こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
会計検査ってよく聞くけどあんまり知らないんだよな~って人は多いと思います。
ここでは会計検査(とくに土木工事)について、その概要、市役所が受ける会計検査の流れ、対応と受験心得について、わかりやすく説明してみようと思います。私の経験に基づきますので、現行制度と異なっていたり自治体による違いがあるかもしれませんが、ひとつの参考としてお読みください。
みんなカイケンと呼んでますね。
会計検査とは?
会計検査とは、国の機関である会計検査院が
①国の収入支出
②政府関係機関・独立行政法人等の会計
③国が補助金等の財政援助を与えているものの会計など
を検査するものです。
簡単に言うと、国費に関するお金の流れを全部チェックしますよ〜という検査ですね。
民間企業であれば会計“監査”がありますが、国の場合は日本国憲法と会計検査院法の規定により、会計検査院が会計検査をおこなうものとされています。憲法で決まってるんですよ!スゴイ
三権分立として裁判所・内閣・国会の3つを習いましたよね?会計検査院はそれらに属すことなく検査を行う機関ですから、非常に強い権限を持っていることが分かるかと思います。
地方自治体も対象になる
地方自治体の場合も、国から財政援助してもらった事業は会計検査の対象になります。
(竣工検査、定期監査、省庁の完了検査など色んな検査類があるのでややこしいですけど…💦これらとは別物です)
補助事業は会計検査の対象になるということ!←大事🙋♀️
土木分野で言えば、工事・業務委託・補償など国庫補助を使った支出はすべて対象です。
適切な根拠を揃えて、適切な設計・積算・施工をおこない、適切な事務処理をしておきましょう!←大事🙋♀️
ここでは、市役所の土木、とくに国交省管轄に絞って解説していきます。
どうして工事の設計施工もチェックされるの?
会計検査では、設計の内容まで細かく見られます。設計条件とか計算結果、安全性もチェックされます。
ん?会計(お金の流れ)の検査なのに、どうして設計・施工までチェックされるの?と疑問に思うかもしれませんが、土木構造物に設計ミスや施工不良があれば、本来期待している機能や耐久性が得られないことになりますので、国が財政援助した目的が達成できないし、当然現場ではやり直し工事が必要になり、それも「お金の無駄遣い」になってしまうからです。
会計検査の頻度は?
頻度は、自治体や分野ごとに大体2年に1回実施されるみたいです。直近3年度分(実質2年分)が対象となるのが一般的。
ただし、豪雨や地震などの災害を受けた場合はそれどころじゃないので実施されないこともあり、そのぶんは再開した年度に一気に対象となってしまうのでテンヤワンヤになります笑。コロナ禍もそんな感じでしたね。
(過去5年分が対象と言われても困りますぜ…)
書面検査と実地検査
事前に書面検査が行われて、その後、実地検査が行われます。
書面検査は、指定された案件について持ち込まれた設計書などを会計検査院で検査するもので、市役所担当が同席することはありません。
実地検査は、会計検査院ではなく都道府県ごとに現地に赴いて検査するもので、市役所担当が同席します。検査会場は県の土木事務所など。つまり、書面での検査ではありますが、市役所担当者と対面で質疑応答をしたり資料を見たりするのがメインで、調査官が必要と判断すれば工事目的物を目視などで確認することもあります。
検査をする人のことを調査官と呼ぶ。検査官はもっと偉い人の役職らしい。調査官は数人パーティでやってきて別々に検査をおこなう。
会計検査のスケジュールと流れ
では、スケジュールを見ていきましょう。たぶん1年くらいかけて全国をまわっていくので通知月は都道府県によって全然違うのかな?
①実施の通知
調査官・検査日程・対象年度・スケジュール・提出物についての通知です。ここからスタート。検査自体は県単位でまとめて実施されますから、県庁がとりまとめ窓口となってくれます。マニュアルなども県庁が作成してくれています。アリガトウゴザイマス。検査日程は、通知から2~3か月後の5日間。
②事業量調べの回答【通知から1週間後〆】
対象事業量の一覧表や、事務所間の移動距離・時間などの情報を提出します。
③3号調書の提出【通知から2週間後〆】
3号調書は個別事業の概要と事業費などを整理した表です。施工箇所図も提出します。事業費2000万円未満は個別に調書にあげないので実質的に検査候補から外れます。よくいわれる2000万の壁ですね。まあ、そんな小さい金額規模をいちいちリストアップしてたら非効率ですからね。
余談ですが、調査官は3号調書でリストアップされた中から書面検査の案件を決めるので、工事名を奇抜なものにしていると調査官の目にとまって「なんか面白そうだからとりあえず設計書送ってもらうか」となってしまうかも。そうならないよう、工事名は特殊性を隠した平凡なものにしがち😅
④借用設計書の通知【通知から4週間後】
事前に会計検査院に送付する案件の発表がありますドキドキ(*゚д゚*)
これらが書面検査の対象ということで、実質、実地検査の対象にもなります。勝負の一週間です。送る資料は設計書、図面、構造計算書、施工写真など(事前打合せで指定があります)。院は借用設計書と呼ぶかもしれませんが、市役所側は「送付設計書」とか「持ち込み設計書」と呼んだりしますね。
⑤借用設計書の提出【通知から6週間後に必着】
④の資料を送ります。積算基準などのデータも一緒に送ったりします。
書面検査の本数は調査官1人あたり0~10本程度。もし、借用設計書が発表されなかったら、3号調書に載せた全ての対象事業を実地検査(前日とかに対象発表)までに準備しておかなければならない地獄が発生。
書面検査の案件はほとんど実地検査が行われるがこれも調査官次第かな。当日、時間足りなくて流れたりもある。つまり、なんでも調査官次第。
⑥借用設計書の返却【通知から10週間後】
返却されます。
⑦実地検査【通知から11週間後】
本番です。月曜から金曜までの5日間です。多い都道府県は期間が長いかもしれませんね。当日の対応については後述します。
⑧実施後の書類提出【通知から14週間後】
実施後の調書などを提出します。
スケジュールの数字はてきとーです。検査の仕方はかなり調査官の裁量権があるらしく異なる部分があるかもしれません…。
当日の対応とその後…
次に実地検査当日の対応の流れを説明します。
検査会場に控室が用意されていますので、そこに前日までに資料を持ち込んでおきます。そして、当日は午後からの検査予定であっても、担当たちは朝から待機しておきます。検査が前倒しになる可能性もありますからね。
座席配置と役割
会場の座席はこんな感じ↓
たぶん調査官てきには内容を把握してる人が回答してくれればよくて、県庁側がコーディネートして配置を決めてると思います。つまり県ごとの慣例的なものだと思います。
調査官
会計検査院の職員。一人で検査します。土木の専門ではない事務方が多いけど勉強してきてるし豊富な検査経験によって並みの土木技師より詳しかったりする。安全性の計算なども自分でやったりするらしい。
随行員
県庁職員。検査がスムーズに進むように配慮する進行役です。検査官のお世話係のような役割もこなします。ときには質疑応答を噛み砕いて説明したり、市役所側へ助け舟を出したりするため、土木と会検に精通したベテラン職員が配置されるようです。
書記
県庁職員(国側の立会が居る場合もある??)。受け答えの内容を記録して、情報を県内市町村に周知する役目。記録係でもあるが随行員と一緒に連絡係になることもあるみたい。もちろん市役所側にも記録係・連絡係を置いたほうがいいでしょうね。
主担当・係長・課長
市役所側の職員は任意。原則、係長級以上が受け答えするというルールを何かで見たこともありますが、実際は担当ヒラ職員がメインで答えたりします。並びは、主担当・副担当・係長とかもあると思います。
補助
質問に対して基準書の該当ページを探したり、次の回答の準備をしたりするサポート役。2列目は大事。3列目以降は書記の役割もありますね。
また、当日会場入りはしませんが、準備段階でコンサルにも連絡を入れて、根拠の確認や不足資料などの作成をお願いするかもしれません。万全を期すため、検査当日も待機してもらうことがあります。対応ありがとうございます。
現場検査
調査官次第で工事目的物を確認する検査もあります。
基本的に前日までに現場確認をする案件はお知らせがありますので、破壊検査や測量・検査道具は一式用意しておきます。現場でも請負者に机やテントは用意してもらうのと、施工延長や高さなどを計測できるようにマーキングなどの準備をしておきます。ただし、調査官次第では当日いきなり「行きます」の可能性もあるかも⁇
土木なら現場は見たほうが良いと思うんですが時間の都合もあるし1箇所まわるだけでも難しいですよね~。
といいつつ、私は現場検査に立ち会ったことがないのでよく分かりません😇😇😇
最終日は講評
最終日の午前中は各市町村からの宿題返しなど。午後は講評があります。講評ではおおまかな今回の検査結果と、今後対応が必要なものについてお話があります。
金曜の朝から講評して調査官が帰るときもあるかもしれません。東京から遠い場所とか??
宿題が残ったら…
当日、質問に対しすべて回答できたらその案件は終了です。もし、その場で回答できず「質問された件については確認します」という宿題が残ってしまったら、大急ぎで根拠や事実関係を確認し、調査官が滞在している間に回答をしなければなりません。
もし、講評までに宿題返しが終わらなければ…舞台は霞が関へと移されます。県庁から国交省へ報告が入り、3者打合せなどをやりながら調査官への回答をおこないます。それでも解決しなければ、最終的に「不当事項」などとして会計検査院が国会に報告したり、国費返還になったりします。どえらいことですね。
調査官は手厚くもてなされますが、なぜかというとクセのある調査官から言い掛かりに近い指摘をされたら後々大変だからです。だから、機嫌よく過ごしてもらうために、どうしても市役所側は過剰に丁寧に対応してしまうようです。私が体験した調査官は皆さん礼儀正しい方達でした。
受験心得
思いつくままに受験するうえで大事なことを書いてみようと思います。
・当初から会検を想定した書類作りを心掛ける。←1番大事。補助事業じゃなくても根拠をしっかり詰めとくのは当然だけどね。
・過去の指摘事項を把握しておく。会計検査院検査報告データベース | 会計検査院
・全体を俯瞰しただけでおかしい箇所に気づけるように基礎力を鍛えておく。
・チームで準備する。個人だけに任せない。
・当日は、最前列の人だけが喋る。余計なことを喋らない。不必要に検査会場を出入りしない。波風を立てないようにしましょう。
ぶっちゃけ普段の業務から真面目に取り組んでる人には↑の受験心得って必要ないかも?きちんとしたマニュアルとか受験心得は県庁が用意していると思いますので、関係者になったら必ず一読しておきましょう。
おわりに
ということで、会計検査について全体的に網羅するように書いてみました。会計検査の流れを知っておけば、なにかの役にたつかもしれませんね。
請負業者の皆様、建設コンサルタントを始め各専門業者の皆様、会計検査に対応いただきましてありがとうございます。契約目的物についての責務ではありますが、時間が経ってしまったものについても誠心誠意ご対応いただけることは大変有難いです。
履行当時、完璧に片づけていれば会計検査でバタバタすることはないんですが、金額規模が大きくなればなるほど難しくなるのも事実です。今後ともよろしくお願いいたします。
では、参考になりましたら幸いです。
コメント