こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
みなさんICT施工してますか??
私は別自治体が主催してくれたICT建機の試乗会とドローン体験会に参加したことありますので、その経験も踏まえ、身近になってきた土木分野におけるICT技術について、大まかに概要と工事の流れを説明したいと思います。
ICTとは何か?
最初に用語の説明をします。
ITとは?
IT(Information Technology)とは、コンピュータとネットワークを利用した情報技術のことです。
ITという言葉は、IT基本法が制定され、コンピュータが企業や家庭に急速に普及した2000年頃から使われるようになりました。
私が小中学校のときもあったような気がしますし、高校の情報の授業のときにはメインコンテンツとして語られていました。
ICTとは?
ICT(Information and Communication Technology)とは、ITにコミュニケーションが追加された、よりネットワーク活用を重視した情報通信技術のことです。
ほぼITと同義なんですが、情報技術を“活用する”という場面で使われることが多いようです。
世界的には「ICT」の方を使うことが多いので、皆さんもグローバルな視点からITではなくICTを使っていきましょう。
土木におけるICT施工は、i-Constructionという最重要プロジェクトを担っています。
令和2年現在では、「土工」「舗装工」「河道掘削」「港湾浚渫」で使われています。
市役所でも使えるICT施工
ICT施工は市役所レベルでも可能です。
小さい自治体や地方でも「ICT使いたい!」と考えている業者さんは沢山いるはずです。
実際に私の所属する地方市役所でも盛土工事などではICT施工が導入されていますし、細かいところで言えば、電子小黒板などもICT技術と言えるでしょう。
具体的にどのような使われ方をするのか説明したいと思います(*’ω’*)
なお、ICT機器については各メーカーがしのぎを削っており、認定されている工法も何種類かあったりしますので、今回ご紹介するのはあくまで一例と思ってくださいm(__)m
ドローン(UAV)を用いた写真測量
まずICTの代表格のドローンですね。
無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle 通称ドローン)や地上レーザースキャナ(TLS)などを使って、工事前の地形を測量し、3次元のデータを作成できるようになります。
写真測量については国土地理院によって細かくマニュアルが定められており、ルールに従って測量する必要があります。それにより精度の高い点群データが作成できるのです。点群データは1000万~1億点。精度をどこまで求めるかの話なのでそこは調節できますが。
ドローンによる測量は小さい規模なら数十分で終わります。
図面の3次元データ化
まだ発注図面は2Dの場合が多いと思います。
その2D図面(計画平面図・縦横断図等)を専用ソフトに入力して、3Dの設計図を作成します。
これで起工測量による「工事前の3Dデータ」と「計画の3Dデータ」が揃ったことになります。この2つのデータを比べることにより必要土量の算出や、計画図の不可解な箇所がわかるのです。
土量の算出はコンピュータがやってくれますので、ポンっと計算結果が出てくるだけです。計算過程は点群の計算なわけで、膨大な量になりチェックのしようがありませんのでソフトを信じるしかありませんね(笑)
ICT建機での施工
計画の3Dデータが確定したら、いよいよICT建設機械による施工です。
「現場⇔ICT建設機械⇔設計データ」を衛星によって繋ぎ、ミリ単位での施工が可能となります。カーナビの超正確バージョンみたいなものですね。
なんと自動制御による施工が可能で、その場合はオペレーターはボタンを押したり、レバーを単純操作するだけで計画出来形に正確に仕上げてくれます。免許を持っていない私も操作してみましたが、施工自体は簡単にできました。マジで凄いです。
ICT建機を実際に操作した石井国土交通大臣(当時)も「俺は天才なのでは?」と勘違いしたそうです(笑)
かなり精度は高いので従来の丁張が必要なくなり、いちいち機械を降りて仕上がりをチェックしたりする手間がなくなります。
ただし、現場によっては衛星受信の精度が悪くて誤差が大きくなる場合もあるようです。まだ改善の余地ありですね。
ICTによる出来形管理
出来形管理についても専用のICT機器を用いて計測をおこないます。
例えば、スマホの専用アプリ・ポール・TSがあれば、ポールの位置をTSが読み取って、スマホ上でリアルタイムにポールの高さ情報等がわかるようになります。
全地点を測位して高さが分かれば出来形管理ができますよね。
このように出来形を「面(点群データ)」で管理するのがICT施工です。今までの断面×距離という管理の仕方はもうしません。
コンピュータ上での検査
検査についても、3次元データを用います。
ドローンによる写真測量でもいいですし、上述の出来形管理の方法でもいいでしょう。どちらにせよ出来形が把握できるし、施工数量も計算できます。
3Dデータをコンピュータ上で処理するので、検査書類は計算結果の紙1枚になったりします。
一般的には、新基準による検査要領を導入することにより、検査書類が1/50に減ると言われています。
これで主要なICT技術を用いた工事の一般的な流れは終了です。お疲れ様でした。
電子小黒板による写真管理
本格的なICT技術のほかにも、小さなICT例えば、電子小黒板を使いたいと業者が言ってくることもあります。
写真管理は従来は、黒板に現地で手書きして、一緒に写真に写して現場の情報が分かるようにする必要がありましが、
電子小黒板のシステムを使えば、タブレットで写真をとってソフト上で情報を入力するだけで、写真管理が可能になります。現物の黒板は不要です。
タブレットひとつで図面データ等すべてを持ち運びできる時代になってきました。
電子小黒板は2017年に国交省が直轄土木・営繕工事での使用を認可してから少しずつ普及しています。使用する際はルールを読んでから使ってくださいね。
施工に関わる作業員・機械・車両の動態管理
動態管理とは何かというと、工事中の作業員や機械や車両にスマホを設置することにより、専用のアプリを通して位置情報を取得して今どこにいるのか、何をしているのかを把握することができるものです。
配送業では導入されてるのでイメージしやすいと思います。
このシステムを利用すれば、ICT建機と連携させることにより、ダンプトラックの積載重量も分かって過積載防止にも繋がりますし、
また、ダンプトラックの運行ルートと道路交通の情報をインプットすれば、危険個所や交通規制の周知も可能になります。
こんなシステムも運用されてるんですね。凄い時代だ(*´ω`*)
ドローンを用いた点検
ドローンを用いた構造物の点検については何かで見たことがあるという人は多いのではないでしょうか。
ドローンで近くまで行って写真撮影して、その画像データを分析して健全性を評価するものです。特に人が近づきづらい橋梁の下部工やトンネルなどで利用されていますね。
ドローン以外でも、橋梁・トンネルの点検支援技術に対して、国交省は公募で得た80の技術の性能カタログを公表しています。(令和2年6月現在)
いろんな分野で技術公募してますので、メーカーさんたちには頑張ってもらいたいですね。(他人任せですんません💦)
ICT技術導入のメリット
ICT技術を導入してどのようなメリットが得られるでしょうか。
一般的に言われているメリットは以下のようなものがあります。
- 作業員の削減
- 作業時間の削減
- 品質の向上
- 安全性の向上
※ 熟練オペレータによるICT施工は作業効率が一段と向上します。
※ 設計や施工データ作成時間は含まれていません。
※ 社内テスト施工の結果であり、実際の施工とは異なります。
単純にICT機器で管理できるようになるので、人手と時間が減りますよね。コンピュータの性能が上がれば処理時間もどんどん短くなると思われます。
ただし、まだ現場が慣れていない(フィットしていない)感じなので、作業時間が大幅に短縮しているとは言えないのかなと個人的には思っています。
品質の向上もまだまだ余地がありますね。正確性についても目を瞑って承認できるようなレベルではないと思います。しかし、技術が上がり、現場のノウハウが蓄積してくれば必ず品質が上がるし、その品質が未来ではスタンダードとなるはずです。
おわりに
何百、何千とある技術の中からほんの一部だけ紹介しましたが、ICT技術は、写真撮影・画像解析・衛星システム・ドローンなどの専門技術の発展によって支えられていることがわかりました。
深刻な人手不足に陥っている建設業界には必要な技術です。
今後は、AIやロボット、ドローン、CIM、ARの目覚ましい技術向上が期待されており、どんどん発展していくことでしょう。
ICT土木技術についてはまだルールを整備している段階で、各項目について様々なマニュアルが存在します。興味がある方は国交省の専用ページ(ICTの全面的な活用)なんかを参考にして勉強してみるといいかと思います。
それぞれのICT技術についての詳細はまだまだ書きたいことがありますので、個別記事を作っていくつもりです。
ICT機器が低コスト化してくれるとありがたいですね。
では今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノシ
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