こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
ここでは自治体の予算の「流用」を解説します。
予算の流用とは?
予算の流用とは、補正予算を編成することなく、ある支出科目を減らし、その分を他の支出科目の増額に充てることを言います。
予算をあっちからこっちに移すことですね(/・ω・)/エイヤ
例えば、「○○河川の護岸工事で500万円足りなくなったので、××河川の調査委託の予算を500万円減らして、○○河川の工事費に充てる」みたいなことです。
表にすると次のようになります。
事業名 | 節 | 当初予算 | 流用後の予算 | 増減 |
---|---|---|---|---|
○○河川護岸工事 | 工事請負費 | 5,500万円 | 6,000万円 | +500万円 |
××河川の調査委託 | 委託料 | 500万円 | 0円 | △500万円 |
この場合、××河川の調査委託は0円になってしまうので、現年度の調査委託はできません。
どんなときに流用するの?
どんなときに流用するのかというと、今説明したみたいに予算が足りなくなったときですね。
流用みたいな応急的なお金の穴埋め対応ができなければ、こわくて公共事業はできません(;´・ω・)
実際には逆に、計画が頓挫して事業費がまるまる浮いてしまうときとか、思っていたより安い工事費で済んだ場合にも流用をします。余ったお金は財政上は無理に使う必要はないのですが、現場レベルでは使いたい要望箇所がたくさんあるし、要求してついた予算を使い切らないと「あれ?この部署は予算いらないんだな」と思われて翌年度からカットされてしまうので、諸々の事情で「今年度使い切っちゃおう!」「使えるところないか?!」と躍起になって計画がないままお金を使うこともあります(;´・ω・)
補正予算との違い
予算に変更を加える時は、議会の議決を受ける必要があります。これが補正予算と呼ばれます。
一方、流用は議決を受ける必要はありません。流用は補正予算を編成せずに、例外的に予算を横流しできる措置なのです。
ただし、みんなが好き勝手に流用してしまうと決算がぐちゃぐちゃになってしまうので、予算の補正で会計上の「繰戻し」処理をしたりしますよ。
流用のルール
つぎに流用のルールです。
皆さんの自治体とちがうところがあるかもしれませんので参考程度に読んでください(;´・ω・)
財政課の合議が必要
予算の流用は部局の判断でおこなうことができます。ただし、財政課の合議が必要となります。これは自治体の財務規則に書いてあるはずです。(自治体によっては合議不要)
財務会計に反映されるまで数日から数週間かかりますので、「予算が足りなくなった!明日つけてほしい!」は通用しません。注意しましょう。
例えば札幌市の規則では…
支出負担行為より先に行う
当たり前のことですが、支出負担行為より先にしないといけません。
予算措置をしたうえで支出負担行為でロックするようなイメージですね。予算をごまかして契約締結などをしてはいけません。
支出負担行為より先、ということは当然ながら出納整理期間には流用はできません。緊急で契約締結の書類手続きを後付けになるとしても、支出負担行為は3月中にしておきましょう。そんなことあるか分からんけども(;´・ω・)
執行科目の中だけ流用できる
補正予算を編成しないということは、つまり、議会の議決の対象ではない「目」と「節」だけしか変更できません。
言い換えると、「似たような目的のために」しか流用できないということ。
原則は「款」と「項」の変更はできませんよ。
款・項・目・節についてはこちらの記事をどうぞ↓
例をいくつか挙げてみますね。
同じ「項」のなかで移動させる。これは地方自治法的にはOKです。ハードルはめっちゃ高いですけど。
ただし、異なる目間の流用を認めていない自治体も多くあります!財務規則だけでなく詳細ルールを定めている「通知」を確認してください。
一方、同じ「土木費」の「工事請負費」であっても、例えば、河川部門と公園部門では目的がまったく違いますから予算の流用は認められません。「項」が違えば流用はできないということ。
この場合は、流用ではなく「補正予算」で対応します。
また、なるべく同じ性質の予算を使うべきですが、異なる「節」の「工事請負費」から「委託料」への移動も認められます。同じ「款・項」内ならね(*’ω’*)
ただし、自治体によっては「工事請負費」や「委託料」は特別扱いされ、流用が認められていない場合があります!注意しましょう!
ちなみに、款項目節がぜんぶ変わらない場合は「流用」ではなく「ただの予算移動」になります。手続きは「再配当」とか「配当替」と呼んだりしますね。事業間の配当替なのでハードルは低い、というか簡単にできます。さらに事業まで一致してるなら、そのなかの工事間の移動は各事務所・部署内だけで調整可能です。
この場合は、財政課の合議が必要ありません。
まずは、目内だけで足りるように検討しましょう。
流用元には流用できなくなる
ある支出科目から流用したら、その支出科目には流用できなくなります。だって、お金が不要だから流用できたんですよね?もう予算はいらないはずです。
例えば、同じ目の「工事請負費」から「委託料」に流用した場合、その「工事請負費」にはどの節からも流用できなくなります。
2月補正で流用はリセットされますので、どうしても必要なときは3月の議決後に執行することになりますね。
流用は11~1月に締め切られるかも
当初予算の流用や移動は、前もって締め切られることがあります。スケジュールや補正予算の有無は自治体によってまったく違いますが。
大きい自治体になればなるほど予算規模(事務量)が多くなりスケジュールは早くなります。
そのあとは、2月補正後しかできなくなるので、3月末の支払い時期に全体の調整が計られることになります。どれほどわちゃわちゃになるかご想像できるかと思います(;´・ω・)
ということで、早めに金額を確定させましょう。
年度当初に事前協議や、見積もり・積算・発注をしましょうね。
おわりに
ということで、予算の流用について、ざっくりと解説してみました。
交付金も流用できますけど、説明が長くなってしまうので別の機会にしようと思います。
地方自治法と財務規則だけでなく、市区町村の内部ルールによって予算執行の取り扱いが決められています。私の市役所とはちょっと違ったりするかも。あくまで参考にね(*´ω`*)
流用はできるできると書いてますが、結構時間と労力がいります。必要最低限におさえましょう。
予算解説シリーズは「予算管理」カテゴリーにまとめています。よかったら他の記事もどうぞ。
では今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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