こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
民法では、口約束でも「契約」となることは皆さんご存知かと思います。しかし、自治体は厳正に契約締結をするために、口頭だけの契約は認められておらず、契約書を作成することになっています。これが自治体の原則です。
ただし、原則には例外がつきもの( ゚Д゚)
実は、契約書を作らなくてもいいときがあります。
今日は、契約書の作成を省略できる場合と、省略できない場合を説明します。
契約書を省略できる場合
すべての契約について、契約書を作り、お互いに記名押印するのはすごく大変です。まあ現実的には可能なんですが、人的コストが掛かりすぎて無駄が多い!
そこで、小さい案件については、契約書の作成を省略することが認められています。
この省略ルールは自治体によって多種多様で、契約事務規則や、財務規則で定められていますが、具体的には次のような場合です。(あくまで一例です)
実際の自治体の規則も見てみましょう。
例えば、栃木市の財務規則にはこのように規定されています。
(契約書の作成を省略することができる場合)
栃木市財務規則
第87条 次の各号のいずれかに該当する場合は、前条の規定にかかわらず、契約書の作成を省略することができる。
(1) 工事請負契約でその契約金額が100万円未満であるものにつき、指名競争入札又は随意契約の方法による契約の場合
(2) 工事請負契約以外の契約で第83条に定める額以下であり、かつ、登記又は登録の手続を必要としないものにつき、指名競争入札又は随意契約の方法による契約の場合
(3) せり売りに付する場合
(4) 物品を売り払う場合において、買受人が代金を即納してその物品を引き取る場合
(5) 前各号に掲げるもののほか、市長において特に契約書を作成する必要がないと認めるとき。
栃木市では、100万円未満の工事請負契約で、指名競争入札と随意契約のものは、契約書を作らなくていいみたいですね(*’ω’*)
契約書を省略する場合は、請書を提出してもらいます。
その他にも、建設工事以外で、施設や製品のかんたんな修繕とかは、見積書(見積合わせ)だけで契約できたりします。
じゃないと、施設系の維持管理とか大変すぎて(ヾノ・∀・`)ムリムリ
契約書の作成を省略できる場合の提出書類 – 栃木市ホームページ (tochigi.lg.jp)
このような少額案件のルールは細かく決まっていますので、自治体の契約事務規則や財務規則、手引き(マニュアル)をよく読んで実施しましょう。
契約書を省略できない場合
契約案件が軽微なもの、契約金額が少額のときだとしても、契約書を省略できない場合がたくさんあるので注意してください。
こちらもあくまで一例ですが、例えば建設工事の契約がわかりやすいですね。
建設工事では、建設業法で、お互いに対等な立場で書面をもって契約締結することが義務付けられています。これを受けて、契約書の作成を義務付けている自治体があります。ただし、契約書じゃなくてもいいので、さきほどの栃木市のように、少額工事は契約書を省略して「請書」で済ます自治体もあります。建設工事の場合は、相互に書面交付を行うルールになっていますので、請書を徴取するだけではいけません。注文書のような意思表示を書面で行わないと法令違反になりますね。
ここの解釈は微妙ですね(;´・ω・)
このように、建設工事の場合は、そこまで事務作業が減るわけではありませんので、結局契約書を交わした方がいいのでは?と思います( ゚Д゚)
(建設工事の請負契約の内容)
建設業法
第19条
建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。(略)
その他にも不動産の売買なんかも些細な案件ではないので、契約書を省略しちゃダメよというルールになっているようですね。
こんな感じで、各法令で縛られていたり、ガチガチに書面でやりとりしてないと後々トラブルが起きそうな案件は契約書を省略できません。
民間の契約はどうなってるの?
ちなみになんですが、民間の工事請負の契約はどうなってるんでしょうか?
公務員でも、よく下請けの契約を見ると思います。元請会社と下請会社の間の民間契約です。
民間契約も建設業法に則って契約締結しますから、考え方は公共工事(自治体の契約)とまったく同じですが、契約書を省略する場合が多いと思います。
おおまかに分けると、次の3パターンに分かれます。
1.請負契約書
2.注文書と請書+基本契約書
3.注文書と請書+基本契約約款
建設業法で、記載すべき事項が決まっていますので、それらを網羅してて、あとはお互いに書面を交わしていれば大丈夫というわけです。
これは建設業法による工事全般のルールなので、公共工事でも民間工事でも同じなのです。
私たち監督職員は、元請業者がしっかり下請けと書面で契約をしているかを確認しなければいけません。
施工前に下請け契約書類の写しを提出してもらい、記載事項を施工体制台帳と合わせてチェックしましょう。
では、今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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