こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
予算解説シリーズです。
ここでは「款」「項」「目」「節」と呼ばれる予算科目について解説します。
予算科目とは?
自治体ではあつかう予算が大きいため、予算を正しく整理することが重要です。
そのために自治法で予算分類ルールが決められています。
それが予算科目です。
予算は大きいほうから「款」「項」「目」「節」に区分されています。読み方は「かんこうもくせつ」です。
例えば、歳入では、
(款)市町村税 の中の…
(項)市町村民税 の中の…
(目)個人 の中の…
(節)現年課税分 です!
みたいな感じですね。
歳出では、
(款)土木費 の中の…
(項)道路橋梁費 の中の…
(目)道路新設改良費 の中の…
(節)工事請負費 です!
みたいな感じ。
議決科目と執行科目
「款」と「項」は議会の議決を受けるので議決科目と呼ばれます。
一方、「目」と「節」は議決の対象ではなく、予算執行上わかりやすくするために詳細に区分するものです。なので執行科目と呼ばれます。
用語の名前は重要ではなくて、議決の対象となっているかどうかが重要になります。
“予算の流用”に関わってくるんですね。
関連記事:自治体予算の「流用」をかんたん解説
一応覚えておいた方がいいと思いますよ。
歳出の予算科目をもっと詳しく見てみよう
土木公務員はほとんど歳出のみを使いますので、歳出をより詳しく解説しますね。
款項目は、予算の目的によって分類されています。節は、予算の性質によって分類されています。
どういうこと?
ひとつずつ説明します。
款の種類
「款」は、まず予算を大きく目的別に分類したものになります。さきほどの例では、「土木費」という款でしたね。他にはどんな款があるんでしょうか?
主な款とその内容はこちら。
議会費 | 議会活動に要する経費です。議員報酬や政務調査費などです。 |
---|---|
総務費 | 全般的な管理事務,庁舎管理,徴税,戸籍,選挙費用などです。 |
民生費 | 住民の皆さんの一定水準の生活と安定した社会生活を保障するのに必要な経費です。社会福祉や児童・老人・障害者福祉,生活保護等の費用です。 |
衛生費 | 健康で衛生的な生活環境を保持するための経費です。保健衛生やごみ収集,公害対策などの費用です。 |
農林水産業費 | 農林水産業の振興に係る経費です。農業委員会費や生産基盤の整備などの経費です。 |
商工費 | 商工業の振興,観光,企業誘致等に係る経費です。 |
土木費 | 道路・公園・下水道などの建設や維持,都市計画に係る経費です。 |
消防費 | 消防や風水害などの災害防除などの経費です。 |
教育費 | 教育委員会の費用・学校教育・社会教育・保健体育などに係る経費です。 |
公債費 | 地方債の償還に係る経費です。 |
いろいろありますね。
土木公務員が関わるのは、もちろん土木費でしょう。
他にも衛生費、農林水産業費などを使うことがあるかもしれませんね。
項・目の種類
項と目は、もっと詳しく目的別に分類したものですから、様々なものがあります。
実際に、札幌市R3当初予算の「土木費」の中身を見てみましょう。
予算書は札幌市Webサイトのこちらのページにありました。PDFはこちら ←ぜひ「土木費」のところを見てみてください。
この7つの項がありました。
7つをまとめて「土木費」105,109,185,000円となっております(*’ω’*)
土木費1000億円なり。
さらに 2 道路橋りょう費 のなかを見てみると、
この5つの「目」がありました。
これはあくまで札幌市の例ですので、ほかの自治体では、自治体の目的に沿った予算科目になっているはずです。
節の種類
つぎに節の種類は、「目的」ではなく「性質」によって分けられており、しかも種類分けは自治法施行規則15条1項によって定められているので、全国一律になっています。
性質で分けるので、純粋に款項目の下にピラミッドのように位置しているわけでは無いと思います。予算書(説明書)上は款 > 項 > 目 > 節のピラミッドになってますけど。そんなイメージを持っておいてください。
その種類はこちらです。
※令和元年まで「賃金」がありましたが令和2年度の施行規則改正により廃止されました。
このなかで土木公務員が使うものは、圧倒的に「委託料」と「工事請負費」が多いですよね!他にもちょこちょこ使いますが。
委託料は、自治体がおこなう事業の調査業務、測量業務、設計業務などを外部に委託するときの経費です。
工事請負費は、文字通り土木工事の請負契約に必要な経費です。
「節」がさらに「細節」に分かれる自治体も多いと思いますが、予算の性質をより明確化するためだけですので、ここでは説明を省きますね。
必ずこの27種類のどれかに分類されますよ。詳しくはマニュアルなどがあると思いますので見てみてくださいね。
役務費と委託料の違い
どの節に当たるのか判別がむずかしいときがあります。例えば役務費と委託料。どちらも人件費に対する経費ですね。
役務費は、純粋に人的サービスの提供の対価です。倉庫の保管料、広告料、郵便料金など。
委託料は、自治体がおこなう事業を業者へ委託するときの経費です。いくつかの種類が複雑に重なった作業をしてもらうイメージですね。
土木公務員が一般的に発注する○○業務委託は、とうぜん委託料から支払います。
需用費と工事請負費
もうひとつ判別が難しいのが、需用費と工事請負費です。
需要費は、さらに印刷製本費や光熱水費などさまざまな種類があるのですが、そのなかに「修繕料」ってのがあるんですよ。これは、施設の軽微な修繕に使う経費ですね。
大規模な修繕になると、修繕工事として工事請負費の扱いになります。正直、微妙なところです(;´・ω・)
一応自治体ごと(部署ごと)に線引きがあると思いますので、必要になったときには必ず予算措置の前に確認しておきましょう。
「目」の下がさらに分かれてるんですけど?
款項目は目的別に分かれていると説明しましたが、予算書には「目」内になにやら事業がたくさん書かれているけどこれは何?って疑問をもつ人いると思います。
例えば、さきほどの札幌市R3当初予算の「道路維持費」という目には説明欄にこれだけの事業名が書かれています。
じつは、款項目まで分類して節ごとに整理しても終わりじゃないんです。
ってことで、款項目の下に「事業」があります。自治体によって呼び方は違うかもしれませんが、札幌市予算規則では、「予算科目→款、項、目及び節をいう。予算事業→財政部長が別に定める大事業、中事業及び小事業をいう。」とありましたので、札幌市では「大事業」「中事業」「小事業」と分類されていると勝手に推測します。ぜんぜん違うかもしれません。
この予算書では、「道路橋りょう維持関係費」が大事業、「道路清掃費」が中事業ってことでしょうか。この予算書(説明書)には中事業までしか載ってなくてさらに具体的な個別事業を小事業と呼ぶということかもしれません。うーん、わかりませんね(;´・ω・)
最小単位を「小事業」と呼ぶ自治体が多いと思います。知らんけど。
このあたりは予算規模によってどこまで細かく分けるか変わってくると思いますが、まあそんな感じで目のなかもさらに分かれていますよ。
目的別に詳しく分けたものなので、同じグループのものは流用しやすかったりします。
おわりに
ということで、款項目節、さらに大中小事業の分類を見てきました。
予算の分類、とくに歳出の分類について分かりましたでしょうか?
正直、市役所では予算の研修なんてありません。いきなり、事業を持たされて、先輩から「ここの予算から出してね」と言われ、訳も分からず起工伺いや支出負担行為をやり始めると思います( ゚Д゚)
もちろん法令で、正しい予算科目で執行することが義務付けられていますし、別の予算科目から執行してしまった場合は、法令違反となります。えらいことになります。実際には、執行する前に庶務から「ちゃんと確認してください!」と怒られたり、会計室を通らず支出が遅れてトラブルに発展します。
ここで説明したことは技術職でも最低限知っておくべきことなので、気を付けて覚えておきましょう。
予算解説シリーズは「予算管理」カテゴリーにまとめています。よかったら他の記事もどうぞ。
では、今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
コメント