こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
ここでは、河川区域についてわかりやすく解説しようと思います。
河川の管理区間については別記事で説明しております↓
関連記事:河川の分類と管理区間
河川区域とは?
河川区域は、水を安全に流すために必要な河川の敷地のことです。また、河川区域には河川法が適用されます。
基本的には堤防と堤防に挟まれた区間とされることが多いと思いますが、自然に近い堀込河川などは目印となる構造物がなかったりして現地で見分けられないことがよくありますね。
正確には河川法第6条で次の3つが河川区域だと規定されています。
①は水が流れる低水路のことですね。1号地と呼ばれます。
②は堤防や護岸のことです。2号地と呼ばれます。
③は高水敷などのことで、3号地と呼ばれます。
①と②は見た目から判断できるよね?ってことで指定を必要とせず、当たり前に河川区域とみなされます。③だけは河川管理者の指定が必要です。例えば遊水地なども③に含まれます。また、霞提のように堤防が切れている場合はどこまで河川区域に含めるか微妙なところなのですが、洪水を受け入れる土地が民有地であったとしても河川区域に指定される可能性があります。他にも色々なケースがあるようです。自然公物である河川を管理する立場としてひとつ覚えておいてほしいのは、河川区域の境界と国有地の境界は必ずしも一致するものではないということ。(ここではざっくり解説なので、自然公物とは何なのか?自然とは何なのか?河川管理の歴史・河川法の変遷などは置いておきますね。)
さて、このように河川法が適用される大事な区域ですが、実務上は管理部署がすべてを把握できていなかったりします。なぜなら、河川は自然公物なので上流端と下流端だけ決めてあり、(流水断面は重要ですが)河川区域についてはそれほど重要視されていないからです。民有地のように土地の売買や固定資産税などが無いから? しかも、土地関係の資料が古かったり、河川改修されたのも結構昔だったりして、情けない話ですが過去資料をきちんと整理・保存されていないこともあるのです…。
市町村の管理している河川なんて…正直あまり河川区域はわからない状態です(行政あるある)。何度か都道府県とも仕事したことがありますが都道府県でも保存状態は………のときがあります。
河川区域を把握できていない場合は、新しく部署に来た職員や河川区域を使おうとしている占用者が困っちゃいますよね。少しずつ河川区域を確定してデータ化していきたいですね。
河川区域内での行為制限
河川区域では、いろいろと行為の制限があります。
例えば…
河川の水を取水すること(河川法第23条)
河川を排他・独占的に使用すること(河川法第24条)
河川の砂やヨシ等を採取すること(河川法第25条)
河川に工作物を設置すること(河川法第26条)
河川の土地の形状を変更すること(河川法第27条)など
例えば、橋梁関係の仕事をするときは(工作物設置する場合は)24条と26条申請を出すことになります。これを占用許可申請と呼んでます。
関連記事:使用と占用の違い
河川保全区域とは?
河川区域とべつに河川保全区域というよく分からないマイナーな区域があります。
河川保全区域とは、堤防や護岸などを守るために、居住地側に一定の制限を設けている区域のことです。
もし堤防の近くで自由に掘ったり構造物を作られたら、堤防の荷重バランスが崩れたり、パイピングしたり、止水性のある構造物の設置により洪水時の堤防の浸潤面が上昇したりして堤防が壊れやすくなる可能性があります。なので、掘削などを制限しているわけです。
民地であっても行為制限をかけられます。河川法は強力なのです!(`・∀・´)エッヘン!!
根拠は河川法第54条で、制限内容は55条に載ってます。
河川保全区域はすべての河川にあるわけではなくて、必要な河川の必要な区間に設定されます。
河川保全区域の幅は何m?
また、幅も(建前上は)必要な幅だけ設定されています。54条に書いてある通り原則50mをこえず、大体5~40mですね。10m、18m、20mとかが多いのかな? なぜ18mなのかというと昔の10間が約18mだからだと思います。河川関係の法規は古いので大正・昭和初期のルールがそのまま残ってたりするんです…。
第4項に書いてあるように指定したときは公示することになってますので、自治体の例規集で調べることができます。ただし、条文が古くて読めなかったりそもそも例規に載ってないことがあるかもしれませんので、業務で必要な時は国・自治体の河川課や河川事務所に聞いてみましょう。そんな難しい話でもないしWebサイトに全部載せてくれたら良いんですけどねー。
例えば木曾川水系の河川保全区域はこのようになっています↓
都道府県ごとにルール(告示)で決められているから、都道府県によって全然違うことが分かると思います。
市役所のWebサイトでも分かりやすくまとめてくれるところがあります。例えば、名古屋市のWEBサイトでは、名古屋市内で河川保全区域が指定されている河川が載っています。
種別 | 河川名 | 巾 | 管理者 |
---|---|---|---|
一級河川 | 庄内川 | 18メートル | 国土交通大臣 |
一級河川 | 矢田川(宮前橋から下流端まで) | 18メートル | 国土交通大臣 |
一級河川 | 矢田川(香流川合流点から宮前橋まで) | 18メートル | 愛知県知事 |
一級河川 | 新川(庄内川合流点から下流端まで) | 18メートル | 愛知県知事 |
一級河川 | 堀川(朝日橋から大瀬子橋まで) | 18メートル | 名古屋市長 |
二級河川 | 天白川 | 18メートル | 愛知県知事 |
二級河川 | 日光川 | 35メートル | 愛知県知事 |
二級河川 | 蟹江川 | 18メートル | 愛知県知事 |
ご覧の通り、一般的に準用河川は指定されません。
とっても分かりやすい、さすが名古屋市です。全自治体が見習ってほしいですね(*´ω`*)
河川保全区域内での行為制限
河川保全区域では、土地の掘削や工作物の新築などが制限されます。
例えば、住宅を新築するとき、排水管を埋設するとき、看板(支柱基礎)を設置するときなどは許可が必要になることがあります。
一応適用除外というのもありまして、以下に該当する行為については許可を受ける必要はありません。
1.耕耘(農耕目的に限る)
2.以下5項目すべてに該当する行為
河川区域から5m以上離れていること
盛土は高さ3m以内であり、かつ堤防に沿った長さが20m以内であること
掘削は深さ1m以内であること
設置する物件は堅固な工作物でないこと
※堅固でない工作物…木造、軽量鉄骨造
※堅固な工作物(要申請)…コンクリート造、石造、れんが造、重量鉄骨造等
設置する工作物から水が浸透するおそれがないこと
※水が浸透するおそれのある工作物(要申請)…貯水池、水槽、井戸、水路等
(河川法施行令第34条)
このように軽微なものなら、「あーその程度なら許可申請は必要ありませんよ」となることもあります。↑は愛知県のルールですが、具体的には河川事務所によって少し施行令の解釈が違うことがありますので、もし河川保全区域で何か作業をする予定なら、まずは図面などを用意してから相談してみましょう。
河川保全区域の2Hルールについては別記事で書きたいと思います。
参考になりましたら幸いです。
コメント