民には決定権がない

問題点①です。決定権がないと言うと語弊があるかもしれませんが、「現在・将来の住民は過去に勝手に決まったことを負担しなければならない」という意味です。

まず、復習ですが、地方債は長期間使用する公共施設などを建設するときに利用する自治体のローンのことであり、例えば30年ローンの場合、30年後まで毎年度自治体の税収などから返済することになります。つまり、将来の住民にも費用を負担してもらうのです。

これ自体は受益者負担の考えに基づいているのでべつに変じゃないのですが、問題は、将来の住民はそんな公共施設欲しくなくても費用負担を強制されることです。

起債は新設改良・維持更新の種別に関わらずほとんど全ての建設事業が対象となっているので、なかには「いや、この公共施設は要らないんですけど。ちゃんと20~30年後のこと予想したの?」と言わざるを得ない事業もあったりするのです。理由としては国から予算が下りてきたから(国家政策だから)、何か大掛かりな事業をしていないと首長がサボってるように見えるから、職員の知識不足・能力不足、議員などの圧力・クレーマー的な要望に負けたから、流行りに乗って作っただけだから、などなど…。じつは事業が失敗しているものもあります。(行政は絶対に失敗とは言いませんが)

これらはある意味、そのときの首長や議員を選んだ住民たちにも少し責任があると言えるでしょう。しかし、建設当時15歳だった選挙権を持っていない中学生にはひとかけらも責任がないはずです。それでも彼らが働きだしてそこそこ高い税金を納めるようになったときに、その税金は「いまいち必要性が感じられないインフラ」の元利償還金としても使われることになります。彼らはまさか普段ほとんど使わないインフラが実はその便益に見合ってない金額を借金していて、ずっと自分たちが返済しているなんて知る由もないのです。

本来、将来まで費用負担を広げるなら、建設当時は通常以上の責任感をもって慎重に検討しなければなりません。しかし、地方債制度のおかげで費用の工面が簡単なので慎重さがなくなり、その責任すらも後回しになっているのではないでしょうか。

これが私が感じている第一の問題です。

こういった世代間ギャップは他の分野でもよく見かけます。例えば、年金制度ですね。将来の働く世代にずっと費用負担と責任を後回しにしているホントに酷い制度だと思います。私たちが年金を受け取れるようになるのは75歳くらいかもしれませんね…。

租税も同じようなものですね。行き当たりばったりで収入を工面するために増税していますが、一度増税すると事実上減税することはできません。しかし、増税に反対する権利は子供たちには無いのです。

起債対象になることで財政健全化の意識が低くなる

問題点②は実務上の問題点です。

起債対象になることで、「少しでも無駄を省いて節約しよう」とか「効率化して費用対効果を上げよう」とかそういう意識が低くなると思います。これは土木系の公務員さんなら薄々気づいていることかもしれません…。

自治体の歳入予算には特定財源という“支出先が決まっている経費”があり、それ以外の一般財源を各分野で分けなければなりません。つまり、一般財源の取り合いです。

そんな中、地方債という名のローンを利用できる公共事業はこの予算の争奪戦から逃れることができます。(実際は完全に逃れるわけではありませんが)予算の取り合いに本格参戦しなくていいということは、それだけ査定のハードルが低くなり、予算がしっかりつくことになります。

財政課は将来負担を見込むからそんなことないと言うかもしれませんが、実務上は起債事業のほうが査定はラクだと思います。というか枠が単純に大きいのです。逆に、起債対象ではない場合は、一般財源の枠が毎年度ほぼ一律に決められているので(例えば土木部局で〇億円ね、みたいな感じ)、新規できない・拡大できないという側面があるのです。

予算がつきやすいということは、それだけ慎重さがなくなります。問題点①と同じように、ホントに10年後まで費用負担させていいの?という事業が実施されてしまうのです。

大きい事業をイメージされるかもしれませんが、小さい事業でも一緒です。むしろ小さい事業の方がまとまった予算枠で執行するので隠れやすいのです。道路・河川敷の防草対策、河床・護岸の改修工事、歩道の安全対策、道路のカーブミラーや照明灯の設置……。もし一般財源だけでやらなきゃいけないなら、その限られた予算のなかでできるだけ効率化して多くの場所をやろう、仕様を工夫して効果を上げようと努力するのですが、起債でどかんと予算がついていると「とにかく予算消化しろー!」という感じで本末転倒なことになってしまうのです。

カミノ
カミノ

しかも、起債による建設事業は、現場に形として残るものですから、残ったものはずっと維持管理の費用がかかる負債となります…。

対策はどうすればいいの?

私が普段ぼや~と考えていることを殴り書きしたので、とりとめのない文章になってしまいました(;´・ω・)

対策までは深く考えていませんが、地方債の制度を抜本的に作り直さなきゃ難しいと思います。そんなの無理ですよね~~ということは、この不具合はどうしても出てしまうものだと思います。

個々の職員がこの問題点を認知し、意識することが大切です。そして、「この工事は別にやらなくていいんじゃないか?」「優先度高いところに予算をまわそう」「もう少し○○に配慮して計画を変えたりして効果を最大限高めたほうが良いのでは?」みたいなことを考えられたらいいですね。

予算枠については、財政担当と一度腹を割って話すしかありません。無駄な予算がついてるなら正直に「○○は実際は余らせてる予算だから来年度からは総額を減らしてもよい」とか「効率化できる余地があるので、カットしても構わない」とか「今後は△△の事業予算が必ず必要になるので、そちらにまわしたい」とか、話し合うのがいいと思います。

行政の予算要求は肥大化していくばかりです。解決策も朧けながら考えていますがまた別の機会にお話したいと思います。

理想論ですみません。

何かの参考になりましたら嬉しいです。

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