こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
「推進工事(工法)」や「シールド工事(工法)」という名称を聞いたことがありませんか?この2つは同じ非開削工法に分類されるよく似た工法ですが、専門家から言わせるとまったく違う工法なんですよ。
ここでは、この2つの工法の違いについて解説します。(私は専門家ではありませんが…)
※アイキャッチ写真は、東京湾アクアラインを掘削した世界最大級のシールドマシン(直径14.14m)の前面にあるカッターフェイスを、彫刻家 澄川喜一氏がモニュメントとして制作した作品だそうです。シールドマシーン*カッターフェイスのモニュメント(東京湾アクアライン&海ほたる)|土木ウォッチング
非開削工法は2つある
地下深くに管路やトンネルを作る工事は大きく「開削」と「非開削」に分かれます。
開削は地表から掘り上げて管路などを布設する方法ですね。一方、非開削は文字通り地表から掘らずに(立坑のところは掘るけど)地中で横向きに掘進することによって地表に影響を与えずに管路やトンネルを構築する方法です。
主な用途は下水道ですが、他には水道や、電気・ガス・通信などのインフラ関係が少しあります。また、地下鉄などの大規模構造物もシールド工事で作られています。ここでは地方自治体の発注工事で多い口径1mほどの下水道管をイメージして解説していきますね。河川や鉄道、交差点を越えたいときに用いられます。
非開削工法はおおまかに「推進工法」と「シールド工法」の2つに分かれます。
非開削はモグラみたいな工法ですね。
推進工法とは?
推進工法は、先頭を掘進機が掘り進め、推進管と呼ばれる円筒状のコンクリート管(鋼管・ダクタイル管)を掘進機と一緒に発進立坑に設置された油圧ジャッキで押していく工法です。
分かりやすい解説動画がありますので、推進工法|下水道の森ウェブサイトの動画をご覧ください(*’ω’*)
まず、推進深さまで掘った発進立坑と到達立坑を準備します。
掘進機がスタートしたら約2mずつに分割されたコンクリート管を吊り下ろして、後ろに連結して、発進立坑内のジャッキでまるごと押していきます。これの繰り返しです。
これが推進工法です。
シールド工法とは?
シールド工法は、掘進機を油圧ジャッキで直接前進させて、掘られたトンネル内で、前方からセグメントと呼ばれる壁枠を組み立てていく工法です。掘進機のことをシールドマシンと呼びます。
分かりやすい動画はこちらです→シールド工法|下水道の森ウェブサイト
発進立坑と到達立坑を用意するのは推進工法と同じですね。
シールド工法の場合は、シールドマシンが掘ったスペースまで吊り下ろしたセグメントを運搬して構築していきます。掘ってセグメントを組み立てて、また掘り進めて、の繰り返しです。
推進工法とシールド工法の違い
ということで、2つの工法の違いを整理してみますね。
シールドのほうが大規模工事なんですね。
ミニシールドってなんだ?
おまけで、ミニシールドという工法も耳にすることがあると思いますので説明しておきます。
ミニシールド工法研究会曰く、ミニシールド工法は三等分割のミニシールド工法用鉄筋コンクリートセグメントを使用するシールド工法、とのことです。
簡単に言うと、シールド工法のなかで直径2m以下の管路に特化して施工をしやすく経済性も良くしたものです。
推進工法とシールド工法に共通するところ
さて、2つの工法に共通するところも確認しておきましょう。
・発進立坑と到達立坑を用意する。口径1mの下水道工事ならそれぞれ直径3mくらいの立坑が必要ですね。
・立坑付近にはクレーンの作業スペースが必要。架空線や地下埋設物がないかチェックする。
・発進立坑では、土砂を搬出入するプラントや材料置き場が必要になります。工法によって様々ですが、例えば100m2くらいは必ず必要と思っておきましょう。
ご覧のとおり、非開削で地表への影響が少ないように見えて、立坑付近の制約がすごく厳しい工法ですよね~。
おわりに
推進工法とシールド工法の違いがわかりましたか?
ちなみに、地方自治体の下水道の推進・シールド工事ならば、どうしても道路や公園、自治体所管の土地を占用することが多くなります。
つまり、土木公務員は占用を許可する(協議される)立場になることも多いので、立坑やプラント、クレーンの設置による周りへの影響は慎重にチェックしましょう。設計コンサルは自分たちが施工するわけではないので占用場所の影響はそこまで検討してなかったりしますんで…。
市町村なら数十mの小規模推進工事をすることが多いかもですね。
では今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
コメント