こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
土木公務員のための積算入門です!
さて、今回は積算業務で使う本を、つぎの5つに分けて紹介します。
積算基準(歩掛)についての本
施工単価についての本
材料単価についての本
機械経費についての本
積算の勉強をするための本
なぜか工事発注をすることになってしまった事務職さんや、施工会社の現場監督さんにも参考になるかと思います。
勉強するための本も最後に紹介しますね。
積算基準(歩掛)についての本
まずは積算基準についての本からです。
積算とは何なのかについてはこちらの記事で解説しています(*’ω’*)
積算基準についてかんたんに説明すると・・・
工事費を構成する3つの単価は、労務・材料・機械ですね。
また、工種毎にそれぞれの単価を組み合わせる数量表のことを歩掛といい、さらに、単価と歩掛によって算出された直接工事費に、掛け率を用いて算出したものを諸経費と呼びます。諸経費は会社のマネジメント料みたいなものと思ってもらえれば。
ということで、積算基準とは、標準歩掛による工事費の積み上げ方、そして、諸経費の計算方法を示したものになります。
歩掛表が分かれば、工事の積算はできます。
土木工事積算基準(黄本)
国の直轄工事、地方自治体の補助事業では、国交省が発表している積算基準を参考にします。
「国土交通省土木工事積算基準」というタイトルで毎年発行されていまして、びっくりするくらい黄色なので黄本と呼ばれます。
毎年5月発売で、地方最大級の本屋なら置いてあるはずです。
この本の特徴は、一般土木の基本的な内容しか記載されていないこと、歩掛の資料としては7月発売の赤本より早く発売されることです。
土木工事標準積算基準書(赤本)
黄本には載ってないマイナーな工種・歩掛や補足説明まで加えたものが、「国土交通省土木工事標準積算基準書」というシリーズで、赤本と呼ばれたりします。
逆に、黄本が赤本の抜粋と考えてもいいかもしれませんね。赤本は、普通の本屋やAmazonには売ってなくて、ネットの専用サイトでしか購入できないようです( ゚Д゚)
機械編とかもあるみたいですが、土木公務員が使うとしたらこちらの3冊かなと思います。
「国土交通省土木工事標準積算基準書(共通編)」
「国土交通省土木工事標準積算基準書(河川・道路編)」
「国土交通省土木工事標準積算基準書(電気通信編)」
もし、会社に黄本も赤本もなければヤバい会社なので購入を薦めてください。
自治体ごとの積算基準書
ただし、実のところ自治体では黄本と赤本は使っていません!
積算基準は予算の使い方におおきく関わる最重要事項であるにもかかわらず国の法令で決まっていませんから、自治体単独の予算については、地方自治権に基づいて、自治体ごとに各積算基準書を制定しているのです。わかりやすく言うと、都道府県版の赤本があり、市町村はそれを準用させてもらっています。
ただし、千葉県のようにそのまま国の積算基準書を準用している自治体もありますし、その他の自治体でもほぼ国の準用と思ってもらっていいですよ。
積算基準書には、諸経費の算出方法とルール・標準歩掛などが載っていますので、私たち自治体職員は、積算にあたってはまず積算基準書を読むところから始めます。
いいかげんな部署だったら過年度の設計書をまるごとコピーして積算するように指示されるかもしれませんけど、それはやめたほうがいい。なぜなら工事現場ごとに環境条件が異なり、積算の条件と照らし合わせる必要があるからです。
かんたんな工事であっても、必ず積算基準書の該当するページを一読するようにしましょう。
残念ながら、自治体の積算基準書は書籍化されていませんが、職員以外でも手続きをおこなえば閲覧することができます。例えば、札幌市では【入札参加資格申請システム】にログインすれば閲覧・ダウンロードすることができるようですね。
自治体の工事なら、自治体の積算基準を根拠としてください。
下水道用設計標準歩掛表
一般土木と異なる分野は、さきほどの本には積算基準が載っていませんので、それぞれ確認する必要があります。
まずは、「下水道用設計標準歩掛表」。
文字通り、下水道工事の歩掛が載っている、真っ白な本です。白本とも呼ばれます。
設計積算要領も合わせてご参照くださいませ。
発行図書一覧 | 公益社団法人 日本下水道協会 (jswa.jp)
水道工事実務必携
水道工事は、「水道工事実務必携」という本を使います。
後ろの方に積算基準と歩掛表が載っています。厚労省が管轄している水道分野では、舗装工事は国交省の基準を用いますが、掘削・管工事などは厚労省の基準を用いるんですね( ゚Д゚)
全国簡易水道協議会 – 出版図書 (kansuikyo.com)
橋梁架設工事の積算
橋梁についての歩掛は、一般土木の積算基準書にも記載されていますが、そこに載っていないものは、「橋梁架設工事の積算」を参考にしています。
補修工事用の「橋梁補修の解説と積算」という本もありますが、個人的にはあまり使っていません。
令和3年度版 橋梁架設工事の積算 (tokyo-kansho.co.jp)
造園修景積算の手引き、公園・緑地の維持管理と積算
公園の維持管理については、
「造園修景積算の手引き」(建設物価調査会)
「公園・緑地の維持管理と積算」(経済調査会)
この2冊を使います。
造園修景積算の手引きは、以前は造園修景積算マニュアルという名前でした。
これらの本には、公園・道路の街路樹に適用できる維持管理のための歩掛がのっています。花壇の管理についても使ってますよ。
土地改良工事積算基準(緑本)
土地改良事業、つまり農業土木の専門分野では、農水省が管轄となりますので、国交省の基準は用いず、「土地改良工事積算基準」を準用しています。通称:緑本。
市役所でも農政局などの土地改良の仕事をしている部署では、農業用の水路工事、農道整備などは、こちらの基準書を使っていて、ありがいことに本を買わなくても農水省のサイトですべてダウンロードすることができます。
書籍はこちら↓
農業のスケジュールに合わせて工事をすることが絶対条件。
港湾土木請負工事積算基準
港湾の工事は、「港湾土木請負工事積算基準」を用います。
市役所はあまり管轄しないので、お目にかからない本ですね。
漁港漁場関係工事積算基準
漁港の工事は、こちら、「漁港漁場関係工事積算基準」。
これも見たことないっす( ゚Д゚)
漁港をもっている市町村では扱うことがあるかもしれませんね。
漁港漁場関係工事積算基準 令和3年度版 (tokyo-kansho.co.jp)
治山林道必携−積算・施工編−
森林保全整備事業については、こちら、「治山林道必携−積算・施工編−」
これも(以下略
発行書籍新刊ご案内:治山・林道・保安林関係新刊書籍ご案内 (shinrinkagaku.jp)
とりあえず雑多に紹介しましたが、まだまだ他にもありますよ。
施工単価についての本
つづきまして、施工単価、つまり市場単価と土木工事標準単価が載っている本です。
市場単価
市場単価とは、一般的に市場にて取引される施工単価のことで、歩掛がありません。いまでは、需要と供給で決定された施工単価で下請け契約をされていることも増えてきたので、それを調査したもの。
土木工事標準単価
土木工事標準単価とは、歩掛と材料費などを調査して計算された単価のこと。ただし、その内訳は公表されていません。
この2つの施工単価については、単価決定の仕方がちがうのですが、私たちが扱うときにはとくに気にしなくていいと思います。くわしく知りたい方は本の巻頭のところに調査方法などが載っていますのでご覧ください。
国交省はこの施工単価で積算する方式を推し進めようとしてるみたい。
お馴染みの2冊を紹介します。
土木コスト情報
「土木コスト情報」は、一般財団法人 建設物価調査会が発刊している本です。
土木工事標準単価の工種が多いのが特徴。
2021年10月号時点では、「土木施工単価」のほうには載ってない「漏水対策材設置工・紫外線硬化型FRPシート設置工・道路反射鏡設置工・支承金属溶射工」が掲載されています。
土木施工単価
「土木施工単価」は、一般財団法人 経済調査会が発刊している本です。
「土木コスト情報」には載ってない港湾工事、地質調査の単価が掲載されています。
両書籍とも施工単価がそのまま載ってるので、材料費を足すだけで直工費を出すことができる優れもの(*´ω`*)もし材料費が含まれていればそのまま単価が直工費になる!所属部署のルールを確認して使いましょう。
どちらも四半期ごと(春4月・夏7月・秋10月・冬1月)に発刊されていて、少し違いはありますが、土木公務員が実用するうえではとくに差はありませんよ。
ちなみに、建築工事については「建築コスト情報」と「建築施工単価」がべつにあります。
職場に必ずあるはず!
どんな工種が載ってるか見てみてね。
材料単価についての本
コンクリート2次製品や、ケーブル、木材、照明器具など、いわゆる建設資材の価格が載っている本です。建築も土木も全部載ってます。
こちらも施工単価と同じように、市場調査によって決定されていますよ。
お馴染みですが、施工単価と同じように2冊ありまして、ふつうは両書籍の平均価格を採用します。
月刊なのに1冊が分厚くて、職場のキャビネットを圧迫する憎いやつ。
建設物価
「建設物価」は、一般財団法人 建設物価調査会が発刊している本です。
赤い本。ここに掲載しきれないものはWEB建設物価に載ってまして、私の市役所でも使っています。
積算資料
「積算資料」は、一般財団法人 経済調査会が発刊している本です。
黒い本。こちらは「積算資料電子版」という名前のWEB版があります。
ちなみにどちらとも8月号には巻頭に通常掲載よりも多くの樹木価格が載ってるって知ってましたか?使い慣れたものでも意外と知らないこともあるんですよね(*´ω`*)♪
機械経費についての本
でました、機械経費。これが積算を難しく感じさせている原因かと思います( ゚Д゚)
機械経費の算出方法についてはおいおい解説するとして、
ここでは、その計算過程で使うことになる建設機械の“損料”が載っている本を紹介します。
建設機械等損料表
国交省が発表している建設機械の損料をまとめた本です。
建設機械等損料表。
各都道府県もしくは市役所では、独自の「建設機械等損料表」を公表していて、私たち自治体職員はそちらを使っています。都道府県のサイトからダウンロードできると思います。
ちなみに機械経費は、基本的に積算システム(ソフト)にすでに入力されているので、個々人が入力する必要はないのですが、歩掛見積をとったり、自分で歩掛をつくったりするときは、一から機械経費を計算しなきゃいけません。
手計算だと大変なので、たぶん職場にExcelで計算フォーマットを作ってあるはず。過去のフォルダを探してみましょう( ゚Д゚)
土地改良工事積算基準(機械経費)
農業土木のほうで使うものです。
土地改良工事積算基準(機械経費)には、トラクタやレーキドーザなどの農用地整備用機械の損料が掲載されています。
推進工事用機械器具等損料参考資料
その名の通り、推進工事のための損料資料。
「推進工事用機械器具等損料参考資料」
推進工事の積算は、とにかく機械の損料を積み上げていくのでかなり特殊です。協会の歩掛などを見つつ、必ず損料表を確認することになります。
奥が深いジャンルなので安易なことは言えませんが( ゚Д゚)笑
4-1_推進工事用機械器具等損料率参考資料 2021年度版 – 日本推進技術協会販売サイト (suisinkyo.shop)
他工事でもたくさん機械経費の参考書はあると思いますが、これだけ紹介しておきます。
積算の勉強をするための本
最後に、積算について勉強したい人向けの本を紹介したいと思います。
まずは職場の本棚にある入門書を読むこと!が一番なのですが、本ブログでも解説していく基礎的なことだけで、それだけでは実用が難しいかもしれません。
一応、公式のおすすめ解説書をご紹介しておきます。
市町村では積算の研修はございません。
土木工事積算基準マニュアル
土木工事積算基準についてのわかりやすい解説書は、「土木工事積算基準マニュアル」です。
歩掛、機械損料、材料費などを使った実際の積算例がのっていたり、いまいち理解しづらいところを写真や図解も入れて解説してくれている一冊です。
かなり大事な本ですが、市役所には無かったりして、市役所職員は見たことないかもしれません…(´・ω・`)
本気で積算の勉強をやりたい!って人は、教科書となりえる本なのでちょっと高額ではありますが買ってみるといいでしょう。地方最大級クラスの本屋なら置いてありますので中身を見てみてください。
よくわかる建設機械と損料
建設機械についてくわしく知りたい方は、「よくわかる建設機械と損料 2020」がオススメ。(まだ2020が最新っぽい)
令和2年度版の建設機械等損料表の解説書という扱いです。
建設機械器具について概要と特徴を写真・図入りで紹介していて、主要な建設機械についてはメーカー・型式名を表にして紹介してあります。
よくわかる建設機械と損料 2020 | 政府刊行物 | 全国官報販売協同組合 (gov-book.or.jp)
写真がありがたい。
下水道工事積算の実際
一般土木とすこし違う下水道工事の積算については、「下水道工事積算の実際」で勉強するといいかと思います。
工事発注部署には必ず置いてあり、みんな参考にしてるはずです(*´ω`*)
おわりに
長くなりましたが、積算についての本をたくさん紹介してみました。
一般土木と呼ばれる河川・道路などは、ここで紹介したふつうの基準書(赤本・黄本・自治体ごと)でいいのですが、他の分野に配属された場合は分野ごとに積算基準書があり、機械経費などの参考書も違うことが分かってもらえたかと思います。
一方、材料単価、市場単価などの施工単価については共通で用いることができます。
どの分野でも材料費は同じようにメーカーから買うので変わるわけないですもんね。
積算業務の参考になれば幸いです。
では、今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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