情報公開制度(開示請求)の基礎知識

仕事全般

こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。

今日は土木技師の皆さんに向けて、地方自治体の「情報公開制度」について解説します。

…お堅い法律の話ばかりではありませんので、気軽に読んでみてください。

情報の開示請求とは?

情報公開制度とは、市民からの請求に応じて、行政が持っている公文書を開示する仕組みのことです。
そして、請求することを一般的に「情報の開示請求」と言います。

なぜそんな制度があるかというと、行政を透明にして、市民の信頼を保つためですね。

ルールは自治体ごとにバラバラ…

じつは、情報公開制度のルールは全国一律で決められているわけではなく、自治体ごとの情報公開条例によって定められています。なぜかというと、自治体のほうが国よりも早く制度化し、独自の条例をどんどん作ったから。後になって法律でまとめるのは非合理的だったのです。

ということで、基本的な思想はほとんど同じだと思いますが、条例の細かい部分(請求者の範囲、対象文書、非公開要件、審査請求手続きなど)は異なっていますし、情報公開に対する姿勢は自治体間でも差があるのが実際のところです。
詳しくはコチラ↓
自治体の情報公開制度の現状と課題 | 自治体問題研究所(自治体研究社)

実務にあたるときは、必ず情報公開条例や事務マニュアルで確認してくださいね。

カミノ
カミノ

国の行政機関は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(通称:情報公開法)」が根拠となります。

手続きの流れ

ちなみに、手続きの流れを説明しようかなと思ったんですが、自治体ごとに多少異なるでしょうし、あまりに簡単すぎる請求方法が市民にバレたら公務員的には困るので割愛させてください。

というのは冗談で、手続きを超簡単に説明します。

まず、請求者は所定の請求書1枚を提出したり、または電子申請をするだけです。手数料は数百円かかることもあります。別途印刷代などが掛かります。白黒コピー1枚10円、カラーコピー1枚50円くらいでしょう。なお、最近は紙のコピーだけではなく、CD-Rやネットシステムでのデータ受け取りを選ぶことができる自治体もあります。

開示側、つまり役所側の流れですが、開示請求が来たら2週間程度以内で該当する書類を探し出し、開示決定通知の決裁をとり、開示を行います。請求の内容について不明点があれば請求者に直接連絡をとって「○○と書かれているのは△△のことでよろしいでしょうか?」みたいに確認することもありますよ。

カミノ
カミノ

ほんの少し費用は掛かりますが、簡単に開示請求することができます。

どんな情報が見られるの?

では開示請求の対象文書について説明します。

見られる情報は公文書(または行政文書)と呼ばれるものです。※公文書管理法では公文書と行政文書は異なる意味ですが、ここでは使い分けは気にしません。

公文書とは?

そもそも公文書って何だ?ってことを厳密に説明すると面倒なんですが…。条例には次の3要件が定義されていると思います。

公文書(行政文書)とは

①職員が職務上作成・取得したもの
②組織的に用いるもの
③組織的に所有・管理しているもの

ざっくり具体例を示すと、公文書は決裁文書・会議の議事録や録音データ・契約書・図面・請求書・申請書・設計成果品・メールデータなどなど。電子データは当然のことながら、業務上のメール文面も含まれますのでかなり幅広い対象となることが分かると思います。

逆に公文書にあたらないものは、雑誌・新聞・個人のメモ・一時借用中の書類など。

①②③の要件は公文書の定義なのですが、稀だと思いますが開示請求の対象をさらに限定している場合もあります。例えば、決裁文書に限るとか。

カミノ
カミノ

開示請求を受けたときは、今一度まずは公文書とは何か?条例で定めている対象文書は何か?を確認することが大切ですね。

土木部署で多いのは金入設計書

さて、土木部署では工事の金入設計書の開示請求を受けることが多いと思います。というか役所全体で見ても圧倒的に金入設計書の請求が一番多いです。

情報提供サービス(後述します)がある自治体の場合は、当初の金入設計書は情報提供サービスで公開されますが、おそらく変更設計書は開示請求でなければ出てこないと思われますので、開示請求されることになります。

金入設計書とは、工事金額を積算した設計書のうち、施工単価や詳細条件などの項目を全て表示したものをいいます。入札公告のときには施工単価などは消してある(官積算ソフトで消えた状態にできる)ため、受注者や入札参加者たちは開示請求によって実際の積算単価を確認するのです。

さて、この金入設計書についても、自治体ごとに対応は異なりまして、大きい自治体は全部開示しますが、小さい自治体は開示しなかったり、単価黒塗りだったり、そもそも開示請求を受け付けていなかったりします。よく分かりませんが色々とローカルルールがあるみたいです。

余談ですが、物価本を発行している某団体は、物価本に記載されている単価は独自調査で作られた著作物だから、その単価をぽんぽん公開されてしまうことをあまりよく思っていないみたいです。言われてみれば確かにそのとおりなんですけど、公務員の立場からすると市民の知る権利や行政の説明責任も大事なんですよね…。権利と権利の衝突は難しい問題です…。

黒塗りってどうなの?

開示請求が来たらそのまま開示しないこともあります。

対応について
①まるごと開示できるとき「全部開示」
②請求された文書が存在しないとき「文書不存在」
③文書に不開示情報が含まれているとき「部分開示」または「全部不開示」
④文書の存在すら示せない「存否応答拒否」

などのパターンがあると思います。
参考に目黒区のR6実績をリンク載せておきます。
令和6年度 情報公開・個人情報保護制度の運用状況 | 目黒区

不開示情報とは、いくつかありますが、一番多いのは個人情報ですね。
・特定個人を識別できる情報(個人情報)
・法人等の正当な利益を害するおそれのある情報(法人情報)
・公共の安全と秩序維持に支障を及ぼすおそれがある情報(治安維持情報)
・行政の意思決定の中立性を不当に損なうおそれのある情報(審議・検討情報)
・行政の事務等の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある情報(行政運営情報)

などがあります。一例ですが、ちょっと曖昧な表現がありますよね。

不開示情報が含まれている箇所は黒塗りの処置をします。あえて具体例は載せませんが、ページまるごと、あるいはページの大部分が黒塗りのものは「のり弁当」と揶揄されることもありますね。

「検討中なので開示できません」や「協議相手との信頼関係に支障が出るので開示できません」は不開示理由として市民の納得が得られにくいものですね。

開示した公文書が黒塗りされていて核心部分が読み取れなければ、請求者の不信感は募ってしまいます。実際私たち土木系部署ではあまりガッツリ黒塗りするような文書が請求されることは少ないのですが、たまにはありますし、ニュースとかで騒がれるマスコミが入手した文書が黒塗りだらけだと「なんだかなー」とは思います。でも、役所内部からすると、何らかの理由があるんだろうなーと擁護する気持ちもあります。民間の方でもよくよく想像してみればわかると思いますが、業務のすべてをオープンにするというのは相当大変なことなのです。

黒塗り(不開示)に納得できない場合は、不服申し立てとして審査請求をすることができます。それを受けて、第三者機関である情報公開審査会などが「公開すべきかどうか」を判断してくれます。行政だけの判断で終わらないところがポイントです。

なんでも開示請求していいの?

情報開示は原則、だれでも、なんでも請求していいです。該当する文書がなければ文書不存在として回答するだけですから。(条例で範囲を制限している場合もあります)

「なんでも請求していい」について、面白い記事がありますのでご紹介します。開示請求の理解が深まると思いますから、ぜひ読んでみてください。「宇宙人からの攻撃を想定したマニュアル」を内閣官房と防衛省に開示請求したらこうなった – 登 大遊 (Daiyuu Nobori) の個人日記

妨害に利用する人も…

さて、嫌な話もしておきましょう。

だれでも、なんでも請求していい。

この開示請求権は結構えげつなくて、例えば、あなた1人で100の自治体に「現場猫に関する行政文書すべて」みたいなめちゃくちゃなオーダーも請求できちゃうのです。(こういうイタズラはやめてくださいね)

公務員はマジメなので全庁的に照会をかけて、各課は所管する文書がないか確認しますし、見つかった場合も不開示部分(個人情報など)がないか一文ずつ確認し、非開示部分は黒塗りの処置をします。民間の方には想像できないかもしれませんが、この作業を通常業務と並行してやらなければならないのでとんでもない負担なのです。

そして、請求内容を抽象的にしたり膨大な文書にしたり存在しなさそうな文書にすることで紙切れ一枚で役所職員たちを長時間拘束することが可能です。

このように、強力な請求権を利用して、実際に妨害・嫌がらせをやってくる市民もいるらしいので(マジで○○ですね)、一定の制限を設けたほうがいいかもしれませんね。

情報提供も増えています

最近は、一歩踏み込んだ「情報提供」も増えています。

①市民からの申込みに応じて提供するパターンと、②役所側から自主的に公開しておくパターンがあります。前者は情報公開条例に基づく行政処分ではなくなるので、事務などを簡素化できるメリットがあります。後者は、つまり、従来は情報開示請求を受けなければ出していなかったような内部情報をあらかじめホームページなどに掲載するものです。

さきほどチラッと触れましたが、工事の金入設計書を電子入札システムなどで契約後に公開している自治体も増えています。これは別にやらなくても仕事は回るのですが、少しでも事業者側の負担を減らすために、行政の透明性確保のために、あえて実施しているものです。

今後は金入設計書に限らず、行政の内部情報を提供するサービスは増えていくと思います。金入設計書くらいなら別にいいのですが、え?それ全部公開するの?みたいなサービスもすでにあります。一度始めてしまえば廃止になることはめったにありません。むしろサービスをより良くしようと、原課の負担がどんどん増えていく傾向にあります。いずれ役所全体で破綻すると思います。

なんかブラックな〆になってしまいましたが、では、今日はこのあたりで。

業務の参考になりましたら幸いです。

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