こんにちは。土木公務員ブロガーのカミノです。
今日は土木技師が抑えておくべき規制に関する法令の中でも、一番根本となる国土利用計画法を解説します。
実際に許認可の事務を行うかもしれない事務職の人や、公務員以外の建設業界の人にも知っておいてほしい基礎知識となります。
第1~8条の解説はこちらの記事からどうぞ↓
国土利用計画法とは?
国土利用計画法とは、1974年(昭和49年)に施行された、重要な資源である国土を総合的かつ計画的に利用するために作られた法律です。その名の通りですね。
1955年~1973年までの高度経済成長で、日本の国土はイケイケドンドンな開発行為が盛んに行われ、秩序の無い国土利用を危険視した日本政府は次々に個別規制法を打ち出しました。それらをとりまとめたものが国土利用計画法です。というイメージで良いと思います。
国土利用計画法に書かれていることは大きく4つあります。
①国土利用計画
②土地利用基本計画
③土地取引規制
④遊休土地制度
本記事では、②について詳しく見ていきます。
五地域区分の定義
国土利用計画法第9条にある土地利用基本計画では、日本の国土を5つの地域に分けた上で、全般的な土地利用の調整等に関する事項を定めています。
その5つとは以下の地域です。
- 都市地域
- 農業地域
- 森林地域
- 自然公園地域
- 自然保全地域
五地域については、具体の開発等は個別規制法を通じ規制しています。
ではその五地域を見ていきましょう٩(ˊᗜˋ*)و
(土地利用基本計画)
国土利用計画法
第九条 都道府県は、当該都道府県の区域について、土地利用基本計画を定めるものとする。
2 土地利用基本計画は、政令で定めるところにより、次の地域を定めるものとする。
一 都市地域
二 農業地域
三 森林地域
四 自然公園地域
五 自然保全地域
都市地域
都市地域は、市街地とその周辺のことです。健全に都市を開発・整備していきましょうという目的で様々な規制が掛かります。
個別規制法は、都市計画法(昭和43年)になります。有名ですね。
都市計画法では、国土を大きく分けて、都市計画区域と準都市計画区域、その他の区域の3つに分けています。
さらに都市計画区域は市街化区域と市街化調整区域の2つに分かれます(通称「線引き」)。市街化調整区域では、都市化が無秩序に広がることを防ぎ、良好な田畑・森林等を残すために、開発行為が制限されます。
航空写真で見ると、市街地とそれ以外の境目がはっきりと見て取れたりします。こちらの写真でもどこで線が引かれているか分かりますよね?
さらに地域地区で細かく区分されるのですが、今回は割愛します。
例えば、市街化区域では、少なくとも道路・公園・下水道を整備しなければいけないし、原則として1,000㎡以上の開発行為には許可が必要になります。
第九条
国土利用計画法
4 第二項第一号の都市地域は、一体の都市として総合的に開発し、整備し、及び保全する必要がある地域とする。
農業地域
農業地域とは、農用地のことですね。
個別規制法は、都市計画農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年)。通称、農振法です。
農振法では、都市計画法と同じように、農業上の土地利用のゾーニングをして、農業振興地域と農業振興地域外に分けています。
さらに農業振興地域は農用地区域と農振白地地域に区分されています。農用地区域は、その名の通り、農業のための土地なので行政はお金を出して農業用水等を土木工事で整備しています。つまり、そこで宅地開発等は行えません。不許可です( ゚Д゚)
開発をしたければ「農振除外」によって農振白地地域に変更する必要がありますが、それにも厳しいハードルがあります。もし、農振除外の要件をクリア出来れば、農地法(農振法とは別の法律)による農地転用も場合によっては可能となります。
ごちゃごちゃして分かりにくいですが、私も素人なのでわかりません(;´・ω・)
ちなみに、農地は農業だけにしか使えないので地価が安いんです。お金が絡む話なので色々大変そうですね(;´・ω・)
第九条
国土利用計画法
5 第二項第二号の農業地域は、農用地として利用すべき土地があり、総合的に農業の振興を図る必要がある地域とする。
森林地域
森林地域は、守るべき国有林や民有林がある区域です。
これらの「保安林」を保全するために、森林法(昭和26年)によって色々な制限が掛かり、例えば、立木の伐採や土地の形質を変更する行為等には許可もしくは届出が必要になります。
自分が所有している森林でも、勝手に木を切ってはいけないというのはおかしな話に思えるかもしれませんが、国土を健全に維持するためにはこういう制約が必要なのです。
第九条
国土利用計画法
6 第二項第三号の森林地域は、森林の土地として利用すべき土地があり、林業の振興又は森林の有する諸機能の維持増進を図る必要がある地域とする。
自然公園地域
自然公園とは、特定の地域を指定して、その場所の自然環境を保全することを主眼に指定された公園で、①国立公園、②国定公園、③都道府県立自然公園の3つがあります。
個別規制法は自然公園法(昭和32年)。
私たちが普段利用している公園は「都市公園」と言って自然公園とは全く別ものです。
規模が圧倒的に違います。例えば、知床国立公園は日本国内最東北端に位置する知床半島中央部から知床岬までの周辺海域を含む約60,000ヘクタールが公園区域になっています。
60000ヘクタールは、東京ドーム約12832個分です。
自然公園法が主に保護の対象としているものは自然の風景地ですが、生物多様性もひっくるめて保全する意味があります。
国立公園については日本の国立公園/環境省のページで詳しく解説されていますので、興味がある方はご覧になってください。
第九条
国土利用計画法
7 第二項第四号の自然公園地域は、優れた自然の風景地で、その保護及び利用の増進を図る必要があるものとする。
自然保全地域
自然保全地域とは、ほとんど人の手が加わっていない原生の状態が保たれている地域や優れた自然環境を維持している地域のことです。個別規制法は自然環境保全法(昭和47年)。
4つの分類があり、それぞれ指定地域は下記の通りです。(令和2年3月現在)
- 原生自然環境保全地域 5地域 5,631ha
- 自然環境保全地域 10地域 21,593ha
- 沖合海底自然環境保全地域 未指定
- 都道府県自然環境保全地域 546地域 77,413ha
都道府県の条例で指定している地域がかなり多いです。
自然保護の観点で指定しているので自然公園地域とイメージが似てますよね。実際似てるんですが、自然公園は風景地の保護と、自然とふれあいを図ることを目的として指定される地域であり、利用促進のため歩道やビジターセンターなどが計画的に整備されていて、アクセスしやすくなってます。
自然保全地域は、より原生の状態、本当に手つかずの自然そのままって感じの区域です。世界自然遺産の白神山地みたいなところですね。極力、人の活動の影響を受けさせたくないので、自然公園地域とは重なっていません。たぶん。
第九条
国土利用計画法
8 第二項第五号の自然保全地域は、良好な自然環境を形成している地域で、その自然環境の保全を図る必要があるものとする。
地図で五地域区分を見てみる
ということで、それぞれの地域についてざっくり見てきましたが、実際に地図上でどんな色分けがされているか気になりますよね。
安心してください。地図で見る方法があります。
土地利用調整総合支援ネットワークシステム(LUCKY:Land Use Control bacK-up sYstem)by国交省 という都道府県が策定した土地利用基本計画図を電子化し、インターネット上で閲覧できるシステムがあります。
「ラッキー 地図」で検索しても出てきますので、使ってみてください。
試しに、埼玉県を見てみますと、こんな感じ。
レイヤーはぐちゃぐちゃになるので、大きく五地域だけに絞っています。
埼玉県は県土の大部分が、都市区域(赤)・農業地域(黄)・森林地域(緑)だと分かります。
自然公園地域(青)は秩父多摩甲斐国立公園などが一部ありますね。
自然保全地域(紫)はほぼありませんね。手つかずの自然なので、都会な都道府県だと無いみたいですね。
こんな感じでラッキーは凄く簡単に扱えます。
例えば、自然保全地域って何よ??って思った方は実際に地図で探してみると、大自然がどこにあるか見つけられますよ(*’ω’*)
土地利用基本計画について
地図を見て分かるように、五地域は重なってるところもあります。
そりゃそうです。違う目的でバラバラに成立した法律ですから、それぞれが指定する区域はハッキリとすみ分けできていないのです。
戦後に個別規制法が続々できたのですが、それらを調整するものがなかったので、個別規制法より後の1974年(昭和49年)に、個別規制法に基づく計画・規制を総合調整することを目的として制定されたんです。と考えてもいいかと思います。
都道府県は土地利用基本計画を定めて、この五地域を規制する個別規制法たちを統べることとされています。
具体的に言うと、重なっている地域について、
例えば、都市地域と農業地域の重複地域。いわゆる集落地域整備法による「集落地域」と呼ばれる地域とかですね。よくありますよね。
この場合は、土地利用基本計画に「住宅地等に係る土地利用転換を計画的に誘導し、農地の集団的な保全・利用を図る」等と記載して調整をおこなうわけです。
(土地利用基本計画)
国土利用計画法
第九条
3 土地利用基本計画は、前項各号に掲げる地域のほか、土地利用の調整等に関する事項について定めるものとする。(中略)
9 土地利用基本計画は、全国計画(都道府県計画が定められているときは、全国計画及び都道府県計画)を基本とするものとする。
10 都道府県は、土地利用基本計画を定める場合には、あらかじめ、第三十八条第一項の審議会その他の合議制の機関並びに国土交通大臣及び市町村長の意見を聴かなければならない。
11 国土交通大臣は、前項の規定により意見を述べようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長の意見を聴かなければならない。
12 都道府県は、第十項の規定により市町村長の意見を聴くほか、市町村長の意向が土地利用基本計画に十分に反映されるよう必要な措置を講ずるものとする。
13 都道府県は、土地利用基本計画を定めたときは、遅滞なく、その要旨を公表するよう努めなければならない。
14 第十項から前項までの規定は、土地利用基本計画の変更(政令で定める軽易な変更を除く。)について準用する。
(土地利用の規制に関する措置等)
第十条 土地利用基本計画に即して適正かつ合理的な土地利用が図られるよう、関係行政機関の長及び関係地方公共団体は、この法律に定めるものを除くほか、別に法律で定めるところにより、公害の防止、自然環境及び農林地の保全、歴史的風土の保存、治山、治水等に配意しつつ、土地利用の規制に関する措置その他の措置を講ずるものとする。
五地域区分についてのまとめ
五地域区分についてまとめます。
五地域区分 | 説明 | 相当するもの | 規制法 |
---|---|---|---|
都市地域 | 一体の都市として総合的に開発し、整備し、及び保全する必要がある地域 | 都市計画区域(準都市計画区域) | 都市計画法(昭和43年) |
農業地域 | 農用地として利用すべき土地があり、総合的に農業の振興を図る必要がある地域 | 農業振興地域 | 農振法(昭和44年) |
森林地域 | 森林の土地として利用すべき土地があり、林業の振興又は森林の有する諸機能の維持増進を図る必要がある地域 | 国有林、地域森林計画対象民有林 | 森林法(昭和26年) |
自然公園地域 | 優れた自然の風景地で、その保護及び利用の増進を図る必要があるもの | 国立公園、国定公園、都道府県立自然公園 | 自然公園法(昭和32年) |
自然保全地域 | 良好な自然環境を形成している地域で、その自然環境の保全を図る必要があるもの | 原生自然環境保全区域、自然環境保全区域、都道府県条例の自然環境保全地域 | 自然環境保全法(昭和47年) |
市役所勤務であれば、国や県が窓口である自然公園や自然保全地域はほぼ関わらないと思います。森林地域も無いかな。
都道府県庁や山地をもつ市役所の人は、事業を行う前に担当事務所へ確認をされるといいかと思います。
次回は「土地取引の規制」について解説します。
個別規制法については、また別記事で解説したいと思います。
気長に待っておいてください_( ´ ω `_)⌒)_
では今日はこの辺りで。
ほなまた〜(・ω・)ノシ
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