設計図書とは、工事(委託)内容を業者へ示すために作成する「図面」と「仕様書」のことです。
こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
今日は工事や委託を発注する際に準備する3つの書類について解説します。
当たり前な話ですが、発注するときに公表する資料で、それをもとに契約し履行してもらいます。ですから、なぜ作る必要があるのか?何を書くのか、をしっかりと理解して作成しましょう٩(ˊᗜˋ*)و
自治体によって入札ルールが違うため、細かいところは違うと思いますが、基本的に共通するところを説明します。
設計図書とは?
設計図書とは、工事(委託)内容を業者へ示すために作成する「図面」と「仕様書」のことです。
図面と仕様書、そして参考図書である「設計書」は、発注するときに公表・配布され、その内容を確認してから業者が競争入札に参加するか決めることが出来ます。
※設計書は、工事費内訳書・金額抜き(金抜き)設計書などと呼ばれます。
契約図書=契約書+図面+仕様書
設計図書=図面+仕様書
参考図書=設計書
他に現場説明書や数量総括表なども公告資料とされることがありますが、取り扱いは各発注者で異なると思います。
民間工事では、工事内容の詳細が決まっていないまま契約し施工を始めることが多々ありますが、官公庁の工事ではありえません。必ず細かいところまで決めた状態で準備し、予定価格を算出してから入札・契約をするのです。災害復旧などでは概算発注を行うこともありますが。
設計図書の定義については、建設工事の工事請負契約書の約款第1条に書かれています。例えば、東京都の契約書では次の通り。
第1条
工事請負契約書(東京都 令和2年度)
発注者及び受注者は、契約書及びこの約款(以下「契約書」という。)に基づき、設計図書(別添の図面及び仕様書(この契約の締結時において効力を有する工事標準仕様書が別に存在する場合は、これを含む。)をいう。以下同じ。)に従い、日本国の法令を遵守し、この契約(契約書及び設計図書を内容とする工事の請負契約をいう。以下同じ。)を履行しなければならない。
このように、厳密には「図面」と「仕様書」が設計図書とされています。
ただし、参考図書である「設計書」も施工数量を工種毎に分かりやすく明記したものなので、重要であり、業者さんは設計書を見て入札参加するか判断することもあります。
というわけで、3つの書類を、ひとつずつ見ていきます。
設計書
設計書とは、工事関係の設計金額(予定価格)を算出したものです。工事費内訳書などとも呼ばれますね。
積算システム(ソフト)に数量表の数量を入力して作成します。
積算システムで作られたものは、工種項目ごとの金額計算の手順が読み取れるようになっていて検算や説明資料としても使いやすいようになっています。
積算については、積算入門というカテゴリーでくわしく説明しています。ぜひご覧ください(*’ω’*)
ちなみに積算システム(ソフト)は、ATLUSやGAIAなど沢山の製品があります。みなさんの役所はどの製品を使ってますか?
仕様書
仕様書とは、工事の決まり事、例えば、現場条件、施工方法、品質基準、部品や材料の質・性能・メーカーの指定、留意事項などを記載したものです。
共通仕様書(標準仕様書)・・・自治体の建設工事全般に適用する仕様書のことで、一般的な工事の仕様を明記します。
特記仕様書・・・その工事独自の仕様をまとめたもので、現場特有の施工条件や、留意事項、特別にしてほしいことなど、ローカルルールを記載します。
契約した後に、「あ、仕様書には書いてなかったですけど、〇〇〇もやってほしいんですよ」なんて言ったら業者は「は?ぜんぜん話が違うじゃないか」とトラブルになってしまいます。
共通仕様書は自治体が公表していますから個人で改変することはできませんが、特記仕様書は自由に作ることが出来るので、工事中に気を付けてほしいことや特別にやってほしいことがあれば必ず記載しておくようにしましょう。
他の工事の特記仕様書を流用して作成するパターンが多いと思いますが、仕様書を疎かにしてはいけません!自分でルールを作れるというのは、発注者の醍醐味ですので、抜けがないかしっかりチェックして、正しい目的物が出来上がるように工夫しましょう。強い制限を加える場合は係長や課長に相談してね。
でも、あまりに仕様書で制限をかけると自由で効率的な施工ができなくなる場合があるので、本当に必要な記載以外は削るようにしましょう。
図面
図面(設計図)は、文章だけではわかりづらい工事内容を図面に描き、設計内容を説明するものです。業務委託では必要ない場合もありますのでそのときは位置図(案内図)だけを用意します。
数量や仕様を図面に書き込み、使う材料の規格や計画寸法、施工手順などを読み取れるようにする必要があります。なるべく図面を見ただけで施工できるようにしたいですね。
かなり雑な図面で発注し、受注者にあとから作ってもらうというやり方をする人もいますが、それは発注者としては効率的かもしれませんが正しい方法ではありません。
自分が施工をイメージできない図面で発注してはダメです。
設計図書のチェックについて
設計図書を作るために、まずは現場調査や委託成果品の確認です。それから図面と照らし合わせながら、数量表と根拠資料を作成し、数量が固まったら積算をして設計金額を算出します。特記仕様書に必要な記載を施し、これで設計図書が完成です。
はい、この設計図書をもって、やっと発注できます٩(ˊᗜˋ*)و
発注手続きの起案をしてから公告・入札を経て、契約するまでに1~2ヵ月の期間を要しますから大急ぎで発注したいですよね?
でも、その前に入念に設計図書を照査しなければなりません。
町役場などでは技術者不足で設計担当者だけがチェックをする役所もあるようですが、なるべく同僚や上司にダブルチェックをお願いしましょう。お互いに目をつけるポイントが違ったりして、やっぱり間違いが見つかるもんなんですよね。
また設計の根拠資料等はいつでも見返せるようにきれいに整理しておきましょう。
公表されている設計図書を確認する
設計図書は入札公告と同時に公表されます。設計書は金額が抜かれたものですね。(施工単価は未公表なので。)
その方法は自治体によっては様々ですが、普通は電子入札サービスからダウンロードすることができます。電子入札サービスは競争入札参加資格者として登録された業者だけがログインできます。
また、自治体によっては、役所まで行って配布を受けないといけないところもあるようですが、本当なんでしょうか。大変すぎじゃないですか?
システムは職員も閲覧できたりしますので、他の人がどんな設計図書を作成しているのかを確認するといいと思います。別の部署の設計を見ると様式が違ったりして参考になるし、建築・設備・電気の設計図書は土木ともまったく違うことがわかって面白いですよ。
おわりに
ということで、今回は当たり前な事柄ですが、事業課と呼ばれる工事(委託)発注部署に転属してきた1年目の職員に必ず押さえておいてほしいところを解説しました。
こういうことって誰も教えてくれなくて辛い思いをするんですよね…。
適切な発注書類を作るようにしましょう。
では今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノシ
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