アスファルトとは、石油精製の際に出る、真っ黒の油っぽい炭化水素混合物のことです。
こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
今日は土木の基本材料であるアスファルトを使った舗装について解説していきます。
初歩的なことをメインに網羅的に説明していきますので、若手技術者の方などの参考になれば幸いです。
アスファルトとは?
まずはアスファルトとは何かを説明しますね。
アスファルトとは、石油精製の際に出る、真っ黒の油っぽい炭化水素混合物のことです。
粘度の高い液体です。
ちなみに、石油アスファルトだけじゃなく天然のアスファルトもありますよ。
石油由来の油状の生成品を瀝青材と呼んだりします。土木において、“瀝青”という言葉はよく目にしますから、「あー、ドロドロなアスファルトのことだな」程度に覚えておいてください。油ですから、遮水性を生かして舗装の遮水層や接着剤、屋根の遮水シートなんかで使われています。
アスファルトに骨材(砕石、砂)とフィラー(充填剤、石粉)を混ぜたものをアスファルト混合物またはアスファルト合材と呼び、道路の舗装材として用いているものになります。世間一般で「アスファルト」と認識されているものですね。
アスファルト混合物はまたの名を「アスファルトコンクリート」といわれていて、私たち土木技師は「アスコン」と呼んだりします。呼び名が沢山あって混乱しますね(;^ω^)
アスファルト+砕石+砂+石粉
=アスファルト混合物
=アスファルト合材
=アスファルトコンクリート(アスコン)
実は、コンクリート(混凝土)というのは文字通り、“骨材と何かを混ぜてガチガチに固めた土”のことなんです。アスファルト舗装もコンクリートの一種なんですよ。一般的にはセメントコンクリート(セメントと混ぜた白っぽいやつ)を「コンクリート」と呼びますね。
アスファルト舗装が選ばれる理由(メリット)
道路の舗装は、アスファルト舗装、コンクリート舗装、インターロッキング舗装、タイル舗装、砂利舗装などなど、多くの種類があります。
では、それだけ選択肢が多い中で一般的にアスファルトが選ばれるのはなぜでしょう??
私なりに思いつく理由を挙げてみます。
施工がしやすい(施工性が良い)
なんといってもこれですね。基本的に1日で施工が終わります。既設舗装を剥いで、新しい舗装を打って、温度が下がったら開放。短時間での施工が可能です。
コンクリート舗装では材料が固まるまでに最低でも2日くらいは掛かりますし、車両の通行を再開できるのは1週間程度は欲しいところです。
インターロッキングやタイル舗装は、日当たり作業量が大きくないので、一気に仕上げるのは難しいという問題があります。
また、道路には水道、下水道、電力、ガス、通信の管路が埋設されていますから、よく掘り返すんですよね。そのときに取り壊しやすいのも断然アスファルトですし、復旧に関しても先述のとおりアスファルトがしやすいわけです。
材料が豊富で単価が安い
舗装打ち換え(厚さ5cm)で4000~6000円/m2(経費、税込み)
一般的には安いと言われています。
そうかな?と個人的には思いますが、たしかにインターロッキングやタイル舗装は手間も材料も高額なので、それと比べると安いのかなと思います。コンクリート舗装と比べると施工単価は特別安いとは思えません。
ちなみに、アスファルトは再利用システムが確立されています。破砕した旧舗装をそのまま捨てるなんてことはまずありえません。官公庁の発注工事では再生材を使うのが主流で、ほぼ100%再利用してると思ってもらっていいです。処理場で再生化されて骨材や砕石になります。材料が枯渇することはありえませんね。意外にエコですよね。
走行性がいい
舗装はどんなものでもいずれは劣化していくわけで、コンクリートなら破損して段差ができたりしますし、タイル舗装などもガタガタな状態になります。それと比べるとアスファルトの場合は、やわらかいので専門的に言うとたわみ追従性があり、タイヤの荷重を受け止めてうまく受け流してくれるので、いきなりバキっと割れて欠けたりはしませんし(欠けることもありますが)、車両からしても反発を感じずに運転できます。
意外かもしれませんが、土木技術者からするとアスファルトは“やわい”という認識なのです。
また、すべり抵抗性もありますので、タイヤのグリップが効き、曲がったりブレーキがしやすいというメリットもあります。
アスファルト舗装のデメリット
メリットのついでにデメリットも挙げておきます。
やはりコンクリート舗装と比べると耐久性が低いという点があります。クラック(ひびのこと)がすぐ入るし、やわらかいせいでわだち掘れもできてしまいます。こまめなメンテナンスが必要です。
また、温度が高くなるというデメリットも地味にありますね。真夏にアスファルトを触ると火傷しそうなくらいアチアチです。地球温暖化の一因でしょこれ。
アスファルト舗装の種類
世界中で使われている材料ですので、日々新しい技術や商品開発がされており、多くの舗装工法が存在します。
アスファルトの種類としては、大きく分けると常温合材と加熱合材があります。
常温合材は、簡易的な補修で使ったり、宅地のDIYでも使えるものです。職員で対応する補修は常温合材で行います。
一方、加熱合材は、プラントから170℃くらいの高温で運び込みアツアツなまま施工して、踏み固めながら、冷やして固めるもので、一般的な道路工事や駐車場整備で使われます。
加熱合材を使った舗装には、下記のようなものがありますよ。
A.性能を向上させた舗装
- 改質アスファルト舗装
- 砕石マスチックアスファルト舗装
- 大粒径アスファルト舗装
- 半たわみ性舗装
- 熱硬化性アスファルト舗装
- ロールドアスファルト舗装
- グースアスファルト舗装
B.機能を付加した舗装
- ポーラスアスファルト舗装
- 遮水型排水性舗装
- 透水性舗装
- 弾力性舗装
- 明色舗装
- カラー舗装
- トップコート工法
- ブラスト処理工法
- 凍結抑制舗装
- 路面温度上昇抑制舗装
- 透水性樹脂モルタル充填工法
- リフレクションクラック抑制舗装
などがあります。Bは機能付加なので、Aの舗装にBを組み合わせるということもできます。(全部がそういうわけではありませんが)
主に使う舗装はこの中の数種類だけです。ひとつずつ解説していると論文が書けてしまうので、今回は割愛します。
アスファルト混合物の材料としても分類できるんですが、それも別記事で。すみません。
アスファルト舗装の耐用年数
だいたい10年くらいで舗装の傷みが目立ち始めます。
交通量が多ければ10年でボロボロですね。交通量が少なければ20年くらいもつイメージですし、できればそれくらいを目指したいです。
(※交通量が多いとは「日当たり交通量が5000台以上」をイメージしてます。うちの市ではあまりありません。県管理の県道とかですね。)
実は舗装の劣化速度は、路床の健全性が大きく影響します。
逆に言うと、舗装設計するときに、路床の状態を加味しつつ、目標の耐用年数を設定するんです。「設計期間」と「信頼度」というものを設定してライフサイクルコストから舗装構成を考えます。自治体ごとに舗装計画などで規定していると思うので確認してみてください。
まあ、難しい話で書きたくないので一般的には10~20年と思ってもらったらいいかな(*´ω`)σ ヨシ!
アスファルト舗装の価格(単価)は?
アスファルト舗装材は、例えば再生アスファルト混合物(13㎜)なら9,000~13,000円/tくらいです。地域によって全然変わりますね。
施工費は、舗装打ち換え(厚さ5cm)で4000~6000円/m2(経費、税込み)くらいだと思います。
施工条件によってこれも大きく変わるのであくまで参考値として(;^ω^)
アスファルト舗装の構成と厚さ
そもそも、舗装構成の話をする上で、一度整理しておく必要がありますが、
一般的な道路とは、路床+路盤+表層基層で出来ています。
- 路床=砂、土
- 路盤=砕石層
- 表層基層=アスコン層=アスファルト混合物
“舗装”とは路床の上に構成される層のことを言います。つまり、路盤も含まれるわけなので、表層基層+路盤のことを“舗装”といいます。ここでいう表層が今回話しているアスファルト混合物の部分ですよ。
路盤は砕石、砂利などで構成される部分のことです。その上にアスファルトで表面を覆う感じですね。
重交通路線の場合はアスコン層を増やして、表層+基層+上層路盤+下層路盤となったりします。
表にするとこんな感じです。
名称 | 主な材料 | 厚さ |
---|---|---|
表層 | アスファルト混合物(密粒度) | 5~10㎝ |
基層 | アスファルト混合物(粗粒度) | 5~10㎝ |
上層路盤 | 再生粒度調整砕石 | 5~20㎝ |
下層路盤 | 再生クラッシャーラン | 10~20㎝ |
表層の最低厚みは5cmとされています。(舗装設計施工指針)
載荷時の最大せん断応力に耐えられるように設定されているんですが、施工性も考慮されていると思います。2cmとかだとポロポロ剥げちゃいそうですもん。田舎道は4cmにしている自治体もあります。
基層も普通は5cmですね。
もっと耐久力が必要なら、間に中間層5cmを設けて、アスコン層15cmとしたりしますよ。県道や国道ならこういう重層な舗装になるかもしれませんね。
舗装構成の詳しい設計方法(TA 法)について解説しました!↓
アスファルト舗装の比重(密度)とは?
アルファルトの標準的な比重は2.35です。
比重とは、水(1 g/cm3 )に対する密度の比ですから単位がありませんが、密度と同じと思ってOKです。
車道アスファルトの密度(単位体積重量)は2.35t/m3です。アスファルト舗装の場合は、ほぐされた合材を敷いて固めるので、締め固める程度によって密度が変わってきます。つまり、アスファルト舗装の標準的な締固め後密度が2.35t/m3ということです。
歩道のアスファルト舗装の標準的な締固め後密度は2.20t/m3です。歩道の方がゆるめでいいということですね。
※特殊合材の場合は数値が変わりますよ。
この数値を何で使うかというと、①品質管理と②処分量の算出で使います。
①工事完了後にしっかり締固めているか、密度を測定して調べます。
②積算の話ですが、車道舗装を10m3破砕したとすると、処分量は10×2.35=23.5tになります。このように、処分費の単位換算のために密度(単位体積重量)を使います。
2.35と2.20は常識なので覚えておきましょう。
品質管理の話については↓の現場密度試験の記事で解説しています!
参考になる図書(設計要綱)
アスファルト舗装舗装について、日本道路協会がいくつか基準書となる本を出しています。「設計要綱」は古くてあまり読んだことがありません。
実際の施工について勉強できる本も沢山あるんですが、私は職場にあったこちらの本を読んで勉強しました↓↓
おわりに
アスファルト舗装について、色々と書いてみました。
土木初心者が疑問に思うところを回答したつもりですが、まだまだ不十分ですよね。
詳細については個別記事にしたり、舗装工事の施工手順なんかも書いてみたりしたいですね。
勉強することが多すぎて、1つの記事にするのに時間が掛かります(´・ω・`)
頑張ります。
では、今日はこのあたりで失礼します。
ありがとうございました。
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