こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
私たちの生活に欠かせないライフラインのひとつ、『ガス』。
エネルギー分野で電気と鎬を削っているものの、ほとんどのご家庭で都市ガスやLPガスを使ってると思います。
ガス事業者は全国で2万を超えますが、実は、そのなかに自治体もいるんです。もしかするとあなたもガス屋さんになるかもしれません( ゚Д゚)
ここでは土木公務員や土木技術者に向けてガス事業をかんたんに解説します♪
ガス事業とは?
ガス事業とは、ガスを製造・貯蔵し、搬送し、需要家に配る事業のことです。需要家とは家庭や企業など、ガスを消費する者のことですね。
現在の日本では、天然ガスを配管で供給する都市ガス事業と、液化石油ガス(LPガス)をボンベまたは配管で供給するLPガス事業が中心的な存在です。
ガス事業というと、ガスを配管で供給する事業のみを指すこともありますが、ここでは都市ガスをメインに、ガスボンベ販売もぜんぶ含めて説明します。
都市ガス事業
都市ガスは天然ガスのことです。メタンを主とする化石燃料を海外から船で運んできてLNG基地で加工することによって、私たちが使うことのできる都市ガスになります。
日本全国で都市ガス事業者はおよそ200事業者、お客さま件数は、2,700万件です。
東京ガス、東邦ガス、大阪ガスの3社は会社規模や供給範囲で大手とされており、「三大事業者」と称されています。西部ガスを加えて4社とすることもあります。
都市ガス事業の根拠となる法律は、ガス事業法。
ちなみに、2017年のガス事業法改正前は、都市ガス事業者のことを「一般ガス事業者」と呼んでいましたが、法改正により、区分が、ガス小売事業者、ガス製造事業者、一般ガス導管事業者・特定ガス導管事業者に変わりました。
作る人と運ぶ人、売る人を分けて事業の許認可をおこなうということですね。大手は従来通りすべてを担っていますが。
くわしく知りたい方は、日本ガス協会のパンフレットがわかりやすいかと思います。
都市ガス事業の現況2020-2021 (gas.or.jp)
LPガス事業
LPガス(Liquefied Petroleum Gas)は、ブタンやプロパンなどからできたガスです。日常の温度でかんたんに体積を気体の約250分の1の液体にできるため、ガスボンベにつめて運ぶことができます。プロパンガスと呼ばれていますよね。
LPガス事業者はおよそ21,000事業者、お客さま件数は約2,400万件です。
LPガス事業は大きく2つに分かれ、配管で小さいエリアに簡易的に供給する簡易ガス事業(コミュニティーガス)と、ガスボンベによる液化石油ガス販売事業があります。
まあ普通は、LPガスとかプロパンガスと言えば、ガスボンベ販売のほうを言いますよね。一応、ガス導管を使うこともあるんだな程度に覚えておくといいかと思います。
私の市にも一部のエリアで簡易ガスがあります。ほぼ知られていませんが。
ガスボンベによるLPガス事業の根拠となる法律は、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」です。
配管供給による事業は、都市ガスとおなじく「ガス事業法」が根拠となります。
都市ガスとLPガスの違いについては、こちらの記事で解説しています。
小売の全面自由化
2017年の法改正により、ガス改革とも言われる、都市ガスの小売り全面自由化がスタートしました。すでに敷設されているガス管を利用して、これまでの都市ガス会社だけでなく、新しく参入する会社もガスを供給・販売することができ、消費者はガス会社を選ぶことができるようになったわけです( ゚Д゚)
自由化には、LPガスの簡易ガス事業も含まれます。
ガスの配管はそのままで、ガス会社や料金メニューを選べるようになってますので、都市ガスを使われてる方は一度確認してみるといいかもしれませんね。
ガス小売全面自由化|資源エネルギー庁 (ndl.go.jp)
都市ガス大手3社の導管分離
時事ニュースとして、もうひとつ抑えておきたいのが、2022年に迎える都市ガス大手3社(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス)の導管部門の法的分離です。
むずかしい言葉ですよね。かんたんに説明します。
ガス改革で全面自由化をしたといっても、今のままでは導管をもつ事業者が有利すぎますよね?
ですから、新規参入の事業者が大手の小売部門と公平に競えるように、とくに占有率の高い大手3社に対して、導管部門とそれ以外の部門をそれぞれ法的に独立した事業体に変更する法的分離が義務付けられることになったのです。
大手3社は社内カンパニーをつくるなどして、着々と準備を進めています。
2022年からは本格的にガス改革による競争が始まりますので、都市ガス利用者のみなさんは注視しておきましょう。
自治体がガス事業を経営しているってホント!?
東京ガスや大阪ガスなど、都市ガスの事業者は全国でおよそ200事業者。
実は、そのなかで21の自治体が公営ガス事業を運営しているって、知ってましたか?( ゚Д゚)(私調べ。令和3年9月時点)
ガス事業を経営している全21自治体はこちら!
北海道
長万部町 水道ガス課
豊富町 商工観光課
東北
仙台市 ガス局(2022年度に民営化目標)
気仙沼市 ガス水道部
男鹿市 企業局
由利本荘市 ガス水道局
庄内町 企業課
関東
東金市 経済環境部ガス課
習志野市 企業局
大網白里市 ガス事業課
九十九里町 ガス課
白子町 ガス事業所
長南町 ガス課
中部
小千谷市 ガス水道局
糸魚川市 ガス水道局
妙高市 ガス上下水道局
上越市 ガス水道局
魚沼市 ガス水道局
金沢市 企業局 (ガス事業は2022年度に民営化目標)
近畿
大津市 企業局(ガス事業は2019年4月1日にコンセッション方式により民営化していますが施設保有・維持管理は継続。)
中国
松江市 ガス局
四国・九州
なし
へー知らなかったなーって人が多いと思います。
私も知りませんでした!
さて、このなかで仙台市と大津市について、少し詳しく説明してみますね。
仙台市ガス局
仙台市ガス局は、公営ガス事業では国内最大の規模を誇る地方公営企業です。
仙台市とその周辺の市町村にガスを配っているのですが、その数なんと約34万件!
販売量は2億8000万m3、売上高は約311億円です(令和元年度)。民間企業をふくめても全国で8番目の規模となっています。
職員の人数も300人を超えていますから、仙台市の職員ならガス局に配属になる可能性があるかもしれませんね( ゚Д゚)
仙台市の特徴は、規模の大きさ。ガスの製造もおこなっているのですが、港工場への原料調達は、マレーシアから液化天然ガス (LNG)タンカー「アマンセンダイ」によって太平洋側にある仙台港まで液体で輸入する方法と、石油資源開発所有の「新潟・仙台天然ガスパイプライン」によって日本海側にある新潟東港から気体で運ぶ方法があります。
複数の仕入れルートをもつと、万が一の災害時にも対応ができるのです。
大津市企業局
大津市企業局は、琵琶湖の水を取水している水道事業も有名ですよね。
規模が大きい自治体ですが、ガス製造設備は持たず、大阪ガスから買い入れて消費者へ供給するという“卸売形式”で運営しています。
供給先は約10万件、売上高は120億円前後。
現在は、2019年に小売部門が民営化されており、一般ガス導管事業者になっています。ただし、導管などの施設の所有と管理は企業局がおこなっていますね。
民営化されてから職員数は100人→60人くらいになっているようです。
卸売なので、もういっそ大阪ガスに買収されてもいんじゃないか?という内部の声もあるとかないとか。
ぞくぞくと民営化が進む
ガス事業の民営化が進んでいます。
ここ数年の大きい所だと、大津市がびわ湖ブルーエナジーへ小売事業を委譲、福井市が福井都市ガスへ、見附市が北陸ガスへ事業譲渡しています。
これから先も、仙台市と金沢市で2022年の事業譲渡をめざして公募したりしていますし、松江市や妙高市でも民営化を予定しています。
まぁ全国でみると21の事業者しか公営でやってないですから、なんで公営でやってるの?と言われたら、「そういう文化だから」以外に理由がないんですよね。これからもゆるやかに民営化が進むと思われます。
おわりに
ということで、ガス事業について解説しました。
ガス局やガス課があるところは自分がガス屋になる可能性がありますし、そうではない人もガス工事の占用を受け付けたり、道路工事でガス会社と協議することがあるかもしれません。
知っておいて損はしないはず!
また、土木公務員が知っておくべき基礎知識として、こちらのガス施設の記事なども読んでみてください。
では、今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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