間知ブロック積擁壁とは、間知ブロックを1列ずつ積み上げながら裏込めコンクリート等で一体化させた土留め擁壁です。
こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
みなさんは、間知石(けんちいし)って聞いたことありますか?擁壁に使われる材料です。
今日は、間知石と間知ブロック、そしてそれらを使った間知ブロック積擁壁について、どんなものか簡単に解説します。
間知石とは?
間知石とは、土留めや石垣のような擁壁(ようへき)に使われる土木建築材料です。
花崗岩などの石材を約30cmの大きさで四角錐状に加工したもので、壁面が崩れないように横長になっています。
イメージしやすいのは城の石垣かなと思いますが、そこらへんの道路や、河川の護岸でも見かけることができるくらい広く使われている材料です。
ちなみに、間知石の名前の由来は6個並べるとちょうど1間(けん)分の180cmになるからと言われています。1間を知ることができる石ということですね。「尺」という約30cmの尺度もあるのに、なんで「尺石」ではないんでしょうか。城造りのときには「間」が基準だったんですかね。
大きさと形を整えたものが「間知石」で、天然玉石を割っただけの石などは「野面石(のづらいし)」と呼ばれたりします。野面石は現代の土木ではあまり使うことはないと思います。
間知石以外にも、「野面石積み」「崩れ積み」「玉石積み」「小端積み(こばづみ)」「切石積み」などたくさんの石積み法がありますよ。デザイン性を考慮すると施工が難しく高額になります。
間知ブロックが主流
石の加工は大変ですから、昭和30年頃から安く大量生産できるコンクリート製の間知ブロックが開発され、現在ではこちらが一般的に使われています。
へんてこな形をしていますね。
作りやすさと並べやすさと、擁壁にしたときの強さを考えたらこの形に落ち着いたんでしょうね。
表面の加工にも数種類あります。
一般的には滑面ブロックと呼ばれる如何にもコンクリートブロックなものですが、間知石のような“石っぽい”加工を施したものもあったりします。
自然の風景に馴染ませたいときは自然石の様な仕上がりになる間知石タイプを選んだほうがいいかもしれません。(財布と相談して)
間知ブロック積擁壁とは?
間知ブロック積擁壁とは、間知ブロックを1列ずつ積み上げながら裏込めコンクリート等で一体化させた土留め擁壁です。
ひとつのブロックが6個のブロックに接しているため、土圧を均等に分散させる効果があります。
擁壁には重力式擁壁やL型擁壁などの鉄筋コンクリート擁壁、補強土壁などいくつか種類がありますが、5m程度以下の擁壁のなかでは、間知ブロック積擁壁は最も多く使われている擁壁の一つと言えるでしょう。
間知ブロックは、あらゆる箇所に使われています。
・河川、堤防などの護岸
・水路の側壁
・道路工事などの盛土部の土留め擁壁
・橋梁の取付部
・山間部の崖崩れ、落石対策
・砂防堰堤
・宅地、田畑などの敷地造成
なぜこんなに幅広く使われているのでしょう。それだけ選ばれる理由があるからですよね。
メリット
間知ブロック積は掘削土量が少なくて、1個ずつ積むので施工が容易です。
L型擁壁などのプレキャスト製品を用いる時のような大型クレーンなどは必要なく、材料ブロック置き場とコンクリート工の作業スペースさえ確保できればいいので狭い所でも施工可能です。さらに、カーブにも対応でき、そして、一般的に費用も安く済みます。
あとは、コンクリートの平らな壁よりは少し趣がある景観に仕上がりますよね。先ほど紹介したようにブロックの表面を自然石風に加工してあげれば、如何にも自然な工作物を模ることができます。
デメリット
ブロックを斜めに積み上げていくので、段上の敷地面積は狭くなってしまいます。
例えば、宅地造成で擁壁を造るとき、鉄筋コンクリート造擁壁にするかブロック積擁壁にするか、大きく2つの選択肢を持つことになります。
鉄筋コンクリートの方が敷地を広く使うことができますが、施工費用は高くなります。一方、ブロック積は安いですが、垂直に施工することは不可能なので、高低差があればあるほど敷地内の面積が狭くなってしまいます。
公共工事のときは、用地が十分あれば間知ブロック積擁壁を採用したいですね。特に河川護岸などは都市部であっても見た目的にブロック積がいいなーと個人的に思います。直壁の河川(水路)って“大事なもの”を全て捨ててる感じがするんですよね(;´・ω・)
実際カーブを描いたり自由度が求められる河川や、土地を切り開いて新設道路を設計するときは、用地をしっかり確保してブロック積が採用されます。
ブロック製品にも自然配慮型など色んな商品がありますので、採用例が増えたら嬉しいなと思います。
間知ブロック積擁壁の種類
間知ブロック積擁壁にはさらにいくつか種類があり、コンクリート工の有無、並べ方などで分類されます。
まず、コンクリート工の有無から解説します。
練積みと空積み
ブロックの裏込めや目地にコンクリートを施工するものを練積み(ねりづみ)といいます。公共工事では原則、練積みを採用します。一応コンクリート構造物として安定計算ができますよね。強度の担保があるから認められています。
逆に、裏込めにモルタルやコンクリートを使わず、割栗石や砂利を用いて石を積み上げるのを空積み(からづみ)といいます。昔ながらの石垣は空積みの場合も多いですね。
2m以下の小さな擁壁には使われることもあるかもしれません。施工が下手だとブロックがバラバラになっていますから土圧に負けてはらんできたりしやすく危険な擁壁と言えるでしょう。注意しましょう( ゚Д゚)
ちなみに、練積みでもコンクリートの後ろには割栗石や砂利を配置して、コンクリートに水抜き穴を設置します。このような裏込め材を施工しなければ水が溜まり水圧が大きくなって擁壁によけいな負荷が掛かりますよ。
ちなみに、間知ブロック練積み造擁壁は「けんちぶろっくねりづみぞうようへき」と読みます。専門用語は読み方が難しいですね(;´・ω・)
布積みと谷積み
ブロックの並べ方でも種類分けがされています。
水平に並べていくのは布積みと呼ばれています。または、整層積ともいいます。
目地が一直線になるので歪みが生じやすく、比較的弱いとされています。
一方、斜めに並べていく方法を谷積みといいます。こちらは矢羽積みと呼ばれることもあります。
公共工事では原則、谷積みを採用します。なぜなら布積みよりも少し強いんですよね。あと、「道路土工一擁壁工指針」に規定されていますので(;´・ω・)
他にも特殊なものでは、亀甲積などもあります。これは石の面を正六角形に加工して積み上げる方法です。ブロックではほとんどないと思います。最も美しいデザインとも言われますが、施工費用は高額になるらしいです(>_<)
石積みやレンガで住宅を作る文化がなかった日本では、城郭など特殊な工作物を石で積み上げる独自の石垣文化が形成されたようです。
並べ方でデザインも選べるのは面白いですね。
間知ブロック積擁壁の標準図
ブロック積擁壁は、「道路土工一擁壁工指針」において、「背面の地山が締まっている切土部や比較的良質な裏込材で十分に締固めがされる盛土部等、背面地盤からの土圧が小さい場合に適用できる。」と規定されています。
そして、この条件を満たす場合のブロック積擁壁の設計は、従来から用いられている「経験に基づく設計法」によるものとされていますから、設計計算を行なう必要はありません。
しかし、土圧が小さいか不明確な場合などは安定計算をしてください。公共工事の設計では超小規模な工事以外はコンサルに安定計算をしてもらってると思います。単純な条件なら手計算(エクセル等も)でも可能です。
積算基準書には下のような参考図が載ってます。
こんな感じで胴込材や裏込めコンクリートと、参考図には載っていませんが止水コンクリートと水抜き穴も設置しましょう。
裏込めと、基礎と天端コンクリートをしっかり作って擁壁を一体化させることが大切です。
ちなみに、壁面の法勾配が1割より緩やかな場合をブロック張工、これより急な場合をブロック積工に分けていますので間違って呼ばないようにしましょう。
参考になる施工動画
施工方法は文字でつらつら書くより、実際に見て学んだほうが100倍わかりやすいと思います。意外にブロック積擁壁の施工動画はたくさんあるんですよね。
石屋さんが間知ブロックをさくさくと積み上げていく様子はなかなか気持ちがいいものです。ちなみにブロック1個は40㎏くらいの重さがあります。
よく道端で見かけるあの変哲のないブロック積がどのように作られているのかよくわかります。ぜひご覧になってください٩(ˊᗜˋ*)و
おわりに
間知石・間知ブロック積擁壁について、簡単に説明してみました。
皆さんの街の道路や川の護岸で見かけるブロック積擁壁がどのようなもので、どのような施工をされているのか分かりましたか?
間知ブロックは安全な護岸を作ったり、山が崩れるのを防いでくれてたり、宅地や道路にもたくさん使われています。街づくりに欠かせない材料なんですね。
散歩したり河川敷で遊ぶときに、いつも見ていた風景が少しだけ違って見えるかもしれませんね。
急に石を積まなければならなくなった人にオススメな本です↓(そんな人おるのか?)
では今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
コメント
わかりやすいブログをありがとうございます! 仕事で受け取りました、「敷地境界練ブロック積工事」という書類の件名が「境界線」という漢字間違いではないかどうか調べている時に遭遇しました。勉強になりました。
擁壁は、地味な建造物ですが、山が多く坂の多い日本ではとても重要だと思います。個人的にも実家に自然石積み擁壁があるので、将来どうなるのか気をもんでおります。。。
亡き父が土木公務員だったこと、自分もがんばって働く女子だったことから、カミノさんにとても親近感を感じまして思わずコメントしてしまいました。がんばってください! これからもこちらのブログで勉強させて頂きます。失礼しました。
旅する宅建士さん、コメントありがとうございました。
擁壁は至る所にありますから建設業界ではよく関わることになるんですよね(;´・ω・)私の記事が何かお役に立てたなら幸いです。
土木のこともっと書いていきますのでよろしくお願いします(*’ω’*)
新築建売住宅の購入を検討しており、敷地内に擁壁があったので、色々調べてここで勉強させていただきました。
見た目から間知ブロック積擁壁だと思うのですが、汚れてきた際に高圧洗浄機で綺麗にするのは問題ないのでしょうか?
よく動画などで綺麗にしている様子をみることがあり、採光のためにも、白い状態を少しでも維持したいと考えていますす。
新築建売さん、
私は擁壁の専門家ではないので迂闊なことは言えないのですが、表面を高圧洗浄機で洗うくらいなら大丈夫だと思いますよ。ただし、コンクリートブロックは壊れたりしませんが、目地が痛んだり削れたりする可能性はあります。
はじめまして。擁壁の寿命についてご教示いただけないでしょうか。
3メートルほどの高さの間知石擁壁(谷積み、青い自然の石素材)がある土地を購入します。その上に家を建てようとしているのですが、擁壁は昭和47年に造られたもので、寿命が来ていたらどうしようかと不安です。家を建てる前にやり直すべきか否か。やり直す場合、金額も大きくなりますので・・・・
擁壁自体は宅地造成記録が役所に残っており、水抜き穴もあり、亀裂や孕みもなく非常に美しい状態のものです。ハウスメーカーの専門の人に見てもらいましたが、問題はなさそうということでことでした。それでも50年近くたっていますので擁壁の寿命が気になっています。擁壁の寿命は上記の間知石で保存状態が良い場合でどれぐらいの期間持つものでしょうか?
擁壁のある土地は見晴らしがよい土地さん、
コメントありがとうございます。擁壁の寿命ですが、私は専門家ではないのでお答えできません。
ちなみに、擁壁みたいな構造物は現場条件によって壊れる・危なくなる期間は大きく変わりますので、
一概に寿命○○年みたいな答えをできるものではないと思います。モノが保てばずっと保ちます。
亀裂や孕みもなく非常に美しい状態であれば一応安心ですが、新規造成のときに擁壁にいままで
掛かっていなかった重機や車両の荷重などを掛けたりしないように注意も必要です。
水抜きの詰まりをとったりメンテナンスをしてあげてください。
参考にならず申し訳ないです。