最低限知っておくべき土の性質

土木の材料

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

土の性質について、私なりに、公務員が最低限知っておくべきだと思う「4つの土性値(ω、γ、c、φ)」を選んで解説しようと思います。

公務員に限らず、土木の実務に携わることになった初学者さんにとって分かりやすく説明します。

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4つの土性値(土質定数)

土は「無数の土粒子+空気+水」で成り立っています。土のつぶつぶの隙間に空気と水があるイメージですね。

土粒子同士が強く結びつかず、かみ合っているだけで、ある意味不安定なモノです。だから他のコンクリートや鋼材などの物質とはちがう動きをして、その挙動を物理式で表すことは難しいとされています。実験や経験に基づき、色々な事象に対して、色々な物理式が提唱されています。

そんな土について、最低限知っておいてほしい土性値(土質定数)は以下の4つです。

含水比ω[%]:土粒子に対する水の質量の比率のこと。

単位体積重量γ[kN/m3]:土1m3あたりの重さ

粘着力c[kN/m2]:粘性土の電気化学的結合力

内部摩擦角φ[°]:砂粒子のかみ合いの角度

他にも間隙比eとか、EとかGとかKとか、全応力とか有効応力とか間隙水圧とか言い出したら、そりゃもちろん全部重要なんですけど、、、

あのね、覚えるのものが多すぎね。

4つだけしっかり理解していれば、たとえばもっと詳しく支持力・土圧・沈下・斜面安定などのことを知りたいと思ったとき専門書を読みやすくなるし、地質コンサル・設計コンサルとの打合せや成果品も理解しやすくなります。たぶん。

では1つずつ見ていきます。

含水比ω[%]

含水比ωは、土粒子に対する水の質量の比のことです(百分率です)。土にどれだけ水が含まれているかを表す尺度になります。

砂の含水比は、おおよそ30%以下。
粘土では、60~100%。または100%を超えることもあります。

つまり、実験結果の数値がこれより大きければ「水含んどるな~べちょべちょやん」と思ってください。

地下水位より下では間隙の空気を押しやって全部水が占めて飽和土となりますが、含水比は質量比なので100%がMaxなわけではありません。(間隙体積に占める割合はべつに飽和度という土性値があり、飽和度は100%がMaxですよ。)

土には最適含水比というものがあって、締固めたときに一番密度が高くなる含水比のことです。水が少なすぎても多すぎてもダメなんです。盛土・路床・路盤を施工するときには最適含水比を目指して管理したほうがいいですね。締固めについては↓の記事で解説しています。

含水比ωは間隙比eを求めるための定数で、直接的に土の安定解析にはあまり使われないかなと思います。つまり、設計よりも施工のときに大事になる土質定数と言えるんじゃないかな。

土木公務員は、現場を監理する立場ですので、つねに土の中(地下水含む)をイメージできるように含水比は気にしておきましょう。

ちなみに、同じ記号ωが使われてるものに、液性限界ωL塑性限界ωPがありますがこれらもある土の境界となる含水比のことです。

粘性土の話なんですが、液性限界ωLのLはリキッドのことで、液性限界以上の含水比では土が液状になることを意味します。

一方、塑性限界ωPのPはプラスチックのことで、これ以下の含水比では土が個体になることを意味します。(本当は半固体です。固体化するのは収縮限界なんだけど、液性・塑性を知ってた方がいいです)

たとえば、実験結果によって現場含水比が液性限界を超えてるようなデータが出てきたら現場の土は液状になっている、または、いつなってもおかしくない状態ということなので、「ちょいちょいちょい!めっちゃ危険な状態やん!」と思ってください。

単位体積重量γ[kN/m3]

単位体積重量γは、土の1m3あたりの重さです。単位体積当たりの質量である密度に重力加速度を掛けたものです。密度[g/cm3]もデータでよく見ますね。あたりまえですけど、土の重さは土に関わるあらゆる問題の計算に必要となりますから、一番重要ですね。

単位体積当たりの土粒子だけの質量を乾燥密度、間に含まれる水分の質量も含めたものを湿潤密度といいまして、普通に単位体積重量といえば湿潤単位体積重量のことを指します。

砂では、γ=16~20 kN/m3
粘土では、γ=14~18 kN/m3

ですが、私は一般的に16 kN/m3くらいと覚えています。てきとーです。

高さ1mの盛土をしたとすると、γ×1.0m=16kN/m2の荷重が地盤面に作用することになります。これは3階建ての建物と同じくらいの荷重です。土って重いんですね。

さきほども書きましたが、実務ではγは土のさまざまな計算で必要になります。たとえば土圧(土から擁壁に横向きにかかる力)の場合、土圧強度Pは、P=Kγhというシンプルな式で表現されます。Kは土圧係数、hは深さです。Kは可動する擁壁の場合はクーロン土圧の式などで求められます、これがすごく難しい。

カミノ
カミノ

まあ、こんな感じでγは必ず使いますよ。慣れ親しんでおきましょ。

土の強さって何?

粘着力cと内部摩擦角φは、土の強さを表す数値(強度定数)です。まずcとφの話をする前に、土の強さの説明をしましょう。

土の強さって何ですか? 

土を引っ張れば、ボロボロになりますよね。土の引張強さは無視できるレベルってことです。そのかわり上に物を乗せて支えることができますね。圧縮強さはあるということです。土を圧縮していくと土粒子そのものが壊れるよりも先に土粒子のかみ合わせがずれて土が斜めにすべり変形したり破壊したりします。これを「せん断破壊」といいます。三軸圧縮試験などのように圧縮強度という言葉が使われますが、せん断破壊に至る際の圧縮強度を求めることによって、土の「せん断強度(強さ)」を求めているのです。

ということで、土の強さはせん断強さということが分かりました。

ありがたいことに超大事なせん断強さを求める式を先人たちが見つけています。

土のせん断強さ τf=c+σ tanφ
 σ:せん断面に作用する有効応力(土の内部応力のうち間隙水圧を除いた土粒子が押しあう応力)

この式は摩擦法則を提案したクーロンの名にちなんでクーロンの式、とかクーロンの破壊基準と呼ばれています。式の意味するところは、土のせん断強さ τfは、せん断面に作用する有効応力σに依存する項(摩擦みたいなもの)と、有効応力σに依存しない数値cの足し合わせになるということ。この数値cが粘着力であり、cとφの2つ強度定数を使っていろいろな土の安定解析ができるのです。

ちなみに、第2項の摩擦により、有効応力(拘束圧)が大きくなれば土は強くなる(すべりにくくなる)ということですから、地中深くに向かうほど土は強くなるんです。なんとなくイメージできるかもしれません。

カミノ
カミノ

式の表現は2パターンあって、本来σはすべり面の垂直応力のことなので、有効応力表示のときはσ’と表すこともあります。 τf=c’+σ’ tanφ’のようにcとφもc’とφ’になる。

粘着力c[kN/m2]

粘着力cは、粘性土の電気化学的結合力のことです。

粘着力が何なんだってことは深く知る必要はないかなと思いますので(てゆーか私が知らん)、簡単に説明します。砂をこぼすとサラサラと綺麗な斜面を描く山が作れると思います。一方、粘土はべとべとっとしてて、垂直に盛ったり、手でこねたりもできると思います。これは粘土が粘りをもっているからで、その粘りのことを粘着力といいます。ですから粘着力cは粘性土特有の力といえます。

さきほどのせん断強さ τf=c+σ tanφ のうち、粘土はφを無視して、cだけを考慮します(絶対ではないと思う)。φ=0にするとtan0=0なので、第2項は0です。つまり、せん断強さ=粘着力になります。

砂質土は逆にcを無視します。また、cとφ両方を考慮することもあると思います。そこらへんの判断が難しいところです。

実務的な粘着力cの求め方ですが、①N値から求める方法と、②三軸UU試験や一軸圧縮試験から求める方法(非排水強度)などがあります。

①N値から求める方法は精度が微妙らしいので、注意してください。テルツァギー-ペックは粘土のコンシステンシーと一軸圧縮強さquとN値の関係を次のように示しています。

式で表すと、qu=12.5N

軟らかい粘土はc=qu / 2 とされるので、
c=6.25N(kN/m2)

ということになります。つまり、N=2以下ならc=12.5[kN/m2]以下、N=30以上であればc=187.5[kN/m2]以上となります。ずいぶんと幅があることが分かりますね。だたし、これは過小っぽいぞと言われています。目安として使いましょう。

②について、一軸圧縮試験から求める場合も、c=qu / 2とします。
三軸圧縮試験について書きだすとボリュームがやばいのでまたの機会に。

内部摩擦角φ[°]

内部摩擦角φは、砂粒子のかみ合いの角度のことです。せん断抵抗角とも呼ばれます。

砂を落としていったときに山ができますが、その角度のことを安息角と呼び、内部摩擦角と概ね一致します。(粘着力があれば内部摩擦角よりも急勾配になると思う。)砂粒子がすべり落ちようとする力「せん断力」に抵抗できてるからその角度で積みあがっているわけです。

相互フォロワーのshoheiさんが分かりやすい絵を描いていたのでお借りしました↓↓

shohei|noteより引用

砂質土は摩擦に支配されるので内部摩擦角φで強さが決まります。クーロンの式をもう一度見てみます。

せん断強さ τf=c+σ tanφ

c=0とすると第2項の摩擦っぽいものだけで強さが決まることが、数式でも確認できました。

実務では、φは砂質土をトリプルサンプラーや凍結で採取して直接せん断試験や三軸圧縮試験などで求めます。しかし、砂質土は崩れやすいので乱さない試料を取るのは結構大変ですので、N値から推定する方法もよく使われています。

道路橋示方書の式だけ載せておきます。書くのめんどくさかったので川崎市の資料から引用。

他には、旧道路橋示方書の式、大崎の式、ペックの式、ダナムの式、鉄道構造物等設計標準・同解説の式などがあります。ググったら出てくるよ。

また、『道路土工 擁壁工指針』には下表がありました。めっちゃザックリしてますよね💦そもそもN値もざっくりした値ですし、安全側にc=0としているので、粗い数値を使ってもよいってことかな。

背面地盤の土質単位体積重量
( kN/m3 )
内部摩擦角
( °)
礫質土2035
砂質土1930
粘性土1825

おわりに

最低限の4つの土質定数を解説しました。先の2つが物理的な定数、あとの2つが力学的定数と呼ばれます。

なんとなく土のことが分かってきたかと思いますので、興味が湧いた人はさらに専門書を読まれてください。

私は土圧とかの詳しい概念や数式は解説しません(できません)。次回は粘性土と砂質土の違いを解説しようと思います。今回のcとφでおおまかに解説終わっちゃいましたけどね。他には地盤の支持力についてとか、三軸圧縮試験とか?

カミノ
カミノ

いつになるやら_(:3 」∠ )_

おすすめ書籍のご紹介↓
建築・土木の専門家が素人にも分かりやすく地盤の安定解析の基本を説明をしてくれている本です。

参考になりましたら幸いです。またねん

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