こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
自治体の契約において、入札・契約の方法には一般競争入札、指名競争入札、随意契約、せり売りの4つがあります。
また、実務ではこれらの中の制限付一般競争入札、総合評価方式、公募型指名競争入札、見積合わせ、コンペ方式、プロポーザル方式などの方法を扱うことがありますが、色々あってよくわからないですよね(;´・ω・)
ということで、ここではそれぞれ簡単に説明しようと思います。
入札・契約締結方法は4つある
冒頭で述べたように、自治体の契約締結の方法としては、一般競争入札、指名競争入札、随意契約、せり売りの4種類があります。これは法第234条第1項に規定されています。
この記事では、「法」=地方自治法、「施行令」=地方自治法施行令 と表記しますね。
この4つは「契約の種類」ではなく、あくまで「契約締結方法の種類」ですから、工事請負や業務委託、物品購入など多種多様な契約を行うための“手段”の話です。
自治体の契約は原則として一般競争入札を実施しなければならないと法で決められています。指名競争入札と随意契約とせり売りは例外的手段なのです。
ひとつずつ説明していきます。
一般競争入札
一般競争入札とは、不特定多数の者を競争させて、最も有利な条件を提示した者と契約を結ぶ方法です。通常は価格競争のみですが、「総合評価方式」を導入している自治体もあります。(後述します)
一般競争入札の場合はまず最初に契約・入札内容を「公告」をします。ということは公告のために日数を要しますし事務作業も比較的多くなりますね。審査会とか面倒くさい。
自治体によって少しルールが違っていて、いきなり入札を行う場合と、登録業者制度を利用したりして事前に参加申請を経てから入札を行う場合があるようです。
【根拠法令】法第234条、施行令第167条の4~第167条の10の2
原則として一般競争入札を行うと述べましたが、実は1721市区町村のうち295の市区町村では一般競争入札が導入されていません(令和2年度総務省の調査より)
制限付一般競争入札
制限付一般競争入札は、成果品の質を上げたり無事に履行させるために、不良業者や不適格業者が入札に参加できないように普通以上の資格要件を付した一般競争入札です。自治体によっては「条件付一般競争入札」と呼んでます。
どんな条件かというと、例えば、地域要件(当該地域に本店or支店or営業所等がある)、同種の工事・業務の実績、配置技術者の資格や免許などですね。競争性を阻害しなければ色々と設定することができます。
正直、今は一般競争入札ってゴテゴテと資格要件をつけるのが当たり前ですし、とくに建設工事や関連のコンサル委託ならほぼ100%制限付になると思います。
【根拠法令】施行令第167条の5
個人的には当たり前すぎて“制限付(条件付)”なんて言葉も必要ないくらいだと思います。無駄だから文字数を削りましょう(/・ω・)/
総合評価方式
一般競争入札において、入札者から提示された「価格のみ」による競争ではなく、「技術と価格」について総合的な評価を行い、最も有利な条件を提示した者と契約を結ぶ方法です。
おもに【標準型】と【簡易型】と【特別簡易型】のような分け方がされていまして、大きい自治体は【標準型】と【簡易型】を使っていて、市区町村は【特別簡易型】を使ってるようなイメージです。
まあルールは多種多様で、どうしてこんなメンドクサイことになってしまったのか5つ以上のタイプを使い分けている自治体もあるほどで、各自治体がより良い方式を模索してルールを作っている状況みたいですね。
詳しくは各自治体のWebサイトにガイドラインが載ってたりしますのでそちらをご覧ください。
横浜市『横浜市総合評価落札方式ガイドライン』
町田市『町田市総合評価方式実施ガイドライン』
参考に、町田市の場合で説明します。町田市では市区町村向けの【特別簡易型】を導入しており、具体的には下記項目を審査するそうです。
[履行能力]工事履行成績、同種工事の実績、配置予定技術者の施工経験及び保有する資格
[社会性]災害協定、環境対策、雇用対策(労働福祉の状況・障がい者雇用)、ワークライフバランス、町田市優秀工事賞
入札者にこれらを証明する資料を提出してもらい、発注者が内容を審査して、不備がなければ得点となります。合計したものが技術点ですね。価格も点数化されますので、価格点と技術点を合計した総合評定値で落札者を決定するわけです。コレが1番簡単な方式です。
【根拠法令】施行令第167条の10の2
面白い制度だと思いますけど、正直もっと簡素化しても良いと思います。誰も言い出せない雰囲気ですね。
事前審査方式と事後審査方式
一般競争入札には「事前審査方式」と「事後審査方式」という言葉が使われることがあります。これは入札参加資格の審査を入札(開札)の前にするのか、後にするのかの違いです。
事前審査方式なら、参加申請がなされた全業者について入札前に資格要件を審査して、適格な業者だけが入札に参加できる方式です。一方、事後審査方式は開札後に一旦落札決定を保留にして、落札候補者のみ資格要件を審査する方式です。もし審査不合格なら2番目、3番目…というふうに次の業者にまわります。
もちろん事後審査方式のほうが事務作業が減るので、効率化のために事後審査方式へ移行する自治体が増えていくと思われます。
指名競争入札
指名競争入札とは発注者が複数の参加者を指名し、入札によって競争させ、最も有利な条件を提示した者と契約を結ぶ方法です。基本的には最低制限価格は設定しないため、単純に最低価格の業者が落札者となります。
一般競争入札との使い分けですが、多くの自治体では金額による基準(規則)があるはずです。例えば「予定価格500万円未満は指名競争入札ができる」というルールがあれば、500万円未満の案件では指名競争入札を選ぶことになります。
ただし、よく勘違いされてますが指名競争入札をしなきゃいけないわけじゃありません。500万円未満でも一般競争入札をしてもいいし、一般競争入札を選ぶ理由はとくに必要なくて「原則だから」でOKなのです。(これは建前の話ですが…)
さて、指名競争入札が一般競争入札と違う点は、なんといっても発注者が入札参加者を決められるところですね。
登録業者制度みたいなもので事前に資格審査を行っており、登録業者の名簿の中から業者を指名することになります。もしくは名簿ではなく契約実績のある業者から選ぶ自治体もあるかもしれません。
規則に指名基準などが決められてることもあるかと思いますし、恣意的な指名をしないように対策はとられていますが、実際のところ事業課内だけで完結させられる場合は色々と恣意的にやろうと思えばできてしまいますね。
メリットとしては、公告をする必要がないので早く契約できることや履行確実性があることでしょうか。他にも、業者側にもメリットがあって例えば一般競争入札では多数の入札参加者がいますから運悪くすべての入札で負けることもあるかもしれません、そんなときに少数で競争できる指名競争入札は業者側にもメリットがあるのです。
事業課で入札する案件は指名競争入札が多いと思います。
ちなみに指名競争入札を導入していない自治体もあります。H31長野県の調査によると広域自治体でも9府県では導入されていませんでした。
【根拠法令】法第234条、施行令第167条、第167条の11~13
公募型指名競争入札
公募型指名競争入札とは、入札参加希望者を募り、資格要件を満たす業者を指名してから競争入札をおこなう方法です。希望型指名競争入札と呼んでる自治体もあります。
2つのパターンがあって、
①参加の資格要件を満たす業者をすべて指名するパターン
②入札参加者の数を制限して指名するパターンがあります。
①参加の資格要件を満たす業者をすべて指名する場合は、たぶん一般競争入札(事前審査方式)と本質的な違いはないと思います。Webサイトで公募したりするけど、正式な公告手続きまではいらないので多少事務がラクという判断で一般競争入札に切り替えていないと思われます。
②では指名業者数は予定価格によって変えるみたいですね。地理条件や実績などを考慮して指名されます。
この方式は一般競争入札への過渡期に用いられてたり、逆に一般競争入札のデメリットを解消するために指名競争入札を復活させて運用している自治体もあるようです。
一般競争と指名競争のイイトコ取りをした制度ですが、個人的にはなるべくイレギュラーな方式は無くした方がいいんじゃないかなーと思います(;´・ω・)
随意契約
随意契約は、競争入札を行わずに任意の相手と契約する方法です。随契と呼びます。
せり売りは例外として、競争入札をしないものはすべて随意契約ということになります。
契約手続きが最も簡単ですし、信頼出来る業者さんを選べるので安全な方法です。一方で、公平性や透明性には欠けてしまいますね……。
施行令第167条の2に掲げられているパターンによって1号〜9号随契と呼ばれますが、ここでは詳細の解説はしません。 °(°´ᯅ`°)° 。
【根拠法令】法第234条第2項、施行令第167条の2
随契のなかでよく聞く方法(専門用語)を説明しておきます。
見積合わせ
競争見積と言ったりもします。
随契は競争入札をしませんが競争性はあった方がいいので複数者に見積りを出してもらい安いところと契約します。見積合わせが随契の基本です。
最も使われるのは金額基準の1号随契です。市町村なら130万以下の案件ですかね。金額が少ない場合は、契約書の作成を省略して「請書」による契約になったり、徴取した「見積書」による契約になったりします。(自治体の規則次第です)
横浜市のように「公募型見積合わせ」という方式もあるようです。
単独見積
一者随契、単独随契と言ったりもします。
見積合わせができない場合は、単独見積になります。しかし、公正性がありませんので、しっかりと第三者に説明できる理由がなければいけません。
例えば、2号の製造者しか修理できない場合や、5号の緊急のときは一者随契になることがありますね。
コンペ方式
コンペ方式とは、最も優れた企画(アイデアやデザイン)を提案した者と契約を結ぶ方法です。企画提案方式とも呼ばれます。
競争入札と似ていますが、仕様書と予定価格に基づく価格競争ではなく、提案された企画案によって競争させて契約相手を決定します。契約した後に受託者に詳細の仕様書を作成してもらうのです。
どんな案件でコンペ方式を採用するのかイメージしづらいかもしれませんが、例えば、漠然とした下水道をテーマにしたイベントを開催したいなーというときですね。専門業者に委託することになりますが、そのイベント企画内容そのものが一番重要ですから、発注段階では詳細の仕様書を決めることができないのです。企画提案のために必要なイベント目的と基本仕様書、提案上限額○○円、事業規模○○円などは先に決めておきます。
土木分野ではあまり事例はないと思います。
プロポーザル方式
プロポーザル方式とは、最も優れた企画力がある者と契約を結ぶ方法です。技術提案方式とも呼ばれます。
コンペ方式との違いは、コンペ方式は「具体的な企画案」で競争させますが、プロポーザル方式では「企画する能力」で競争させるところですね。つまり、能力を示す資料を提出してもらいます。
こんな感じで解説していますが私も担当したことないのでよくわかっておりません(笑)
技術提案と聞くと総合評価方式とも似ている気がしますので、3つの方式を表に整理してみます。
総合評価方式 | コンペ方式 | プロポーザル方式 |
---|---|---|
発注者が示す仕様書について、提案された技術力と価格を総合的に評価する | 提案された企画案を評価する | 示された能力を評価する |
契約後、仕様書を正確に履行する | 契約後、最も優れた企画案をもとに仕様書を作る | 契約後、最も優れた能力を持った者が仕様書を作る |
せり売り
せり売りは簡単に言うとオークションのことですね。
動産の売り払いのときだけ使われる方法で、競争者が口頭で価格を表示して、他の競争者がさらに有利な価格を口頭で表示しなければ落札するってやつです。
まあ、土木公務員が実施することはないと思います(;´・ω・)
【根拠法令】法第234条第2項、施行令第167条の3
まとめ
長くなりましたが、最後にメインの3つについて表に整理します。(仙台市のWebサイトから引用)
契約の方法 | 概要 | 長所 | 短所 |
---|---|---|---|
一般競争入札 | 契約に関する公示を行い、不特定多数の者の価格競争により、契約の相手方を定める方法 | 相手方の選定が公平である。競争性が高い。 | 契約締結までの多くの日時と経費を必要とする。不誠実な者が参加しやすく、契約の履行に不安が生じる恐れがある。 |
指名競争入札 | 競争に参加する者を指名し、その者の範囲内の価格競争により、契約の相手方を定める方法 | 不誠実な者の参加を防ぐことができるので安全性が高い。契約手続きに日数を要しない。 | 指名の運用によっては、契約の相手が一部の者に偏重する恐れがある。 |
随意契約 | 任意に特定の相手を選択して契約を締結する方法 | 契約手続きが最も簡易。相手の技術力、信用、資力などを勘案して相手方を選択でき、最も安全。 | 運用を誤ると相手が固定化する恐れがある。価格競争が行われないので、競争による価格低減効果が期待できない。 |
どれもメリット・デメリットがありますね。
個人的には、なるべく方式は少ないほうが良いと思います。訳の分からない方式をどんどん増やさないでほしい(;´・ω・)
あと本記事では解説しませんでしたが、適正に入札をおこなうために、低入札価格調査、最低制限価格、失格基準価格などの入札にまつわる制度もあります。気が向いたら記事にしようと思います。
業務の役に立ちましたら幸いです。ではまた。
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