こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
土木に携わる方のための積算入門です!
ここでは、請負工事費の構成について、かんたんに説明します。
請負工事費とは?
請負工事費とは、工事の施工に要するすべての費用のことです。
公共工事は、昭和初期までは直営の労働者によって行われていましたが、現在ではほぼすべてが請負方式で施工されています。請負方式では公平性のために競争入札を行う必要があり、「請負工事費」を算出してから、工事請負費がそのまま入札のための予定価格になります。
請負工事費をざっくり説明すると、構成する3つの単価は、労務・材料・機械ですね。
工種毎にそれぞれの単価を組み合わせる数量表のことを歩掛といい、単価と歩掛によって算出された直接工事費に、掛け率を用いて算出した金額を諸経費と呼びます。諸経費は会社のマネジメント料みたいなものと思ってもらえれば。
さらに、それらの合計額に消費税が上乗せされて、請負工事費の完成です。
請負工事費=直接工事費+諸経費(会社のマネジメント料+消費税)
まずはこのイメージで大丈夫です。
簡単でしょ?(*´ω`*)
金額を積み上げていくことを積算とよびます。積算の目的についての解説記事はこちらです。大事なテーマなのでぜひ読んでください(*´ω`*)
請負工事費の構成
大きなイメージを作ってもらえたところで、実務で必要となる詳細を解説していきます。
積算基準書には、こんな感じ↓の請負工事費の構成ツリーが載っていたりしますが、すごくわかりづらいですよね(;´・ω・) でもこれが全てです。
重要なのは、直接工事費、共通仮設費、現場管理費、一般管理費等で、他の用語はこれらの費用をまとめた言葉ですね。
共通仮設費、現場管理費、一般管理費等、と消費税は、さきほど出てきたようにまとめて諸経費と呼ばれます。役所では単に経費ということもありますが、民間では経費といえば「工事にかかる費用」を総称しますので使うシーンを間違えないようにしましょう。
呼び方は各役所で少し違うかも。
ちなみに直接工事費、間接工事費などの用語は、日商簿記2級から出てきますよ。工業簿記でも出てきます 。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
直接工事費
人・モノ・機械があれば、現場の目的物は出来上がりますよね。
直接工事費とは、工種ごとに必要となる費用のことで、労務費・材料費・機械経費を積み上げて計算します。
例えば、カミノ宅前舗装工Aという作業に、100m2あたり、土木一般世話役1人・普通作業員5人・アスファルト合材10t・瀝青材量100ℓ・振動ローラ運転1日・振動コンパクタ運転1日・諸雑費1式が必要だとすれば、それぞれの単価を当てはめて、掛かる金額が計算できるわけです。
積算基準書には、このような歩掛表がたくさん載ってますので確認してください。
積算で使う参考図書については、こちらの記事で解説しています(*´ω`*)
さきほどの歩掛に、単価を入れ込んだものがこちらです。
名称 | 規格 | 単位 | 数量 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|---|
土木一般世話役 | 人 | 1 | 30,000 | 30,000 | |
普通作業員 | 人 | 5 | 20,000 | 100,000 | |
アスファルト合材 | 再生密粒度As13mm | t | 10 | 10,000 | 100,000 |
瀝青材量 | プライムコート | ℓ | 100 | 100 | 10,000 |
振動ローラ運転 | ハンドガイド式0.5~0.6t | 日 | 1 | 1,000 | 1,000 |
振動コンパクタ運転 | 50~60kg | 日 | 1 | 1,000 | 1,000 |
諸雑費 | % | 10 | 242,000 | 24,200 | |
計 | 266,200 | ||||
1m2あたり | 2,662 |
カミノ宅前舗装工Aの直接工事費(施工単価)が計算されました。舗装工1m2あたり2662円、こんなもんかな?数字はてきとーです。
カミノ宅前は広大なので、約3,700m2の舗装を行い、直接工事費は10,000,000円となったとします。
文字通り、工事に“直接かかる”費用のことですね。
共通仮設費
直接工事費だけしか貰えないのでは、施工会社は大赤字です。なぜなら、労務・材料・機械にかかった費用をそれぞれ労働者や材料屋に支払ったら、何も残らず、逆にマイナスになるから。
直接工事費のほかに施工に掛かっているお金があるんですね。
それらが諸経費というわけ。
まずは共通仮設費から。
共通仮設費とは、工種ごとに消費されるものではなく、現場で共通して使用される費用のこと。
色々なものが含まれるのですが、種類だけはハッキリ分かれています。
この7種類です。
重機の運搬費、準備のためのちょっとした草刈り、防音振動対策、カラーコーン・バリケード、借地料、電力水道の基本料、品質管理の試験費、現場事務所の営繕費、などなど。
これらの雑費がすべて入ってます。
名前からもなんとなく現場共通の費用だとイメージできるかと思います。
共通仮設費の計算方法はかんたんで、直接工事費に「率」と「補正係数」を掛けるだけです。率と補正係数は、全体工種区分や金額によって決まっていますので、積算ソフトが自動計算してくれます。
てゆーか、1個1個積み上げるのは不可能です!
例えば、直接工事費が10,000,000円の舗装工事なら共通仮設費(率分)は20%くらい。(数字はデタラメ。)
共通仮設費は、2,000,000円ってことですね。千円未満切り捨てです。
簡単に計算できました。
難しいのは、現場条件が共通仮設費率に含まれているか含まれていないか、つまり別途計上する必要があるのかという判断です。その根拠が積算基準書の数ページにしか書かれていないのです( ゚Д゚)
Twitterでもよく準備費の草刈りなどが含まれているのか、問題提起されてますね(;´・ω・)
入札前の質問書でもよく挙げられるのがこの共通仮設費問題で、私たち土木公務員も頭を悩ませています …。
共通仮設費は、別記事で詳しく書きたいと思います。
現場管理費
現場管理費は、会社として工事の施工をするために要する費用のこと。
共通仮設費と合わせて間接工事費と呼ばれ、2つとも現場のマネジメント料のようなイメージでいいかと思います。
こんな感じで、大量に含まれています( ゚Д゚)
労働者の通勤手当とか、研修費用、固定資産税、自動車税、自動車保険、火災保険、労災保険、貸与被服、事務用品,新聞,書籍、通信費、交通費、来客への対応、コリンズ登録、現場事務所の電気水道料金などなど。
これらがすべて含まれています。
計算方法は共通仮設費と同じで、純工事費(直接工事費+共通仮設費のこと)に「率」と「補正係数」を掛けるだけです。積算ソフトが自動計算してくれます。
対象額12,000,000円の舗装工事なら現場管理費(率分)は40%くらい。
現場管理費は、4,800,000円ってところかな。千円未満切り捨てです。
いちいち計上するのは無理です。
率でどーんと計算しちゃってください。
一般管理費等
一般管理費等は、前述の2つとは少し違って、現場とは関係ない、会社の経営を維持するための費用です。
これも多いですね( ゚Д゚)
あれ?現場管理費と同じものがあるよ!二重計上じゃないの!?と思った方いるかもしれませんが、現場管理費が現場に関する費用なのに対して、一般管理費は会社(本店・支店・営業所など)そのものに関する費用です。
こちらは会社自体のマネジメント料というわけ。
調査研究費とか広告宣伝費などが特徴的ですよね。
また、一般管理費“等”の「等」の部分は、会社の利潤のことで、積算基準書には付加利益と書いてあると思います。たぶん。
ふーん、そうなんだ、程度でいいかと(;´・ω・)
一般管理費等の計算も率による自動計算です。
対象額である工事原価(=純工事費+現場管理費)が16,800,000円の舗装工事であれば、率は20%くらい。
一般管理費等は3,360,000円ってところでしょうか。千円未満切り捨てません。
昔は、一般管理費等を発注者側で自由に削ったりもできたんですが、今は積算ソフトで自動計算ですから、いじることはできないはずです。
こんな感じで会社の利益まで計算されているのです。
消費税等相当額
ここまでで、工事価格が計算されました!
あとは消費税及び地方消費税を計算するだけです( ゚Д゚)
工事価格は20,160,000円なので、消費税10%は2,016,000円
ということで、請負工事費は22,176,000円となりました!!カミノ宅前の舗装は2200万円で発注されます。
諸経費率は22,176,000円÷10,000,000円=2.2ですね。
うーん、高いです。解説用のざっくり計算なので、実計算とは大きくズレるかもしれません(;´・ω・)
直接工事費が大きくなれば、諸経費率はぐっと小さくなりますよ。
おわりに
さて、請負工事費の構成をざっくりと説明しました。
計算もしてみたので、どんな感じで費用が膨れ上がっていくのか分かったかと思います。
現場の施工(機労材)の0.5~2倍の諸経費が掛かるんですよね~。請負工事費は1.5~3倍程度になります。
また、事業費予算を積算するときや施工業者へ見積もりをとるときなどは、扱う金額が直接工事費なのか、諸経費を含んだ工事価格なのか、税込みなのか、はっきりさせましょう。相手とずれた認識だと予算措置などでトンデモナイことになってしまいます…!
次回の積算入門は工事費内訳書のなかに入っていきます。乞うご期待!せずにお待ちください。
では、今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ
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