舗装の構造設計(TA法)をわかりやすく解説

道路

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

舗装の厚さってどうやって決められているか知っていますか?

舗装構造を設計するときはTA法という方法が用いられています。

TAとは等値換算厚と呼ばれ、舗装全体の厚さをすべて表層基層用の加熱アスファルト混合物に置き換えたときの厚さのことです。設計条件から必要なTAを求めて、そのTAを満足するように各層の厚さを設計する方法がTA法です。

ここでは、このTA法による舗装厚の設計方法についてわかりやすく解説します。

なお、舗装設計には路面設計と構造設計がありますが、ここでは路面設計は割愛します。

もっと簡単な舗装の話はこちら↓の記事に書きました。

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ほとんどの自治体でTA法を採用している

まずはじめに、根拠の確認をしましょう。

『舗装の構造に関する技術基準』という国交省の通知に具体的なTA法による設計方法が規定されていて、自治体によって規定はさまざまですが、ほとんどの自治体でこの技術基準にならいTA法を採用していると思います。

ですから、舗装を設計することになったらまず『舗装の構造に関する技術基準』を確認してください。ネットにもありますし、ページ数もそんなに無いのですぐ読めます。

また、国の技術基準以外にも、日本道路協会が発刊している『舗装設計便覧』『舗装設計施工指針』にもTA法が書かれていたと思います。

自治体が具体的に設計指針やマニュアルを策定していることは少ないのですが、もちろん皆さんの自治体で独自マニュアルがあるのなら、それを最優先にしてください。ここでは新潟県と新潟市の『舗装マニュアル』も参考にしながら解説しようと思います。図表は新潟市の舗装マニュアルから引用させてもらいます。

TA法とは

TAとは路盤・路床も含めた舗装の厚さを密粒度アスコンに置き換えた厚さで、等値換算厚といいます。単位はcmですね。
TA法とは、設計条件から必要な等値換算厚TA‘を求めて、TA‘以上の値となるように各層の厚さを決めていく方法です。

現場舗装に必要な等値換算厚TA‘ は次の式で求められます。

信頼度90%の場合 TA‘ = 3.84N0.16/CBR0.3
信頼度75%の場合 TA‘ = 3.43N0.16/CBR0.3
信頼度50%の場合 TA‘ = 3.07N0.16/CBR0.3

TA‘ : 必要等値換算厚
N : 疲労破壊輪数
CBR : 路床の設計CBR

こんな感じの経験式となっております。

ご覧のとおり、必要な条件は、信頼度、疲労破壊輪数N、路床の設計CBRの3つですが、疲労破壊輪数は設計期間と舗装計画交通量に応じて決まりますので、実質的に必要な条件は、

①信頼度
②設計期間
③舗装計画交通量 T
④路床の設計CBR

の4つということになります。

設計条件について

詳しくは省略しますが、設計条件をひとつずつ説明します。

信頼度

信頼度は、「舗装が設定された設計期間を通して破壊しない確率」のことで、発注者が定めるものです。一般的に90%です。道路区分などで50%、75%、90%の3パターンを設定している自治体もあります。

設計期間

設計期間は「交通による繰返し荷重に対して、疲労破壊によりひび割れが生じるまでの期間」です。こちらも道路管理者である発注者が定めます。

一般的に10年か20年です。20年のほうが高級な舗装になるということですが、そのぶん修繕回数が減るのでライフサイクルコストは抑えられるとされています。道路区分で10年・20年を使い分けてることもあるみたいです。

舗装計画交通量

舗装計画交通量Tはちょっと難しいんですよね…。将来の予測だから微妙というか…。ざっくり言うと2パターンあって、道路の計画交通量が決められているときは「計画交通量から求めた大型車交通量(台/日・方向)」のことで、供用道路の補修などのように計画交通量が設定されていない場合は、「道路交通センサスから推計した大型車交通量(台/日・方向)」のことです。

いずれにしても伸び率などで補正しますが、伸び率は各発注者が定めています。定めてないこともあるのでコンサルと協議して何らかの根拠をもって設定することになると思います。簡易的な設計の場合は道路交通センサスの値をそのまま使うこともあるでしょう。

路床の設計CBR

路床の設計CBRは、現場の路床のCBR試験をして求めたCBRから設定します。路床の支持力はCBRによって決定するんですが、路床と舗装には密接な関係性があり、路床が悪いと舗装もすぐにひび割れてしまいます。なので、路床のCBRは舗装の厚さを決定する大事な要素だといえます。

現況がCBR3%未満なら原則改良が必要ですが、3~6%もかなり悪い。そこそこ交通量がある道路なら設計CBRとしては8か12ほしい、幹線道路であれば20ほしいけど12で妥協みたいな。色々経済比較などして改良も選択肢に入りますね。

新潟市の例は次のとおり。

疲労破壊輪数

さきほどチラッと書きましたが、疲労破壊輪数は設計期間と舗装計画交通量から求められます。『舗装の構造に関する技術基準』では、舗装計画交通量に応じ、次の表の右欄に掲げる値以上とするものと規定されています。

舗装計画交通量
(単位 1日につき台)
疲労破壊輪数
(単位 10年につき回)
3,000 以上35,000,000
1,000 以上3,000未満7,000,000
250 以上1,000未満1,000,000
100 以上250未満150,000
100 未満30,000

なお、上表は舗装の設計期間が10年の数値なので設計期間が20年の場合は2倍した数値になります。

具体的にTA‘ を計算してみよう

やっと設計条件の説明が終わりました…。

これらの設計条件から必要等値換算厚TA‘ を求めて目標TA を整理したものがこちらです↓新潟市バージョンです。新潟市では交通区分によって信頼度を分けていますね。

じゃあこれが正しいのか具体例でTA‘ を計算してみましょう。

具体例1
イメージ:郊外の市道
N(舗装計画交通量(台/日・方向):100≦T<250)
設計期間20年、信頼度75%、設計CBR8

TA‘ = 3.43N0.16/CBR0.3
=3.43×(150000×2)0.16/30.3
=13.83
→目標TA 14

具体例2
イメージ:幹線道路
N6(舗装計画交通量(台/日・方向):2,000≦T<3,000)
設計期間20年、信頼度90%、設計CBR20

TA‘ = 3.84N0.16/CBR0.3
=3.84×(7000000×2)0.16/200.3
=21.75
→目標TA 22

実際は具体例1のように交通量が微妙な道路は舗装計画交通量の設定が非常に難しいし、そもそも交通量が少ない道路を新規で作ることはあまり無いと思います。

カミノ
カミノ

舗装修繕のときは構造設計せずに表層のみ打ち換えて終わりです。

等値換算係数とは

目標となるTA がでましたので、次は各層の厚さをどのように割り振るかを設計していきます。

TA は密粒度アスコンだったとしたらこの厚さです、という値なので、もっと低級な素材である路盤材だったら係数をかけて小さくなります。その係数が等値換算係数です。

材料のグレードによって定義されています。

代表的なところをみると、たとえば粒調砕石は0.35となってますが、これは粒調砕石を10cmうったとしても密粒度アスコンの3.5cm分にしかなりませんよということを意味します。それだけしか疲労破壊に対する抵抗性をもっていないのです。

まあそのぶん値段は安いですけどね。

各層の厚さ×等値換算係数で各換算厚を出して、すべて足し合わせたものを等値換算厚TA‘ とします。
計算式にするとこのようになります。

TA‘:= Σ ai・hi

TA‘:等値換算厚(cm)
ai:舗装各層に用いる材料・工法の等値換算係数。
hi:各層の厚さ(cm)

路盤材を何をつかって何cmにするかは自由です。組み合わせは無限大ですね(笑)あとは経済比較をして、各層の材料と厚みを決定します。

カミノ
カミノ

「へ~じゃあ安い材料を厚めに打てば一番安いんじゃない?」と思うかもしれませんが、深くなれば掘削工にお金が掛かるし、交通開放が遅れたり、無駄な建設発生土を出すのも最近は避けられる傾向にあるので、じつは単純な話ではないんですよ。

制限がいくつかある

各層の組み合わせは自由、無限大というふうに言いましたが、実際はちょっと制限があります。現場毎にもあるかと思いますが、ここでは一般的なものだけご紹介しておきます。

表層と基層を加えた最小厚さ

表層と基層を加えた最小厚さが規定されています。

理論上は、どんなに交通量が多くても表層5cmだけ打って下に安定処理とかの強い材料を何十センチも打てば必要TA を満たすかもしれません。しかし、さすがにそれはマズいですよね。

『舗装の構造に関する技術基準』によると、下表のとおり。

舗装計画交通量(台/日)表層と基層を加えた最小厚さ(cm)
T<2505
250≦T<1,00010(5)
1,000≦T<3,00015(10)
3,000≦T20(15)

注1:舗装計画交通量が特に少ない場合は、3cmまで低減することができる。
注2:上層路盤に瀝青安定処理工法を用いる場合は、( )内の厚さまで低減することができる。

ちなみに、たとえば大型車交通量がほぼ無い道(T<40)なら5cmうつ必要すらないってことで4cmとしている自治体もあります。そのあたりは道路管理者ごとにルール設定してるみたいですね。

路盤各層の最小厚さ

路盤各層の最小厚さも規定されています。砕石って数センチありますし、あまりに薄すぎると十分に締固めできないとか、性能を発揮できないってことですかね。

『舗装の構造に関する技術基準』によると、下表のとおり。

工 法・材 料一層の最小厚さ
瀝青安定処理最大粒径の2倍かつ5cm
その他の路盤材最大粒径の3倍かつ10cm

たとえば、M-25なら最小10cm、M-40なら最小12cmということですね。
これを踏まえて標準の舗装構成を12cmに設定している自治体が多いと思います。キリのいい15cmにしている自治体も多いですが。

道路管理者ごとに標準の舗装構成を作ってる

というわけでおおまかに説明してきましたが、毎回計算して経済比較していたら大変ですね。なので、このTA法を踏まえて、ほとんどの道路管理者は標準の舗装構成を作ってると思います。マニュアルや内規に規定されていたり、暗黙のルールだったりしますが。

新潟市の例で、さきほどの具体例1,2と同じ条件について見てみましょう。

具体例1

設計CBRが8だとすれば、目標TA は14です。表層5cm、粒調砕石15cm、クラッシャーラン15cmの計35cm(TA 14cm)が標準の舗装構成だそうです。

具体例2

設計CBRを20と設定したので、目標TA は22でした。表層5cm、基層5cm、アスファルト安定処理5cm、粒調砕石15cm、クラッシャーラン12cmの計42cm(TA 22.25cm)が標準の舗装構成となっています。

経済比較をしたり、総合的に判断してこの舗装構成にしていると思われます。

もし、このような標準の舗装構成が暗黙知のように扱われていて前例踏襲で不安なら、実際にTA 計算や経済比較をしてみたらいいと思います。設計条件の設定が大変なことに気づくと思います(;・∀・)

では長くなりましたが、だいたいの概要が分かってもらえましたかね?

他にも実務に役立つ情報を書いていこうと思います。ではまた。

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